ヨーゼフ・カール・シュティーラーによるベートーヴェンの肖像画(1820年)(パブリック・ドメイン)

 中国共産党政権は統治権を強めるため、自らの価値観に従わないものを封鎖してきた。先日、中国共産党はベートーヴェンの「交響楽第9番第4楽章(歓喜の歌)」を「宗教音楽」と定義し、教材から外すように指示を出した。これに対し、中国国内外で波紋が広がった。

 ネット上に公開された情報によると、中国共産党当局は、新学期以降に「宗教音楽」を教材から外すように指示した。中には宗教的背景のある楽器と曲、ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」も含まれる。教師には教材内容の取捨選択をすることが義務付けられ、「問題」が発生した場合は教師が全責任を取ることになるという。

 今年はベートーヴェンの生誕250周年にあたり、ベートーヴェンファンは世界的お祝いモードだ。彼が作曲した交響曲第9番「コーラス」は、各種お祝いに使われる名作である。第4楽章の歌詞は、ドイツの詩人シラーが1785年に創作した「歓喜の歌」に基づくものである。現在、「歓喜の歌」は、欧州連合および欧州委員会の公式曲とされているだけでなく、「ヨーロッパの歌」としても知られている。

 また、ユネスコは2001年9月4日、ベルリン国立図書館に保管されている「交響曲第9番」の原稿を「世界の記憶」に掲載した。同原稿は 2003年、ロンドンのオークションハウスサザビーで330万米ドルという超高値で販売された。

 現在、中国共産党が「歓喜の歌」を禁止したことは中国本土で物議を醸している。「歓喜の歌」は古典的な作品であり、宗教的な音楽ではないという人も多くいる。また、一部の人は宗教的な音楽を禁止するなら、バッハや音楽史などの知識も教科書に載せられないではないかと疑問を投げかけた。

 他の中国のネットユーザーは、中国共産党が文学、歴史、政治、宗教、広東語、モンゴル語、韓国語、インターネット、結社、及び言論の自由を禁止した上、今は音楽でさえ禁止しようとしていると批判した。

 ドイツに住む有名な中国人作曲家の王西麟氏は「ベートーヴェンの交響曲第9番は宗教音楽ではありません。これは人間の思考と文明の灯台であり、人間の思考の傑作です。1942年以来、共産党は芸術を党に仕えるものと見なし、それ以外のイデオロギーに重要な意味を持つすべての良い作品を封鎖してきました。今日、彼らは国際的な芸術をも禁止しようとしているが、これは非常に無知でばかげています。共産党は独自のイデオロギー及び文化的終焉に向かっています」と述べた。

《歓喜の歌》YouTubeリンク:

カラヤン ベートーヴェン《歓喜の歌》 1977

(看中国記者・黎小葵/翻訳・北条)