華遠グループの元会長である任志強(ネット写真)

 9月22日、習近平を公然と批判した文章を発表したため、国営不動産開発企業・華遠グループ元会長の任志強が汚職、収賄など4つの罪で懲役18年に処された。

 北京第二中級法院が22日発表した公告によると、華遠グループの元会長である任志強は、汚職、贈収賄、公金横領、権力乱用などの罪で懲役18年、罰金420万中国元(約6500万円)の刑に処せられたという。裁判所は、任志強が法廷での判決に従い、控訴しないと明らかにした。

 任志強は今年3月初め、中国の強権体制が中国の防疫に脅威を与えていることを批判し、習近平総書記を直接には名指しせず、「裸になっても皇帝であることを主張する道化師」などと批判した。ネット上に記事が掲載された後、3月中旬に外界との連絡が取れなくなった。北京市紀律委員会は4月7日、任志強が調査を受けると発表し、7月23日、「横領、贈収賄、公金横領、国有企業職員による権力乱用」の4つの罪で党を除名して司法当局に移送した。

 北京市第二中級法院は9月11日に任志強の審理を開始した。 中央通信社は9月11日、情報筋の話として、任志強は同日、検察官や裁判官の法廷での告発と尋問に対し、ほとんどの罪を認めず反論したが、他は記憶がない」と答えた。告発内容には華遠グループの在職中の経理上の矛盾、资金の流れ及び家族の儲け話などが絡んでいるという。

 ボイス・オブ・アメリカによると、中国の2人の弁護士は、任志強は中国国民としての権利を行使していただけで、元々は無罪だと主張した。現在、中国当局は金銭的な罪名で彼を処罰しようとしており、4つの罪状が成立すれば、10年、終身刑から執行猶予付き死刑までの判決が下される可能性があるとしている。

 弁護士の一人は、事件の一審が中級裁判所で開かれ、刑期が長く重大事件であることを示していると指摘した。任志強は逮捕されてから開廷まで、わずか6ヶ月しか調査されてない。本格的な調査に直面した汚職役人の今までのケースが、1-2年の調査を経てから開廷するのに比べて、進展が速すぎる。おそらく政府はとっくに準備万端を済ませ、彼を処罰するためにただ待っているだけなのかもしれない。

 別の人権派弁護士は、当局が任志強に重い刑期を宣告したのは、「見せしめ」の効果をもたらそうと考えたためだと述べた。同弁護士によると、任志強は元清華大学の許章潤教授や元共産党中央委員会の蔡霞教授のように体制内の野党に属している。毎回単独で発言しているが、彼らの「リレー発言」は背後にいる支持者に共感を与えたため、習近平は快刀乱麻を振るい邪魔者を断つ可能性がある。

 米国民主運動NGO「公民力量」創設者である楊建利は、任志強事件について、「共産党内には習近平に反対する勢力があることを示している。習近平は反対勢力の増強を防ぐためにあらゆる手段を尽くして彼らを抑制している」と述べた。また、任志強が10年の刑期を逃れることはできないかもしれないと考えており、習近平は任志強への政治的迫害を通じて、一時的に身にかかる火の粉を払うことが出来るかもしれないが、「将来に二人目の任志強が出てこないという保証は誰にも断言できない」という。

(看中国記者・林中宇/翻訳・藍彧)