5月11日、ツイッター社は経営陣に、「工学、コンピューターサイエンス、人工知能で唯一無二の専門家」との理由で、元グーグルの部長で人工知能の第一人者である李飛飛(リー・フェイフェイ)を起用すると発表した。報道によると、ツイッター社の今回の採用の狙いは、「新型コロナウイルスの誤った情報を規制すること」だ。このニュースは、私を含む海外の中国人の間で、一瞬で多くの議論と関心を引き寄せた。なぜなら、李飛飛は中国や中国共産党と深く関わっており、「赤い専門家」とも呼ばれている。本文は、李飛飛と中共の知られざる関係性をさらに深掘りしたく、そして、なぜ心配する必要があるかを話したい。
背景
李飛飛は1976年生まれの中国出身。16歳の時に、家族と一緒にアメリカに移住し、プリンストン大学で物理学を勉強した。1999年卒業後、李飛飛は突然、チベット医学を勉強する理由に、一人で中国に帰国した。一年後、李飛飛はアメリカに戻り、人工知能(AI)と計算論的神経科学を専攻し、カリフォルニア工科大学で博士学位を取得した。その後、イリノイ大学とプリンストン大学の助教授として働いた。
2009年、スタンフォード大学に勤務し、スタンフォードAIラボとスタンフォード・ビジョン・ラボの教授兼ディレクターに昇進した。スタンフォード大学勤務中、世界最大の画像認識データベースであるImageNetを立ち上げ、AI界で知られるようになった。
2017年1月、AIと機械学習の最高研究者としてグーグルクラウドに入社し、学生のLi Jiaと共にグーグルの中国チームを率いた。2018年10月、スタンフォード大学に戻った。
そして、最近、ご存じの通り、ツイッター社の経営陣に起用された。
中共思想の本質と中国のグーグルAIセンターへの精通
2017年12月31日、上海で開催された「グーグル・ディベロッパーズ・デイ」で、グーグル社は中国でのグーグルAIセンターを設立することを発表した。李飛飛は中国語で15分間の演説をした。「ここ数年、中国は優れた開発能力を示してきた」と彼女は言った。ナポレオンのコメントを引用し、中国を「眠っている獅子」と喩えた。「AIの世界で、中国は世界の指導者の一員として目を覚ますには長い時間がかかった。中国は私の生まれ育った母国、ここで暮らし、働く家族と友人がたくさんいる。私の心はいつもここにある」と彼女は言った。そして、彼女は情熱的に、「AIには国境がない。AIの利点にも国境がない。AIは世界を変える事ができる。AIの発展は、世界中の人々の生活をより素晴らしいものにする可能性を秘めている」と言った。
これを聞いて、私は彼女に強く言わせてもらおう。「ごめん。賛同はできない。臓器採取や移植技術は、健全の社会で人々の命を救えるが、中共の支配する中国では、その技術は無実の人々を大量に殺害し、臓器販売のために利用されている。無害な包丁は殺人犯の手で凶器に変わる。技術に精通するのは誰だっていいと言えるのはなぜなのか。インターネット、AI技術、顔認証システムが長い間、中共が反体制派を抑圧するためのツールとなっている事を知らないのだろうか。子供でもないのに、なぜそれほどナイーブなのだろうか」
その日、中国メディアの取材で、グーグルの中国再進出について、李飛飛は、かの中共の有名なスローガン「初心を忘れず、使命を胸に刻む」について言及した。このスローガンは、中共の正当性を強調するために、中共の第19回全国代表大会で初めて提唱された。このような言葉を発する李飛飛は、すでに立場を明らかにした。その姿勢や立場は、同日の演説にも表れている。彼女は「全人類の運命共同体を構築する」という中共の公式論調を引用した。李飛飛は中共の論調の本質をよく習得し、よく表現したと言えざるを得ない。
多くの中国国営メディアは李飛飛の帰国を盛大に報じた。ある報道には、「再び祖国に戻り、李飛飛さんはとても興奮しているかのように見える。今回、李飛飛さんはグーグルAIを連れて正式に帰国した」などと報じた。
清華大学と人民解放軍の研究協力
グーグルAI中国センターは設立後まもなく、清華大学との連携を始めた。2018年6月28日、清華大学AI研究所の発足式で、グーグルAIの総監督であるジェフ・ディーン氏は、清華大学コンピューターサイエンス諮問委員会のメンバーとして起用された。李飛飛とその学生Li Jiaも発足式に出席した。発足式の後、清華大学AI研究所とグーグルAI中国センターは、ジェフ・ディーン、李飛飛、Li Jia、そして、清華大学の専門家による基調講演とともに、「清華大学グーグルAIシンポジウム」を共催した。
清華大学のAIプロジェクトの特別なところは、中国人民解放軍と深い関係を持っていることだ。1990年、清華大学は中国初の「知能技術システム」研究所を設立し、中共中央軍事委員会から1億元(約15.5億円)以上の資金を受け取った。
2017年6月、清華大学は「軍民統合最先端防衛技術研究所」を設立し、その最優先事項としてAIを選んだ。2018年、清華大学の副学長・You Zheng氏は、『軍民融合によるAI開発への道』という文章を発表し、清華大学は中共の要求に従うと最初から述べ、「軍民融合の国家戦略」と「AI技術で強国にする戦略」を緊密に統合することを目的とした。そして、AIの基礎研究が軍事的利用を効果的に支援できることを保証した。「軍民融合」とは、軍隊に技術支援を提供することで軍隊を強化する中共の戦略だ。
2018年9月上旬、「キャピタルオンライン」という中国系クライドソリューションプロバイダーが自身のWeChat公式アカウント記事で、グーグルクラウドが中国進出のため、同社との業務提携を確認したと発表した。しかし、同社はすぐに理由もなくその記事を撤回した。
2019年7月、ドイツ系アメリカ人の億万長者投資家ピーター・ティール氏は、グーグルも中国人民解放軍と協力していると非難し、米国政府に調査を要請した。
グーグルAI、中共のために最先端の武器の開発に関与か
実は、グーグルが中国共産党軍とグルプになる場面は、グーグルAI中国センターだけではない。
2019年6月28日、中国科学院の公式サイトは、グーグルの人工知能チームにいる中国の屈指の科学者が北京の研究者と協力し、「人間とコンピューターとの相互作用」計画を発足し、一流の国際学術会議で論文を発表したとの記事を発表した。記事発表後、二人の中国人研究者は匿名で、この技術は戦闘機のパイロットや対空ミサイルオペレーターがタッチスクリーンの操作だけで、前例のない速度と精度で高速移動中の標的を捕捉できるようにし、中共の最先端ステルス戦闘機、J-20はその技術を使用する機会があると明らかにした。
グーグルはすぐ、研究の事実を認めたが、中共軍隊との関係性を否定した。興味深いことに、中国科学院は、研究の結果を発表する記事の最初のバージョンで、この研究は「軍事、医学、教育、デジタルエンタメを含む様々な分野での幅広い応用が期待できる」と述べた。しかし、グーグルが声明を発表した直後、中国科学院の公式サイトの記事から「軍事」の単語が削除された。しかし、中国科学院の科学技術産業ネットなど、他の中国のウェブサイトでは、「軍事」の単語がまだ残っている。
欧米同窓会
李飛飛と中共の深い関係性は、中共中央統戦部に属する一つの組織との関係性からも探れる。その組織とは、「欧米同窓会」だ。「欧米同窓会」は、著名な学者や知識人たちによって、1913年に北京で設立された。
1949年に中共が中国を占領してから、同窓会は中共中央統戦部にとって重要な使い手に変わった。政治界、商業界、学術界の影響力のある人物の多くは、この同窓会のメンバーだ。例えば、江沢民元中共党首、李鵬元総理、中共中央軍事委員会の劉華清副委員長、李蘭清副総理は皆、同窓会の元メンバーだった。中国科学院の会員の3分の1以上、そして、中国の大学の学長の3分の2以上も、同窓会のメンバーだ。同窓会自身のウェブサイトによると、同窓会は中共中央書記処が主導し、中央統戦部が中共を代表して管理していると述べた。
2016年8月、中共中央委員会総局は、欧米同窓会を「強化」する方法に関する公式の通知を出した。通知には、同窓会に対する中共の主導権の強化、より多くのメンバーの招致、会場の提供、資金の確保などの内容が含まれる。
以上のことから、この同窓会は海外のメンバーが多いが、中共がほぼ100%支配し、直接主導権を握っていることは明らかだ。この同窓会は、中共の最高レベルの「統一戦線工作」組織とも呼べる。
同窓会の公式サイトによると、2018年8月19日、第13回同窓会北京フォーラムが北京で開催された。中共統戦部副部長のDai Junlingと他の多くの著名な統戦部の人物が出席した。李飛飛、そしてスタンフォード大学の張首晟教授もこのフォーラムに出席した。
張首晟教授は有名な中国系アメリカ人物理学者で、かつてノーベル物理学賞の受賞者候補だった。2017年、李飛飛と張首晟はそろって「海外中国人学者TOP50」に選ばれた。張首晟はどこが特別かというと、彼は15歳の時に中共に選ばれ、中共の戦略を実行するため、西洋から技術を窃盗したという報道があった。張氏が設立したベンチャーキャピタル会社「ダンファ・キャピタル」は、技術転換プログラム「中国製造2025」に関連する中共の資金とつながりを持っていた。
2018年、「ダンファ・キャピタル」社は中共ベンチャーキャピタル投資の例として、国防総省を含む米国政府に調査された。張氏と北京のつながりがFBIから注目され、「疑惑の雲が彼を覆い始めている」という報道があった。その後、2018年12月1日、張氏は自殺で死亡したと報じられた。張氏の家族の話によると、張氏は「うつ病との戦いで」死亡した。
しかし、疑問は、張氏は本当に自殺したのか、それとも中共の技術窃盗計画に関する機密を多く知りすぎたため殺されたのかだ。こうして、張首晟について少し長く語ったのは、張氏の事を話したいではなく、李飛飛も、中共、中共の組織、中共のメディアに、張氏と同じく待遇、名誉と注目を与えられているという事実を話したいからだ。だからこそ、二人は中共のイベントに一緒に招待されたり、中共の表彰台に立ち一緒に表彰されたりするのだ。
未来フォーラム
「欧米同窓会」の他に、李飛飛は中国の「未来フォーラム」という非常に著名な組織と密接な関係を持っている。李飛飛はフォーラムの科学委員会のメンバーであり、張首晟はフォーラムの創設メンバーだった。李飛飛の学生Li Jia氏と張首晟のパートナーのJohnny Zhang氏はフォーラムの青年理事会にいる。
注意すべき点は、「未来フォーラム」は、中国科学院が指揮し、北京市朝陽区政府が支援している事と、人民日報や新華社通信を含む中共の最も重要なプロパガンダ機関が戦略的メディアパートナーである事だ。中国の最も重要なIT巨頭の数十人だけでなく、中共の幹部の子女、いわゆる「紅二代」もフォーラムのメンバーだ。例えば、元中共政治局常務委員会会員の劉雲山の息子・劉楽飛は、フォーラムの理事。元総理の朱鎔基の息子の朱雲来は諮問委員会のメンバーだ。
同理事会メンバーのMary Maは、元中共党首江沢民の孫・江志成によって設立されたボーユーキャピタル(博裕資本)の共同設立者兼共同管理者だ。李飛飛は未来科学賞の授賞式に何度も招待され、スピーチを行った。李のチームと主要な中共幹部らの共同写真は、まだ多くの中国のウェブサイトで見られる。
セコイア・キャピタルとセコイア教授
昨年6月、スタンフォード大学は、李飛飛が初の「セコイア教授」になったと発表した。セコイア教授とは、スタンフォード大学でセコイア・キャピタルによって創立された教授職のこと。セコイア・キャピタル中国の創立者、沈南鵬(Shen Nanpeng)氏も、李飛飛と同様に未来フォーラムの理事を務めている。
2018年、フォーブスの世界で最も優秀なベンチャー投資家リストで1位を獲得したセコイア・キャピタルは、ボーユー・キャピタルと何度も共同投資した実績がある。アリババはその共同出資の実績の一つだ。
これで、コネクションがどれほど深いのかもお分かりだろう。
「千人計画」
中共が2008年に設立した「千人計画」は、世界で主要な科学研究者、技術革新者、起業家の中の傑出した人物を特定し、採用するためだったが、今は経済スパイ活動と知的財産の窃盗を示唆するプログラムとして広く認識されている。FBIは長い間、プログラムの中の一部の海外にいる中国人を調査し始めており、多くの中国のウェブサイトがこのプログラムに関連する記事を削除した。
今まで、李飛飛がこのプログラムに参加したことを示す公的な記録はない。しかし、彼女と非常に密接な関係を持つ多くの人たちが、「千人計画」と深く関連している。例えば、2017年にハワイで開催された「コンピューター視覚表現と映像認識技術に関する国際会議(CVPR)」で、李飛飛は彼女のキャリアをサポートしてくれた多くの人々を言及した。中には、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の朱松純(Song-Chun Zhu)教授とプリンストン大学の李凱(Kai Li)教授も含まれる。李飛飛はまた、イリノイ大学での最初の仕事は、コンピューター視覚の第一人者であるThomas Huang教授によって彼女に与えられたことに言及した。
公開記録によると、朱松純は2009年に、中国教育部から「『長江学者』講座教授」に選ばれ、2010年には、「千人計画」の特別専門家に選ばれた。
中国コンピューター学会の特別取材によると、李凱は清華大学の客員教授であり、中国科学院計算技術研究所客員教授であり、そして「千人計画」のパートナー兼研究者だ。その取材のPDFファイルはまだ検索可能だが、取材に関する多くのメディアの報道は既に削除された。
最近亡くなったThomas Huangは、2001年に中国工程院の外国人会員に、2002年に中国科学院の外国人会員に選ばれた。2012年4月22日から5月2日まで、重慶材料研究院の院長Yuan Jiahuはハーバード大学を始め、十数の大学で人材募集のためにアメリカに来た。9回の特別募集説明会の後、4名の専門家が「千人計画」に選ばれ、2名の専門家は「千人計画(若手)」に選ばれ、Thomas Huangを含む4人の科学者が重慶材料研究院の「戦略諮問委員会」の専門家に任命された。
さらに、李飛飛の学生Lu Cewuも2010年に、「千人計画(若手)」に選ばれた。Lu Cewuは、上海交通大学と人工知能技術会社・SenseTimeの共同研究所の常務副取締役でもある。
ImageNetのコンペで中共のチームが最優秀賞を受賞
2016年、SenseTime社は李飛飛が設立したImageNet主催のILSVRC2016(大規模画像認識コンペ)に参加し、3つのプロジェクトで1位を占めた。
SenseTimeの創設者であるXu Li博士は、同社が広州公安システムのビデオデータを大量に使用してビデオ分析ソフトウェアを開発すると公言し、「あらゆる情景で必要なデータ情報を簡単に収集できる」と述べ、「そして、最大のデータベースは政府だ」とも述べた。
注意すべき点は、目標捕捉と情景特定の分野の勝者は、「Trimps-Soushen」と「HikVision」であることだ。ここで「Trimps-Soushen」の名前の由来について話しておきたい。「TRIMPS」は「公安部第三研究所」の英語の略称で、主に中共警察の技術力を強化するための研究機関だ。「Soushen」はTRIMPSの下のチームの名前だと思われる。「Sou」は「捜し」で、「Shen」は「神」。合わせて「捜査の神」という意味だ。「HikVision」は世界最大の監視機器メーカーであり、中共によってコントロールされている。中共の人権侵害を支援する事で知られており、アメリカの議員はそれに対する制裁を求めている。
つまり、中共の警察チームと世界最大の監視機器メーカーのチームはImageNetのコンペで最優秀賞を受賞し、そしてImageNetの創設者は李飛飛だ。このつながりは十分に明白でしょう。
すべての情報をまとめると、李飛飛と中共の関係は、私たちが知る以上に深い事がわかるはず。そのため、多くの海外にいる中国人、特にツイッターのユーザーは、李飛飛がツイッター社の経営陣に起用されたというニュースを知り、非常に心配になった。
私も怖い
実は、私はユーチューブ番組を作るべきかどうかをすごく悩んだ。なぜなら、中国の時事評論家「財経冷眼」は、李飛飛に関する調査プログラムをしてから4つのツイッターアカウントがすべて凍結された。私は、14万8千人のフォロワーを失うことが怖い。
だから私は、この番組を作るべきかどうかについてつぶやき、私のフォロワーの意見を尋ねた。ほとんどの人の「賛成」が私に勇気を与え、この番組を最後まで完成させることができた。これからの無事を、指を交差させて祈るから、どうか、私のために祈ってください。
(文・曽錚/翻訳・常夏)