華為(ファーウェイ)がチップ供給の断絶に直面している中、中国商用飛機有限責任公司(Comac、略:中国商飛) の「大型機」C919のコア技術の多くが米国に掌握されていることが明らかになった。米国が制裁を実施すれば、中国共産党が期待を寄せているC919は飛べなくなる。
中国の商用旅客機は「大型機」時代に入ったが、進展は順調ではない。大型機 C919は2017年5月の試験飛行後、納入の遅れが続いている。
ボイス・オブ・アメリカによると、中国商飛はこれまで、600億元(約9300億円)を投資開発し、6機のC919試験機を生産した。中国東方航空が初のクライアントで、2021年に納入すると正式に発表されている。
シンガポールとマレーシアに拠点を置く航空業分析機構エンダウ・アナリティクスの創業者シュコール・ユソフ氏によると、C919の納入が遅れる可能性が高いという。
C919の主要部品はいずれも中国製ではない
中国の商用旅客機が「国産」であることがずっと疑問視されている。
中国商飛は、支線旅客機のARJ21と中型旅客機C919は、いずれも独立した知的財産権を有する自社開発製品であると主張している。中国共産党の公式メディアは、C919は6割近くの国産化を実現し、100%の国産化を目指すという。
しかし、C919のパワーシステム、アビオニクス飛行制御システム、燃料システム、電源システム、着陸装置および他の重要な領域はいずれも、外国の製品や技術を直接導入しているか、あるいは中外合弁企業によって製造されている。国内航空産業部門は、主に航空機の胴体、翼、尾翼、内装などの設計・製造を行っている。
ワシントン戦略と国際研究センター(CSIS)理事会のスコット・ケネディ会長は、C919は名ばかりの中国機だと述べた。「この飛行機を飛ばすパーツは全部西洋のものです。そのサプライチェーンもグローバルサプライチェーンとは言えません。実は主に米国のサプライチェーンです。」
ティルグループの副社長で、航空アナリストのリチャード・アブーラフィア氏は、米国の技術がなければ、中国の大型機プロジェクトは全部「脱線」してしまう述べた。「本当の課題は飛行機を作るのではなく、エンジンとアビオニクスであり、これは飛行機の筋肉と頭脳です。機尾を作って国旗を描いたアルミチューブは意味がありません。」
アメリカがC919のために持っているコア技術とは
米国は華為のチップなどの技術へのアクセスを「実体リスト」でブロックしており、持続不可能な状態になっている。
ケネディ氏は、中国の航空製造業が直面している課題は華為よりもさらに大きいと考えている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は今年2月、トランプ政権が中国へのLEAP-1Cエンジン輸出を目的としたCFMインターナショナルのライセンス停止や、ゼネラル・エレクトリック社がC919用に供給しているアビオニクスシステムの輸出制限を検討していると報じた。
米国は後に禁止令を発動しなかったが、中国の航空産業は、安全保障や戦略上の目的で、米国企業が中国に航空エンジンなどの重要技術を供給することを随時に禁止できるのではないかと懸念している。
実際、C919はエンジンが米仏合弁会社であるCFMによって提供されているほかに、一級サプライヤーの中に、少なくとも以下の米国企業が含まれている。
GEアビエーション社の民間アビオニクスシステムは、コアアビオニクスシステム、ディスプレイシステム、オンボードメンテナンスシステム、アビオニクスシステム統合サービスを提供している。
パーカー・エアロスペース社は、パーカー・ハニフィン社の一部門で、C919型機の油圧システム、主飛行制御作動システム、燃料システム、燃料タンク不活性化システムを供給していた。
ハネウェル社は、フライトコントロール、ホイールとブレーキ、補助パワーユニット、ナビゲーションシステムの4つの主要なシステムを提供している。
ハミルトン・サンドストランド社は、電源システム製品の開発・製造を担当している。
ロックウェル・コリンズ社は、複数の中国企業との合弁会社で、統合監視システム、通信・ナビゲーションシステム、フルモーションシミュレーターの開発・製造を行っている。
ムーグ社は、C919ハイリフトシステムの提供を手がけている。
ケネディ氏は 、近年の中国共産党の戦略的発展路線と米中関係の緊張により、中国の航空産業に対する米国の制裁の可能性が高まっていると述べた。中国共産党が軍民統合計画を推進するにつれて、「民間と軍用の境界線が変わった。欧米諸国は今、自国のサプライヤーがC919にコミットした技術を再検討し、これらの技術が中国共産党の軍事開発に役立つと判断するかもしれません。」
(看中国记者・肖然/翻訳・藍彧)