2016年は、中国系企業が西洋企業の株式を大規模に購入した年として記憶されている。 なんと2016年の第1四半期だけで、中国系資本は米国と欧州の企業買収(M&A)に約1030億ドルを費やしたのだ。 2015年、既に中国系投資家たちは合計1070億ドルを費やし外国企業のM&Aを行っていたにも関わらずだ。
現在、中国系資本は、鉄道・港湾・高速道路などの輸送プロジェクトだけでなく、 技術・電気通信・食料・ホテル分野など、様々な業種の企業に資金を投じていることが明らかになっている。

目的は技術の獲得か
中国系資本が多様なセクターのM&Aを進めている背景には、西側諸国のビジネス戦略・技術・知識などのノウハウを自国に持ち帰り、世界との競争を有利に進める意図があると推測されている。

こうした投資戦略は、2025年までに中国国内における現地生産能力を引き上げるという国家目標にも合致している。しかし、これは中国に対し「経済成長」と「(中国人の)賃金増加」というを相反する経済効果をもたらす。 国内経済の発展によって、中国人労働者の「低賃金」の優位性が徐々に失われるのは明らかだ。そのため、中国企業は欧米企業と提携し、消費者基盤の拡大と技術的優位性の確立を重要視するようになった。

また、中国系企業も単純な製造分野からの脱却を試みており、ハイエンド製品の開発・製造に舵を切っている。 欧米諸国での合併・買収によって、中国企業は欧州企業の洗練されたイメージを取り入れつつある。

中国の国有企業グループが中国以外への地域に対する投資に積極的なもう一つの理由として、中国の経済成長がほぼ横ばいとなっている点が挙げられる。 国有企業の株式を保有する中国人投資家たちは、企業に対し主要な取引を終了させられるほどの強い権限を有している。 中国経済はやや減速しているとも言われる中、投資家たちは外国に、特に西側諸国において新たな収益源を模索しているというわけだ。

買収増加の背景にある「中国の国家資金」
外国投資の増加にまつわるもう一つの興味深い要素として、中国企業が海外投資のために利用できる大規模な国家資金の存在がある。 こうした資金の存在は、「企業買収には中国政府の意図が働いているのではないか?」という疑念を生じさせる。実際に、米国政府は今年に入ってから、知的財産権侵害を理由に、中国からの輸入に対して総額500億ドルの関税を課した。 世界各国は、中国による企業買収の背景には「技術の獲得」という狙いがあると疑いの目を向けている。

資金の流れに変化が起きた
一方、2018年の中国企業による買収件数は昨年同期比で減少している。 これは主に中国側で資本規制の強化が行われている点と、米国側で企業買収案件の規制強化が実施された点が影響している。 また中国は、経済成長の遅れや人民元の変動の高まりを受け、資本流出を抑制しようと躍起だ。 これと同時に、米国は自国の技術がM&Aを通じて中国企業に州出している点に対し警戒感を露わにしている。 その結果、米国政府は特に技術部門において、中国系企業によるいくつかの買収案件を「安全保障上の理由」で阻止するに至った。

注:
M&Aとは、英語: merger and acquisition(合併と買収)の略であり、企業の合併や買収の総称である。
(翻訳・今野秀樹)