20日に重慶を視察している中国総理李克強(イメージ:動画のスクリーンショット)

 長江第5号洪水が19日、重慶市内を通過し、中国総理李克強は20日に重慶を視察した。しかし、李克強が重慶を視察したニュースは国務院の下にある中国政府のウェブサイトで発表されただけで、新華社通信や人民日報は一切触れていないことに特に注目したい。 

 中国の四大ポータルサイトの一つであるネットイースの報道によると、19日朝に長江に「2020年第5号洪水」が形成され、長江と嘉陵江の重慶区間は警戒水位を超えて急上昇し、20日未明には洪水の頂点が重慶に達した。1981年以来最大の洪水災害に見舞われたという。重慶の有名な洪崖洞、磁器口などの観光名所はすべて浸水した。

 中国政府のウェブサイトによると、李克強は20日午前11時前に重慶市の中心部から120キロ以上離れた西北角、涪江上流の潼南区双壩村に赴き、災害状況の視察と被災者の見舞いを行った。

 「これほど大きな洪水は見たことがない」という民衆の声に対し、李克強は被災者をなだめて、難関を乗り越えるように手助けすると語った。彼はまた、人命と財産の安全を確保するために、治水、救援、災害後の復興作業に関する習近平の重要な指示を実行するよう地方の関係者に要請した。

 しかし、新華社通信や「人民日報」が李克強の重慶視察を報じなかったことは注目に値する。他の中央党メディアでは、「中国新聞網」と「中国日報」だけが、中国政府のウェブサイトからの報道を転載した。

 これに対し、政治学者の呉強は「アップル・ジャーナル」に、これは李氏の重慶視察がプロパガンダ部門の協力を得ていないことを反映していると語った。

 呉強はさらに、第20回全国大会後、李克強が後任者になることが北京で議論の焦点となっていると指摘し、重慶訪問は災害の視察を兼ねて、地元の同僚や地元の人々の支持を勝ち取るためのものとみられている。

 しかし、呉強は、現在の中国では李克強が政治的見解を公に表明する機会を持つことは難しいとも述べた。

(看中国記者・黎小葵/翻訳・藍彧)