ある貨物船が大西洋を航海している際に、船尾にいた雑役係の黒人の子どもが、不注意で海に落ちてしまいました。子どもは助けを求めて叫びましたが、風と波が強く、船にいる人は誰も彼の声を聞こえませんでした。貨物船は子どもからどんどん遠ざけていきました。
生存本能で子どもは冷たい海で必死に泳ぎ、全身の力を振り絞って細い腕を振り、必死に頭を水から出そうとしました。そして、船が遠ざける方向をじっと見つめました。
船が離れていくにつれ、船体がどんどん小さくなり、そして最後には何も見えなくなり、果てしない海のみとなってしまいました。子どもは体力がだんだん落ちていき、ますます泳げなくなって沈みかけそうになって諦めようとしたとき、老船長の優しい顔と親しい目を思い出しました。いけない、船長は私が海に落ちたことを知ったら、必ず私を助けに戻ってくれるに違いありませたん。そう思うと、子どもは生きる最後の力で再び船に近づけるように泳ぎ出しました。
船長は、ようやく子どもが行方不明になって、海に落ちたことに気づきました。そして、子どもを捜すために船を引き返すことを決めました。しかし、「こんなに長い時間が経って、溺れていなくてもサメに食べられてしまいます」と船の人は言いました。船長は少し躊躇したが、戻って探すことを決心しました。もう一人が「黒人の子どものために、そこまでする価値がありますか?」と言ったのに対し、船長は「黙れ!」と大声で叱りました。
最終的に、子どもは溺れかける前に助かりました。
気絶から気を取り戻した子どもは、地面に跪いて船長に命を救ってくれたことを感謝しました。船長は子どもを起こして「なぜそんなに長い時間で頑張れましたか」と尋ねました。
すると、子どもは「僕を救うために、きっと戻ってくれるとわかっているからです」と答えました。
「なぜ私は必ずあなたを救いに行くことがわかりますか」と船長は不思議に聞きました。
「あなたはそのような人間だとわかっているからです!」と子どもがはっきり言いました。
これを聞いて、年配の船長は子どもの前に跪き、涙を流しながら「私があなたを救ったわけではなく、あなたが私を救ったのです。私はあのときためらったことをが恥ずかしい」と呟きました。
他人に信頼されるのも幸せの一つです。絶境に陥った人が自分のことを思い出し、そしてきっと助けると信用されていることはもっと幸せなことでしょう。
( 翻訳・謝 如初)