中国政府が一国二制度(one country, two systems, OCTS)政策を香港に適用してから20年が経過した。しかし、それは平坦な道のりとは言えなかった。

いくつかの社会的問題は解決されずに放置されたままであるし、香港市民は、理想主義と西洋に影響を受けた若者からなる「民主化グループ」と、高齢者や安定した政治体制を維持しようとする者で構成された「プロ・スタンダード」と呼ばれる2つのグループに分かれている。こうした中、これらグループによる議論によって2つの重要な論点を明らかになった―香港において一国二制度は機能してきたか?また台湾ではどうなるか?

香港で「一国二制度」は機能しているか
過去10年間で、香港に対する北京のアプローチには大きく変化した。つまり、中国は香港ではより積極的になっているとみられているのだ。中国は、「香港の独立感情が高まっていることで不利な立場に置かれている」と感じた際、一国二制度を完全に解除することもありうるとまで言及したのだ。

民主党のリー・ウィンタット(Lee Wing-tat)議員は、北京の共産党政権に対し自身の見解をこう述べる。
「北京は香港の核心価値、自由、裁判制度、さらには香港市民が自らの政府を選ぶ権利に対してまで介入してきた。中国との間には過去から非常に多くの約束があったのに、それらの多くがこの20年間で崩壊した。」

中国と香港の違いは、香港内における「表現の自由」の実態を触れるだけでも明らかだろう。例えば、香港の基本法は、市民は自らを表現する完全な自由を持つと規定する。一方、中国政府は公衆の批判や意見を厳しく規制し監視している。

香港の独立宣言と、それを非難する中国本土の大学による一連の行動は、香港に大きな混乱を招いた。それと同時に、香港の人々が一国二制度を好むことを明らかにした。2003年、中国政府が第23条の改正案を提示し、香港の選挙プロセスを支配して以来、中国政府は香港の人々からの信頼を失った。その後中国政府は、香港に対する中国本土の人々の印象を変えようと方針を転換したが、結果として、このことが一国二制度に関する論調に大きな影響をもたらした。香港の人々は、中国政府が一国二制度の改悪に焦点を当てていると感じ、中国政府の誠意と信頼性に疑問を投げかけたのだ。

台湾の現状
ここ数年、習近平は中国と台湾が一国二制度の下で共に進むことができるという考えを度々表明した。しかし、台湾の馬英九前総統と蔡英文総統は、そのような動きは台湾の主権と自由を損なう可能性があるとして否定した。台湾は香港での出来事に細心の注意を払っており、中国から離れることを心から望んでいる。

台湾の人々は「自分たちは中国人ではなく台湾人である」と認識している。彼らは中国の政治制度を受け入れず民主的な自由主義社会を好む。そのため中国による香港の選挙プロセスへの介入については、中国が一国二制度を尊重していない点を警戒している。台湾における民主化が、改悪された一国二制度の下で脅かされかねないと懸念しているのだ。

香港では一国二制度は厳しい困難に直面している。しかし、台湾では人々が自由権を十分に掌握しており、その行使を躊躇しない。そのため一国二制度は台湾で成立しえない。台湾政府は中国政府の意見を支持していないどころか、両者の間の議論すらも奨励していない。

(翻訳・今野秀樹)