米国と中国の貿易戦争において、より強烈なパンチを打ち込めるのはどちらの国かと誰もが注目している。トランプ大統領は成功するのか、また中国はどのように報復するのか?

米国政府はいまだ輸入関税の詳細を詰めている最中であるが、既にトランプ大統領は「中国をやっつける」と高らかに宣言した。

一方の中国は、この問題に関して相互に矛盾する見解を発表した。中国政府は米国の決断を無謀であると指摘する一方、経済を開放し、悪名高い「外資企業が中国の地元企業に技術を提供しなくてはならない」制度を強制しないと誓った。

両国が様々な手を打ち事態が急速に変化する中、経済学的な観点から確実に言えるのは「両国が損をする」ということだ。

中国は何を失うか?
中国の経済は主に輸出に依存しており、約20%が米国によって輸入されている。2016年には、中国の貿易黒字全体の68%が米国市場であったところ、2017年には88%まで増加した。今回米国が導入する輸入関税制度によって中国は米国市場でシェアを失うとみられ、中国経済は大きな打撃を受ける。これに対し、米国が中国から輸入する製品の量は少ないため、中国の報復関税は米国経済にも悪影響を及ぼすとみられるが、中国ほど経済が悪化することはないと考えられる。

中国はまた、中国国内に拠点を置く米国企業のビジネスを失う危険性がある。これは米国政府が企業に国内投資と米国雇用の創出を促しているためだ。例えば、Apple社が中国から撤退し、または生産を減らすことを決定すれば、中国は何千万もの雇用と数十億元の投資を失うだろう。さらに、Apple社が人件費の安い別の国に拠点を移すだけでも同様の事態が起こりうる。

アメリカは何を失うだろうか?
中国は既に米国の産業と製品に関税を課すと脅している。例えば、ボーイング社は中国に多額の投資をしており、その収益は同社における総収益の約11%を占めている。中国が注文の一部をエアバス社に移せば、それはボーイング社にとって数十億ドルの損失となる。さらに、多くの小売業者は、低コストな労働力を期待して中国から商品を輸入し、中国で製造を行っている。こうした製品の価格は上昇するであろうし、米国は製品の大規模な価格上昇を補うために迅速な解決策を見つける必要が出てくる。

中国政府はまた、中国に輸出さる米国の農産物を標的にする可能性がある(中国は2016年、2100億ドル相当を米国から輸入している)。米国の関税措置について、トランプ大統領は既にボーイングの経営者や大豆農家から批判を浴びている。仮に大豆の世界最大の消費者である中国が米国の作物に関税を課した場合、大豆の生産者は巨額の収入を失う危険があるからだ。中国のこうした措置によって、トランプ大統領の重要な票田であるオハイオ州、アイオワ州、ミズーリ州、インディアナ州において、同大統領の基盤が揺らぐ可能性が出てくる。

(翻訳・今野秀樹)