一人の旅人が、大河のほとりで渡河に困っているおばあちゃんを見かけました。精も根も尽き果てた彼は、気力を使い果たして、川を渡るのに手伝ってあげました。しかし、川を渡ったおばあちゃんは何も言わずにさっと行ってしまいました。
旅人はおばあちゃんを手伝ったことを悔しがり、自分の気力を使ったのがもったいないような気がしました。「ありがとう」という感謝の一言さえもらえなかったからのです。
数時間後になって彼が一歩も動けないほど疲れているときに、一人の若者が彼に追いつきました。若者は、おばあちゃんの孫だと言って、祖母を助けてくれてお礼に、何かを持ってくるようにと祖母に言われたそうです。すると若者は食糧と馬を差し出しました。
答えをすぐに求める必要はなく、時には我慢が必要です。谷に向かって大声で叫んでも、響きが聞こえるのは間があります。
つまり、生活はいずれ答えてくれますが、すぐには教えてくれません。
(翻訳・柳生和樹)