李文亮(り ぶんりょう、1986年―2020年)医師(イメージ:NTDTV スクリーンショット)
中国の全人代で審議された「香港版国家安全法」が大きな波紋を呼ぶ中、同時期に審議が開始されたもう一つの法案も心配の種となっている。最近公開された「生物安全法」草案によって、中国本土で内部告発ができなくなると危惧されている。
内部告発とは、組織内部の黒幕を暴くことを指す。内部告発にはいくつか異なる状況があり、企業や組織の内部規制や法律違反の告発、国家安全に害を及ぼす可能性がある場合の告発、および詐欺と汚職などのいくつかの異なる不正行為に対する告発などがある。内部告発者はこれらの行為に関する情報を内部または外部に公開することを選択できる。内部告知が行われる場合、内部告発者は問題を解決するために、組織内の他の人に情報を開示することを選択する場合がある。内部告発者は、メディアに連絡して公開したり、政府部門や関連機関に問題を報告したりするなど、関連情報を第三者機関に提供することを選択できる。
5月21日の夕方、中国の全国人民代表大会の張業遂(ジャン・イェースイ)報道官は、全国人民代表大会の常務委員会が特別な計画を策定し、年内に「生物安全法」草案の審議の通過を目指すと述べた。
一部の人は「生物安全法」草案が「いかなる組織も個人も捏造した生物安全情報を作成または流布してはいけない」と規定していることに危機感を覚えた。武漢肺炎の内部告発者である李文亮医師は生前SNSで「感染拡大」についての警告を発したが、その情報は中国当局によって「デマ」と認定された。そのため、「生物安全法」が成立すれば、内部告発者を弾圧する武器になりかねないと懸念する声も多く聞かれている。
では、中国政府は告発者を保護するために「告発者保護法」を制定する必要があるのか?ラジオ・フリー・アジア(Radio Free Asia,RFA)によると、米ペンシルベニア大学医学部の准教授である張宏涛(ジャン・ホンタオ)氏は「迫害や行政制裁などから情報を開示する人々をどのように守るかという制度があるべきだ。中国はそういう制度を持っているが、機能していません」と語った。
中国政法大学法学部の元講師であり、米国に定住した中国人権弁護士である滕彪(タン ビョウ)氏は、中国本土では法律が不足しているわけではないが、法の支配という実態がないのが現状であり、政治体制全体が法を飾り物として置いていると率直に述べた。
(翻訳・玉竹)