米中貿易戦争が激化する中、中国はこれまでにない深刻な経済的打撃に直面しています。中国共産党(中共)は「最後まで付き合う」と強気の姿勢を打ち出し、国内では反米感情を盛んに煽っていますが、現実にはアメリカと単独で対峙するという、厳しい状況に追い込まれています。アメリカ政府が対中輸入品への関税を125%に引き上げると発表したことで、中国の製造業は深刻な打撃を受けています。注文の急減、工場の稼働停止、労働者の大量失業といった連鎖的な影響が各地で広がり、SNSでは現場の過酷な実情を伝える動画や投稿が相次いでいます。政府が強調する「強い中国」のイメージとは裏腹に、現実とのギャップは日に日に拡大しています。
4月9日、アメリカのトランプ大統領は、中国からの輸入品に対する関税を125%に引き上げ、即日施行すると発表しました。さらに、アメリカに対して報復措置を講じていない国々に対しては、相互関税を90日間停止するとし、この期間中は一律10%の基準関税を適用すると述べました。ホワイトハウスによれば、すでに約70か国がアメリカ側に接触し、交渉の準備を進めているとのことです。この動きは、中共が期待していた「反米統一戦線」の形成が、実際には孤立無援に終わっていることを明確に示しました。
中共は一方で、官製メディアを通じて強硬な姿勢を取り続けています。『人民日報』は連日、「空が落ちることはない」といった論調で不安を打ち消そうとし、外交部も「リスクや困難に立ち向かう力と自信がある」と表明しています。4月10日には、外交部の毛寧報道官がSNS「X」にて、毛沢東が朝鮮戦争中に語った「彼らがどれだけ戦おうとも、我々は最後まで戦う。完全勝利まで戦い抜く」との発言映像を引用し、中共の「決意」を強調しました。
しかしながら、経済の現実はこうした宣伝とは大きく乖離しています。広東省、江蘇省、福建省など輸出依存度の高い地域では、多くの工場が稼働を停止し、深刻な影響が表面化しています。4月9日、ある工場経営者が撮影した動画には、出荷できず倉庫に山積みになったガスストーブの映像が映し出されており、「アメリカ向けの輸出品が125%もの関税をかけられた。この2,000台のガスストーブがまだコンテナに積まれていない。一体どうすればいいのか」と困惑を語っていました。
また、別の動画では、人気のない工場内部が映され、「工場は停止、従業員100人以上がその場で解雇された」と報告されています。ネット上では、「昨日までは何事もなかったのに、突然『機械を止めろ』と通達された。会社は閉鎖、全員が休みに入った」、「春節後、たった2か月しか働いていないのに、もう帰されることになった。5月以降、多くの工場が一斉に休業するらしい」といった声も多く見られました。
江蘇省のある金融系ブロガーも、同様の体験を語りました。「今日、外貿の繊維会社の顧客を接客しました。午前中に原材料が届いて、生産を始めようとしていた矢先、昼には『関税が104%になった』という通知が来て、すべての注文がキャンセルされ、工場も即日休業となりました」と述べています。
さらに彼はこう続けました。「確かに我々もアメリカに対して84%の関税をかけたので、表向きは士気が高まっているように見えるかもしれません。でも、その先に何があるかを考えたことがありますか? 外需に頼る多くの工場は間違いなく生産能力を下げ、人員を削減することになります。つまり、大量の失業者が出るということです。生き残るために輸出業者が内需に転換すれば、今度は内需企業同士の競争が激化し、誰もが巻き込まれて疲弊します。国内市場だけでは、これだけの供給量を消化することは到底できません。」
厦門で財務を担当している女性ブロガーも、自身の見解を述べました。「私は財務の仕事をしていますが、数日前、輸出をしているクライアントに今回の関税の影響を尋ねました。彼は『90%の業務がすでに停止している』と話してくれました。これは関税がまだ54%だったときの話です。今では全面的に止まっているはずです。この貿易戦争が長期化すれば、輸出業務は再開できず、製造工場、国際物流、販促プラットフォームなどもすべて連鎖的に影響を受けます。私たちのような財務サービスも報酬を得られません。関係者の収入が減るだけでなく、インフレなどの副次的な影響も出てくるでしょう。今年は軽々しく転職を考えるべきではありません。職を維持できるだけでも十分に幸運なことだと思います。」
このような経済の悪化は、単なる景気後退にとどまらず、社会的・政治的リスクの引き金となる可能性もあります。2025年には中国の大学卒業予定者が1,222万人と過去最多となりますが、一方で製造業では工場閉鎖やリストラが相次いでおり、新卒者の就職先はますます狭まっています。
中国問題の専門家・王赫氏は、中共が情勢を見誤ったと指摘します。「トランプ政権が世界中の国々に関税を課す中で、中共は反米勢力を結集できると踏んでいました。ところが、実際にはアメリカは他国には関税の緩和を行い、中国にだけ強い圧力をかけています。中共はトランプの戦略にまんまとはめられたのです。」
王氏は続けて、「中共の内部でも、アメリカとの関税戦争を継続するかどうかについて意見が分かれており、政権内部の力関係にも変化が生じている可能性があります。今後、政局が大きく動くきっかけになるかもしれません」と述べました。
また、華人経済学者の李恒青氏も、「『最後まで付き合う』という今回のスローガンは、数年前の『ゼロコロナ堅持』と同様に、現実を顧みない一方的な意思決定の現れだ」と批判します。「このような体制の下では、本当に有益な意見が抑え込まれてしまい、時間が経てば経つほど損害が拡大します。中国人は非常に忍耐強いですが、『生きられない』ことだけは我慢できません。今やアメリカと完全に経済的に切り離され、関税が125%ではビジネスが成立しません。企業が倒産すれば雇用に直結し、庶民の生活に直撃します。」
李氏はまた、「問題はますます増えており、いずれ爆発的な形で噴出するでしょう」と警告しました。そして最後に、「今では中国の指導層ですら、中共政権の未来に懐疑的です。中国で起きる大変革は、まさに『天命』とも言えるものです。もし中共が滅びる運命にあるなら、それは誰にも止められません」と語りました。
(翻訳・吉原木子)