近年、中国各地で「ゴースト村」が急増しています。服が綺麗に畳まれ、真新しい家具が備え付けられているにも関わらず、人の気配はありません。かつての人口大国で、いったい何が起きているのでしょうか。

荒廃した農村部の現状

 最近、中国のSNSには「ゴースト村」に関する動画が相次いで投稿され、社会に大きな衝撃を与えています。投稿によれば、複数の省では、多くの村が廃墟となり、人の気配がまったく感じられず、時間が止まったかのような風景が広がっています。

 こうしたゴースト村は、人口の少ない辺鄙な地域だけではなく、北京市や上海市など、人口密度の高い大都市の近郊に位置しています。たとえば、北京市西部の大台地区には、すでに複数のゴースト村が存在しています。ある村では住民がたった一世帯しか残っておらず、また別の村では高級な庭付き住宅が立ち並んでいるにもかかわらず、誰も住んでいません。

 さらに、一部の家屋はまだ新しく、家具も整然と配置されている状態でしたが、住民はすでに村を去っているようでした。動画を見た視聴者らは「人々はいったいどこへ行ってしまったのか?」と疑問を投げかけました。

上海にも「ゴースト村」出現

 中国最大の都市であり、経済と文化の中心地である上海にも、人口減少の波が押し寄せています。ここ数年、上海でも「ゴースト村」と呼ばれる無人化した村が次々と確認されています。

 たとえば、上海松江区の泖港鎮(もうこうちん)にある村は、いまや典型的な「ゴースト村」と化しており、すべての家屋が空き家となっています。かつての賑わいは完全に失われ、静まりかえっています。

 こうした状況が顕著に現れたのは、新型コロナウイルスの流行以降です。多くの動画配信者は「上海にはもう人がいない」と口を揃え、「かつてはあれほど活気溢れる上海だったが、今ではまるで死んだようだ」と嘆いています。そして「3000万人の大都市なのに、街には誰もいない。道路にも人がいない。店にも顧客がいない」と語っています。さらに、市民からも、「以前の上海は外国人で溢れていたが、いまではほとんど見かけないし、郊外ではまったく見かけなくなった」といったコメントがありました。

 ある動画配信者によると、「いまの上海では、病院や観光地の一部を除き、どこへ行っても人がいない。ショッピングモールも閑散としていて、街でも人影がまばら。農村部には、もはや誰も住んでいない」とのことです。

 人口減少は、統計データにも表れています。上海市統計局が発表したデータによると、2024年の上海市における外来人口のうち定住した人は983万4900人となり、2020年のコロナ禍前と比べて48万5000人も減少しました。また、2024年の常住人口の出生数は11万8000人であるのに対し、死亡者数は15万6000人に達し、死者数が出生数を上回っています。こうした傾向はすでに数年間続いており、上海市の人口が確実に縮小しているのはわかりますが、閑散とした街中の様子がどこまでデータに反映されているのかが疑問視されています。

各地に出現する「ゴースト村」現象

 ゴースト村の出現は、北京や上海といった大都市に限った現象ではありません。中国全土を見渡すと、河北省や河南省、湖北省、湖南省、広西チワン族自治区、雲南省など、さまざまな地域でゴースト村が出現しています。

 各地の公式統計にも人口減少の傾向が現れています。たとえば、江蘇省泰州(たいしゅう)市の姜堰(きょうえん)区と興化(こうか)市の統計局が公表した2024年の人口データには、非常に顕著な傾向が見られました。

 姜堰区では、2024年の出生数が2,200人だったのに対し、死亡数は8,000人にのぼり、死亡者数は出生者数の3.7倍となりました。興化市では、出生数が3,300人、死者数が14,500人となっており、死亡者数は出生者数の4.4倍に達しました。

 専門家らの分析によれば、こうした現象は単に出生率の低下だけが原因ではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合った結果です。中でも、近年続いている感染症の流行が、その傾向に拍車をかけているとされています。

 現在の中国では、新型コロナウイルス(いわゆる中共ウイルス、COVID-19)をはじめ、インフルエンザ、ノロウイルス、鳥インフルエンザなど、複数の感染症が同時に蔓延しています。その影響で、各地の病院には患者が殺到し、院内は人で溢れかえっています。

 加えて、上海市や広州市、湖南省、河南省などの市民からは、多くの若者が突然死することや、火葬場が逼迫していること、農村部で新しい墓が急増している情報が多数寄せられています。さらに、上海市や深圳市、浙江省、寧夏回族自治区などの地域では、火葬場の拡張工事が進められていることも明らかになっています。

「14億人」は本当なのか?

 中国で2019年に新型コロナウイルス、いわゆる「中共ウイルス」の感染が拡大して以降、当局は感染実態を徹底的に隠蔽してきました。そのため、パンデミックの間、中国国内の「本当の死者数」は、いまだに明らかにされていません。こうした中、中国共産党が公表する「14億人」という人口データの正確性に疑問符がつけられるようになり、「実際は8億人、あるいは10億人程度ではないか」との推測がされています。

 実際、中国政府が発表するデータと民間の予測との間には大きな乖離があります。テスラのCEO、イーロン・マスクが開発した人工知能モデル「Grok 3」の推論によれば、パンデミックの3年間で中国の人口はおよそ1億5千万人から2億人も減少した可能性があるとされています。

 人口の急激な減少は、中国の産業構造にも深刻な影響を与えています。ある中国の動画配信者は、「今の飲食業界にとって最大の問題は、人がいないことだ。どうして誰も外食に来ないのか。『みんな家で自炊しているから』という声もあるが、スーパーに行けば『みんな出前を取っている』と言われた。しかし、出前の注文数も減っている」と述べています。

 この動画配信者はまた、「北京や上海、杭州などの大都市に住む友人たちも『なんだか人が減った気がする』と話している。では、みんな二線都市や三線都市に行ったのか?でも、武漢に住む友人たちも『ここにも人がいない。皆他の都市に行ったのではないか』と言っている。一体どうなっているのだ」と驚きを隠せない様子でした。

 さらに、河南省や河北省、山東省、黒竜江省、吉林省、遼寧省の6省において、「村を合併して町にする」といった行政区画の合併の動きが始まっているとの指摘もあり、今後全国的に合併を進める可能性もあるとのことです。

 中国の大手ポータルサイトに掲載された記事も、同様の動きを報じています。「縮小型都市が増えている」とし、人口の減少に合わせて行政単位を簡素化する動きが今後本格化するとのことです。

 こうしたゴースト村の出現は、単なる人口減少の現れではなく、その背後には中国社会が抱える深刻な構造的問題が横たわっています。今後も人口減少が続けば、中国社会はより複雑で、深刻な課題に直面せざるを得なくなるでしょう。

(翻訳・唐木 衛)