近年、中国経済は低迷が続いており、一線都市の商業的な活気が急速に失われつつあります。北京、上海、広州、深圳などの都市では、住民が街頭やショッピングモールの人出の激減を実感しており、かつて人で溢れていた商業エリアが、現在では閑散としていると報告されています。

 上海の淮海路は、都市を象徴する最も賑やかな商業街の一つであり、現代的な都市機能と歴史文化が融合するエリアです。かつては平日でも週末でも常に人で賑わっていましたが、今では週末の昼間でさえ通行人をほとんど見かけなくなりました。南京路でも同様の光景が見られ、午後6時という本来なら混雑する時間帯にも関わらず、人通りはまばらで、ショッピングモール内では多くの店舗が閉店しており、その静けさが際立っています。

 こうした現象は上海に限ったものではありません。蘇州の昆山や南通といった周辺都市にも同様の傾向が見られます。これらの都市は長年、上海の「裏庭」として、多くの外資系企業が工場を構える製造拠点として発展してきました。かつては、蘇州工業園区や昆山開発区では登録資本金が5億元に満たない企業は相手にされないほどでしたが、現在ではそうした地域の経済活力も急速に衰えつつあります。

 2023年以降、多くの上海市民が商業エリアの雰囲気に明らかな変化を感じています。ある市民は、「商業施設の来客数が目に見えて減っているだけでなく、多くの店舗が相次いで閉店し、立地の良い老舗の商業エリアでさえもその影響を免れていない」と語っています。たとえば、淮海中路にある新天地では、かつてレストランフロアが常に満席だったにもかかわらず、今では夜のピークタイムでも客はまばらです。

 かつて上海の商業の象徴だった徐家匯では、六百や太平洋百貨といった有名百貨店がすでに閉店しました。南京西路にある20年以上の歴史を持つ梅龍鎮伊勢丹も静かに営業を終えました。これらの商業施設は多くの上海市民にとって思い出の場所であり、「今の上海はもはやかつての上海ではない」と感じる人も少なくありません。

 「消費者がネットショッピングに移行したのでは」「郊外や他の都市で買い物をしているのでは」との声もあります。確かに、そうした要因が一部にあるのは事実ですが、実体経済の衰退と人口の減少という構造的な問題の前では、それは主因とは言えません。新たな商業施設の建設が進む一方で、限られた人流が分散され、既存の商業エリアの売上が落ち込むという悪循環が生まれています。実際には、開業から間もない施設ですら十分な人流を確保できず、開店当初から閑古鳥が鳴いているケースも珍しくありません。

 さらに、現在では商業施設の供給過多が明らかになっています。ここ数年で新しいショッピングモールが次々と建設された一方、消費者の一部がネット通販へ移行したことにより、実店舗での消費は分散されました。その結果、ほとんどの商業施設が人通りに恵まれず、運営が困難な状況に追い込まれています。加えて、依然として高額なテナント賃料が重くのしかかっており、実体経済の持続が難しい環境となっています。

 こうした現象は、不動産市場にもはっきりと現れています。現在、オフィスビル市場では賃料の大幅な下落と物件の大量売却が進んでいます。かつては、浦東にある上海中心、金茂大厦、環球金融中心、東方明珠といった高級オフィスビルが高値でも即座に買い手がついていましたが、今ではフロア単位で安価に売り出されても、買い手が見つからない状況です。

 上海の中心業務地区がかつて持っていた優位性はすでに失われています。多くの住宅や高級マンションが売りに出されているものの、実際に購入する人はほとんどいません。価格は2,000万~3,000万元の水準で維持されていますが、需要が追いつかず、市場は冷え込んだままです。市中心部にある古くて狭い住宅(いわゆる“老破小”)は30%以上値下がりしているにもかかわらず、物件が多すぎて選ばれにくく、買い手がつかないケースが続いています。現在の市場は完全に買い手主導に変化しています。

 かつての上海では、新築住宅を購入するには長蛇の列に並び、抽選に参加するために100万元を支払う必要がありました。この「名額費」を支払った上で、実際に1,000万元以上の資金を銀行口座に持っているかどうかまで審査されていました。それほどまでに過熱していた不動産市場も、今では新築物件が原価を下回る価格で販売されても関心すら持たれなくなり、市場の冷え込みの深刻さが浮き彫りになっています。

 現在、上海の住宅価格は確実に下落しており、下げ幅は地域によって異なります。一部地域では価格がすでに2017年頃の水準にまで戻っているとの指摘もあります。ネット上に出回っているデータによると、現在の平均単価は平米あたり約5万元で、数年前では想像できなかったほどの水準です。

 こうした状況は上海に限られたものではありません。かつて最も堅調だとされていた北京でも、同様の現象が起きています。朝陽区にある有名な商業施設「世貿天階」では、9割の店舗が閉店していたという動画が公開され、多くの人々に衝撃を与えました。かつては多くの買い物客でにぎわっていた館内も、今では人影まばらで、あまりの落差に驚かされます。

 深圳、広州、東莞といった都市でも、同様の傾向が見られます。特に製造業で知られる東莞では、1990年代以降、毎年のように二桁成長を維持してきましたが、近年は広東省内で最も低い経済成長率となっています。市内の工業団地や鉄道駅もかつてのにぎわいを失い、経済活動の停滞が目に見える形で表れています。

 このような「一線都市の空洞化現象」の背後には、国内経済の減速だけでなく、国際情勢の変化も大きく関係しています。2024年4月、アメリカ政府は中国に対して全面的な対等関税措置を発表し、輸出志向の強い中国東部沿海地域に深刻な影響を及ぼしました。特に上海や広東のように外資依存度の高い地域は、国際資本との結びつきが強く、その影響を最も大きく受けています。

 データによると、2024年に中国へ流入した外資は前年と比べて約90%も減少しました。その多くは上海を経由して中国市場に参入していたため、上海経済への打撃は非常に深刻なものとなりました。上海は中国における金融の中枢であり、外資にとっての主要な玄関口でもあるため、この影響は避けられないものでした。

 2018年に始まった米中貿易戦争以降、世界的なサプライチェーンの再編が加速し、多くの外資企業や中国企業が東南アジアへ移転しています。沿海地域では工場の稼働率が低下し、注文も減少、操業停止を余儀なくされる企業も相次いでいます。加えて、香港の金融地位の低下により、資金面で香港との結びつきが強かった深圳にも大きな影響が及んでいます。

(翻訳・吉原木子)