最近、アメリカのトランプ大統領は、中国製品に対して新たに34%の「対等関税」を課すと発表しました。すでに実施されていた20%の関税と合わせると、対中関税の合計は54%に達しています。これに対し、中国政府(中共)も即座に対抗措置として、アメリカ製品に34%の報復関税を課すと発表し、米中間の新たな貿易戦争が全面的に激化しました。この対立は、世界市場に不確実性をもたらすだけでなく、中国の輸出企業に深刻な打撃を与えています。
自由アジア放送の報道によると、中国の対米貿易は現在、ほぼ完全に「一時停止」状態にあります。広州でBluetoothイヤホンなどの電子製品を輸出している企業の責任者である龔(コン)さんは、「広東省内のほとんどの対米貿易会社は、すでにアメリカからの注文を受け付けておらず、業務を停止して状況を見守っている」と語っています。「昨日、業界の仲間と食事をしましたが、彼らは以前、製品をベトナム経由でアメリカへ輸出していました。ですが今では、ほとんどの注文を停止して様子見に入っています。広州や広東の貿易会社は現時点で米国向けの注文を全てストップしています」と話しています。
龔さんによれば、近隣の香港企業が最近ベトナム・ホーチミン市に新たな工場を建設し、現地で従業員の採用準備を進めていた最中、アメリカが突如ベトナム製品にも46%の関税を課すと発表したため、その工場が営業開始前から窮地に立たされてしまったそうです。「せっかく完成した工場が、営業直前になって想定外の高関税に直面しました。これでは中国を避けてベトナムに移した意味がありません。今までの投資が無駄になるかもしれません」と彼女は嘆いています。
江蘇省のEC事業者・朱さんも、「今回のアメリカの高関税政策は、中国の無数の中小EC業者を倒産に追い込む可能性がある」と強い危機感を示しています。「利益がほとんど出ない状態ではビジネスを継続できません。江蘇や広東ではECを生業にしている人が非常に多いですが、みんなが一斉に行き詰まっています。このままだと、皆で貧しくなり、飢え死にする時代が来るかもしれません。そんな中、先日会った80代の男性は『この国をめちゃくちゃにした、外交も四面楚歌だ』と怒っていました。今では中国とまともに外交関係を持っている国は、ほとんど存在しないのです」と語りました。
ジャーナリストの葛(カツ)氏は、「ベトナムとアメリカの貿易関係であれば、両国首脳の交渉によって関税の調整も可能ですが、中国の場合はそうはいかない」と指摘しています。「この貿易戦争は中国にとって非常に不利です。中国はアメリカ市場に過度に依存しているからです。中国が先に関税を発動したものの、それに追随する国はありませんでした。これこそが中国にとって最大の誤算です。仮にベトナムがアメリカと合意を結び有利な条件を得られれば、他の国も続き、中国はますます孤立することになります」と語っています。
中国社会科学院・世界経済と政治研究所の研究員である徐奇渊(じょ・きえん)氏は、経済誌『財経』にて、「アメリカは短期的に関税政策を大きく見直すことはないだろう」と指摘しています。その理由は、アメリカの実体経済は今のところ関税の影響をあまり受けておらず、さらにドル安が製造業の回帰を促しているためです。
トランプ大統領の「対等関税」政策により、中国からアメリカへの輸出商品は60〜70%という非常に高い関税率に直面しており、年間5,000億ドル規模の対米輸出に大きな衝撃を与えることになります。
WeChatの公式アカウント「首席経済学家論壇」によれば、広発証券の郭磊(かく・らい)主席エコノミストは、「関税の影響で中国の対米輸出の成長が鈍化し、名目GDPに対して1ポイント程度のマイナス影響が出る可能性がある」と分析しています。加えて、輸出の減少により工場の稼働率が低下し、製品価格には下押し圧力がかかるとの見方です。
光大証券の主席エコノミスト・高瑞東(こう・ずいとう)氏は、「今回の米中貿易摩擦はすでに技術と金融分野にも波及しており、交渉が進展しなければ5月から6月にかけて『技術のデカップリング』や『金融のデカップリング』が進む可能性がある。これが関税政策と同時に作用すれば、資本市場への圧力は一層強まるだろう」と述べています。
経済学者の華生(かせい)氏は、「アメリカの巨額な貿易赤字と中国の巨額な黒字という構図は長期的に持続不可能であり、トランプ政権による世界貿易秩序の再構築は米国の利益から見ても自然な流れだ」と分析しています。
今回の関税措置により、中国がアメリカに輸出していた約4,000億ドル分の商品が行き場を失うという新たな問題が浮上しています。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、「アメリカの関税障壁によって、中国の輸出品が世界市場に流出し、『チャイナ・ショック』を再び引き起こす可能性がある」と報じました。他国もアメリカの関税政策には不満を抱いていますが、自国市場を中国の安価な製品に占領されることも望んでいません。
米財務長官スコット・ベッセント氏は、「中国は現在、デフレーションと経済低迷、景気後退の三重苦に直面しており、輸出に依存してその状況を打破しようとしているが、もはやこのビジネスモデルは限界に達している」と警告しています。「トランプ大統領の関税政策は、中国の経済モデルそのものを打ち砕くものです。中国はアメリカ市場なしでは立ち行かないのです」とも述べました。
現在、中国は世界の製造業の31%を占めていますが、保護主義が広がる中、今後もこれまで通りに製品を世界に供給できるのか、大きな疑問が残ります。
こうした状況下、中国政府はアメリカの「対等関税」措置に、対抗する形で4月4日にWTOに提訴を行い、同時に報復関税として、アメリカ製品に34%の関税を課すことを発表しました。しかし、トランプ大統領は「中国は明らかに誤った一手を打った」と批判し、「その選択は中国にとって、耐えがたい結果をもたらすだろう」と警告しました。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』は3月初旬、関係者の話として「習近平総書記は、以前の貿易戦争の教訓から、対等関税による反撃はむしろ中国側に大きな損失をもたらすと認識している。なぜなら、アメリカの対中輸入は中国の対米輸入の何倍にもなるからだ」と報じました。現在、各国がアメリカとの関係を重視する中で、中国の輸出依存型経済はこれまでにない大きな試練に直面しています。
(翻訳・吉原木子)