清明節は、中国の漢民族にとって伝統的な重要な祭祀行事であり、人々は故人を偲ぶために冥銭を焼いたり香を焚いたりします。しかし、こうした風習は火災を引き起こす原因にもなっており、毎年清明節の前後には火災が多発しています。今年も北京市をはじめ、山西省や広西チワン族自治区などで、祭祀活動に起因する火災が相次いで発生し、懸念が高まっています。

 3月30日、北京市朝陽区の嘉創路と無名路の交差点南側で火災が発生しました。44歳の女性、張さんが風の強い中で冥銭を焼いて祈願していたところ、残った火の粉が周囲の枯れ草に引火し、火災が発生しました。この火災により、現場では車両7台が全焼し、2台が損傷を受けましたが、幸いにも人的被害はありませんでした。現在、張さんは失火の疑いで警察により刑事拘留されています。

 張さんの供述によると、当日正午、4袋の金色の冥銭を持って自宅を出発し、現場近くの空き地で祈願のために紙を燃やしていたとのことです。事故現場は鉄板で囲われた場所のすぐ外側で、その囲いの内側には多数の車が駐車されていました。囲いの下や空き地の地面には枯れ草が密集しており、非常に燃えやすい状態でした。現場の動画では、火災発生後、黒煙が立ち込め、複数の車両が激しく燃えています。一部は骨組みだけになっている様子が確認され、消防隊員が懸命に消火活動を行っていました。

 北京市内ではこのような事例が相次いでいます。4月1日、朝陽区黒荘戸郷の草地で火災が発生し、調査の結果、謝という村民が現場で冥銭を燃やしていた際に風で火の粉が飛び、近くの草地に引火したことが判明しました。

 3月29日には、東壩郷の交差点近くの空き地で雑草火災が発生し、王という村民が囲いの外で冥銭を燃やしていたところ、燃えた紙が風で囲いの内側に飛び、草に引火したということです。

 また、3月25日には、大興区庞各庄鎮でも火災が起こり、村民の趙さんが野外で冥銭を焼いていた際に周囲の枯れ草に引火し、警察により13日間の行政拘留および400元の罰金処分を受けました。さらに3月22日には、房山区張坊鎮で山火事が発生し、大石窝鎮にまで延焼しました。調査の結果、村民の盧さんが野外で冥銭を燃やしていたことが原因であり、彼は刑事拘留されています。

 北京市以外でも、清明節の祭祀に起因する火災が頻発しています。4月4日、山西省沁源県と平遥県の県境で山火事が発生し、地元当局は800人以上の救助隊を動員して夜通し消火作業を行いました。焼失面積は現在も調査中です。沁源県王和鎮郜家峪村の村民によると、正午ごろに山火事が発生したのを目撃したとのことで、火はまだ自分の村には及んでいないものの、消防隊などの専門部隊がすでに出動しており、いつでも避難できるよう住民は準備をしていると語っています。彼は今回の山火事が最近増えている祖先参りと関係している可能性があると推測しています。

 山西省のネットユーザーからも、「火事は平遥の村民が墓参りで火をつけたことがきっかけで、風で沁源まで燃え広がった。」「午後3時ごろに消防車が来た。しかし、風が強すぎて昼間でも近づけなかった」「父が連絡を受けて急いで消火に向かい、コートも着ずに出発して今もまだ帰っていない」といった声が多数上がっています。

 広西チワン族自治区玉林市でも、清明節当日の4月4日、祭祀が原因と見られる火災が発生しました。ネット上の映像では、玉州区の城西にある工場が火災に見舞われ、黒煙が空を覆い、爆発音も聞こえたとされています。火元と見られる場所の近くには墓地があり、多くの市民が冥銭を燃やして祭祀を行っている様子が確認されています。

その夜、抖音(中国版TikTok)のあるユーザーが、「玉州区第六実験小学校付近の山火事が昼から夜まで燃え続けた。しかし、消火に来た様子はなかった。」とする動画を投稿しました。現在、この火災が昼の工場火災と同一のものかどうかは確認されていません。

 玉林市の住民からは、「今日は玉林全体が山火事に包まれている。特に博白県亜山鎮はひどく、大量のユーカリ林が燃えている。」「出動しないのではなく、出動しても追いつかない。清明節の日は山火事が多すぎる。」「灰が街中に舞って、部屋の中にまで入ってきた」「実家の向かいの山も一晩中燃えていたが、誰も消火に来なかった」「あまりにも無責任だ」といった怒りの声が相次いでいます。

 清明節の到来とともに、冥銭の焼却によって引き起こされる火災の問題が再び浮き彫りになっています。これらの火災は公共の安全に重大な脅威をもたらすだけでなく、自然環境にも深刻なダメージを与えます。故人を偲び、伝統を継承することは大切です。しかし、それと同時に、安全で文明的かつ環境に適した祭祀のあり方を広く呼びかけ、これ以上の悲劇を防ぐことが急務です。

(翻訳・吉原木子)