最近、山東省の江海匯(こうかいかい)グループが、総額約280億元に上る大規模な金融詐欺事件に関与している疑いが浮上し、社会的な注目を集めています。事件が明るみに出た後、同グループの董事長(会長)である安志斌(あん・しひん)氏とその妻周春衛(しゅう・しゅんえい)氏は資金を持ってアメリカへ逃亡したとされ、多くの投資家が資産を失いました。被害者たちは、当局による徹底的な調査と、「契約詐欺」にあたる資金の回収を求め、自らの正当な権利の保護を訴えています。
江海匯グループは、山東省政府から長年にわたり支援を受けてきた金融企業で、合法な営業許可を持ち、15年以上にわたって運営されてきました。同社は高利回りをうたって一般市民から資金を集め、その資金を「プロジェクト」と称する投資事業に投入してきました。しかし、2023年8月に資金繰りが破綻し、「契約詐欺」の疑いが表面化しました。
2024年8月中旬、各地の投資家から「江海匯の理財商品が償還できなくなっている」との声が上がり、安志斌氏が資金を持って国外に逃亡したことが判明しました。その後の調査で、彼と妻は2023年中にすでにアメリカに入国していたことが確認されました。
安志斌氏の逃亡によって、山東省の済南市、淄博市、聊城市、東営市、棗荘市、潍坊市、濱州市など、広範囲にわたる地域の投資家に深刻な影響が及んでいます。
自由アジア放送の報道によると、複数のP2P投資被害者の証言から、江海匯グループは山東省内の15の地級市に130社以上の子会社を設立し、地方政府と連携して金融サービスや投資誘致プラットフォームを展開していたことが明らかになりました。たとえば、潍坊産融公司、徳州産融公司、済南産融公司、青島産融公司などがあります。
2024年3月26日、被害者の張さんは次のように語りました。「江海匯がここまで多くの人を騙せたのは、政府の信用が後ろ盾になっていたからです。政府の支援があったことで、会社は合法に見えてしまったのです。江海匯は山東省の数十万人の市民から、200億元以上を詐取しました。事件が発覚してから、私たちはずっと権利回復を求めて行動しています。北京にも、山東省内の政府機関にも行きましたが、地元の公安当局による市民への弾圧は非常に厳しく、監視、拘束、留置など、あらゆる手段で声を封じ込められています。それでも問題は全く解決されていません。」
張さんはさらに、「この会社は16年間も営業を続けてきました。2023年8月に事件が発覚した後、山東省政府は積極的に対応するどころか、市民への拘束や事情聴取、拘留などを続けてきました。私たちは大規模な抗議活動を計画しており、千人以上が済南市の省委員会前で座り込みやハンガーストライキを行う予定です」と話しました。
また彼女は、かつて政府が「中小企業支援のために出資を」と国民に呼びかけ、高金利を約束して正式な契約を結んでいたことにも言及しました。しかし江海匯グループの破綻後、会長の安志斌氏と妻の周春衛氏は、地元当局の手配で米国へ逃亡したと主張しています。「事件のあと、政府が彼らをアメリカへ保護・逃避させたのです。私たちが損失補償を求めて政府に訴えても、公安当局から過酷な弾圧を受け、あらゆる手段で封じ込められています。」
濱州市の別の張さんも証言しました。「この会社には6つの主要子会社があり、“緊急融資(ブリッジローン)”業務を行っていました。各地の城投会社(都市建設投資企業)と出資契約や業務提携を結んでいました。私たちが受け取っていた月利は8厘(0.8%)から1分(1.0%)でした。今年の春には、政府との連携をうたい、各地で説明会を開催していました。」
“緊急融資”とは、中小企業に対して短期の資金を提供するものであり、本来は自己資金で運用されるべきもので、一般からの資金調達は禁止されています。
彼女はさらに、「うちの県には100人以上の営業担当者がおり、約800世帯が投資に関わっていました。破綻後、多くの幹部や営業担当者は法の裁きを受けることなく、資産も既に移され、私たちは上京して陳情することすら許されていません」と語りました。
張さん自身は、合計500万元を江海匯に投資し、全額失いました。また、濱州では生活に絶望して自ら命を絶った人も多く、彼女は涙ながらにこう語りました。「ビルから飛び降りた人もいれば、うつ病で亡くなった人もいます。聊城の知人の話では、60歳を超えた方々がこの2〜3ヶ月で何人も亡くなったそうです。みんなこのショックに耐えられなかったんです。私も事件が起きた当初は毎日泣いて、3ヶ月間泣き続けて目が充血し、失明寸前までいきました。私の子どもは……(嗚咽)結婚資金もなく、家も建てられません。これは私たちの老後の資金でした。90年代に私と夫がリストラされてから、苦労して貯めたお金がすべてなくなりました」
「資管黒板報」の報道によると、江海匯グループおよび関連会社は100社以上にのぼり、累計で数千億元もの資金を集めていたとされ、理財顧問(ファイナンシャルアドバイザー)は1,000人以上に達していたとのことです。
被害者たちは、江海匯グループの資金の流れがなぜ公開されないのかに強い疑念を抱いています。これについて、東営市公安局経済犯罪捜査課の責任者は、「現在は捜査中であり、詳細は一般には公開できない」と述べています。
(翻訳・吉原木子)