ネット上の多数の動画によると、旧正月からわずか1カ月あまりしか経っていないにもかかわらず、上海市、広東省、江蘇省、浙江省など経済が発展している地域では、すでに大量の農民工(出稼ぎ労働者)が帰郷する動きが見られています。これは、失業の波が各業界を襲い、出稼ぎに出た人たちが、最も工業化が進んだこれらの地域ですら仕事を見つけられないためです。

江蘇省・浙江省の製造業不況

 農村の故郷から大都市に出稼ぎにやって来たばかりの農民たちは、2025年最初の帰郷ラッシュがすでに始まっているとは夢にも思いませんでした。かつて製造業の拠点であった複数の地域では、多くの人が仕事を見つけられず、絶望と無力感を抱えながら、大きな荷物を背負い故郷の農村へ戻るしかありません。

 あるブロガーは次のように語っています。「江蘇省と浙江省にはかつて多くの大規模な製造企業があり、中国製造業の中心地だった。しかし、今は状況が大きく変わり、海外からの受注が激減し、多くの工場が稼働できず、従業員の募集すらしていない。国内の注文を持つ一部の企業だけが人を雇っているが、給与水準はここ数年で大きく下がっている。江蘇省と浙江省は食費や住居費が高いため、働いても日常生活に必要な支出すらまかなえない出稼ぎ労働者が多く、大勢がやむなく帰郷している」

 あるネット配信者は投稿した動画で次のように語っています。「これから出稼ぎに出ようとしている人は、まずこれらの人たちを見てほしい。彼らは出稼ぎに行くのではなく、帰郷する準備をしているのだ。外でそんなに簡単に稼げるなら、こんなにも多くの人が帰るだろうか?」

 「見てくれ、数十人分もの荷物がここに山積みになっている。みんな仕事が見つからないのだ。これらの荷物が全部帰郷する人たちの持ち物だ。こんな状況を見て、まだ蘇州に来ようと思うか?今は多くの出稼ぎ労働者が職を見つけられずにいる」

 「今の雇用市場がどれほど厳しいか、多くの人はまだ分かっていない。どれだけの人がそこで立ち往生しているかも知らない。10人の採用枠に100人が殺到し、100人の枠には500人が応募するような状態だ。江蘇省・浙江省には今、数十万人という出稼ぎ労働者が滞留しているのだ。もう職探しをやめたほうがいい。ほとんどの工場はすでに人手が足りている。今、バスターミナルや鉄道駅では、スーツケースを引いてあちこちで仕事を探している人たちが大勢いる。毎日、大量の労働者が帰路についている。2月初めに出てきたばかりなのに、3月になっても仕事が見つからず、そのまま故郷に帰るしかない」

 別の動画投稿者がこう語っています。「今は朝の5時13分、(浙江省)昆山駅からのライブ配信だ。今のこの光景を見てくれ。深夜から朝にかけて、これだけ多くの人がいる。これが今の現実の状況だ。今日は20人の募集に、200人以上が集まった。今の杭州市の就職市場、江蘇・浙江全体の状況がまさにこうなのだ。採用する人数は少ないのに、応募する人は多すぎる。みんなこのあたりに滞留してしまっているのだ」

 「この工場の仕事は過酷で、『死のライン』とまで呼ばれている。以前は誰もやりたがらなかったような仕事だ。でも今は、みんなその仕事に殺到しているし、その上面接に通るとは限らない。自分に何かアピールできる強みがあるのか、よく考えてみるべきだ。今は工場のほうが応募者を選ぶ時代になっている。300人が応募して、採用されるのは20人。合格する確率は10%もない」

 あるネットユーザーも次のように書き込んでいます。「今の杭州がどれほどひどい状況か想像できないはずだ。大企業は次々と減給し、リストラを進めている。中小企業は赤字に苦しみ、倒産が相次いでいる。道ばたの小さな店ですら、何とか持ちこたえている状態だ。まともに稼げている人なんて、本当にごくわずかしかいない」

 江蘇省南京市のある不動産仲介業者は、2024年には南京市でおよそ200の建設現場が稼働していたものの、今年は通年でわずか70カ所ほどに減る見通しで、64%の大幅な減少になると明かしています。工事現場での人手需要も急減しており、南京での建設作業に仕事を求めていた多くの農民工は、すでに故郷へと引き返しています。

上海・広州も不況の苦境に陥る

 では、中国で最も経済発展している一線都市である上海や広州は、状況が少しましでしょうか?

 しかし残念ながら、上海や広州へ働きに行った多くの人が、すでに帰路についています。なぜなら、仕事がまったく見つからないか、見つかったとしても月給がわずか4000元(約8万円)前後で低すぎるからです。

 それもそのはずで、企業の経営者たちも利益がほとんど出ておらず、高い給料を払う余裕がないのです。中には、今年はもう事業をやめて、故郷に帰って「寝そべる(躺平)」選択をしたという経営者も少なくありません。経営者がいなくなれば、出稼ぎ労働者が働く場そのものが消えてしまいます。

 大都市で月給4000〜5000元(約8〜10万円)では、最低限の生活すら成り立ちません。そのような状況で、都市にとどまることなどできるはずもなく、結局は故郷へ戻るしかないのです。

 このため、旧正月明けに上海や広州へ職を求めてやって来た多くの若者たちは、今「今年の就職活動はまるで地獄の幕開けだ」と嘆いています。

 あるネットユーザーが撮影した動画によると、上海市から河南省へ向かう列車では、立ち席のチケットまでもが売り切れていました。乗車しているのは、ほとんどが上海で仕事を見つけられずに帰郷する農民工たちです。

 また、別の動画では、広州市内のある長距離バスターミナルで、少なくとも数百人が大きな荷物を背負い、故郷へ戻るバスを待っている様子が映っています。撮影者はこう語っています。「広州では仕事が見つからない。だから帰るしかないという人がどんどん増えている。今年の景気では、出稼ぎに行くことすら赤字になりかねない」

 別のネットユーザーは次のように語っています。「今の広州市には空き部屋があふれていて、賃貸住宅がまったく借り手のつかない状態になっている。広州では多くの大家が家賃を大幅に引き下げており、かつて月500元(約1万円)だったワンルームも、今では値下げ交渉次第で200元(約4000円)でも借りられるようになっている。今の広州市の経済状況が悪化し、多くの農民工がすでに故郷へ戻ってしまったため、広州に滞在する地方出身の人が以前より大きく減少している」

 すでに2023年7月の時点で、北京大学の張丹丹准教授(経済学)は、中国の若年層における失業率が46.5%に達しているという論文を発表していました。当時、中国共産党の公式発表による青年失業率は21.3%にとどまっていたが、実態との乖離(かいり)があると指摘されています。

 また、最近では中国のSNS「小紅書(シャオホンシュー)」のユーザーが中国の若年層失業率についてのサンプル調査を行ったところ、18歳から40歳までの若者を対象とした投票で、失業率が実に50.6%に達していたことが明らかとなりました。

(翻訳・藍彧)