過去20年近くにわたり、中国の高齢者人口は数・割合ともに倍増し、現在では3億1,000万人に達しています。予測によると、今後は毎年約1,000万人の高齢者が新たに増加し、中国は急速に重度の高齢化社会へと突入する見込みです。「豊かになる前に老いる」という状況の中で、年金の収支ギャップに対する圧力はますます深刻化しており、すでに待ったなしの状態です。
中国政府が最近発表した『2024年国民経済と社会発展統計公報』によると、中国の60歳以上の人口は3億1,000万人で、全人口の22%を占めています。うち、65歳以上の人口は2億2,000万人で、15.6%に相当します。
2025年3月23日に開催された「中国発展ハイレベルフォーラム2025年年次会議」において、中国民政部の唐承沛(とう しょうはい)副部長は、中国が世界で最も高齢者人口が多く、最も速いペースで高齢化が進行し、対応課題が最も重い国であると述べました。また、今後10年間にわたり、中国では毎年1,000万人以上の60歳以上の高齢者が新たに増加すると明らかにしました。
世界保健機関(WHO)や欧米の多くの先進国、そして中国においても、60歳以上の人々は「高齢者」と定義されています。2006年から2024年にかけて、中国の高齢者人口は1億4,900万人から3億1,000万人に増加し、総人口に占める割合は11.3%から22%にまで上昇しました。この数字は、中国における高齢化の進行が著しく加速していることを明確に示しています。
唐承沛副部長はさらに、人口の高齢化が、人口減少・少子化・地域間の人口格差といった傾向と重なり合い、高齢で要介護となる人々や独居高齢者の数と割合が増え続けており、それに伴って高齢者扶養比率が上昇していると述べています。
高齢者扶養比率とは、労働年齢人口に対する高齢者人口の割合を指し、社会の養老負担を測る上での重要な指標です。
国際基準では、60歳以上の人口が全体の10%を超える、または65歳以上の人口が7%を超えると「高齢化社会」と定義されます。65歳以上の人口割合が14%〜21%に達すると「中度高齢化社会」、21%を超えると「重度高齢化社会」とされます。中国政府の2021年の発表によると、65歳以上の人口はすでに14.2%に達し、中国は正式に中度高齢化社会に突入しました。
南開大学経済学院の教授であり、中国人口学会の副会長でもある原新氏は、2022年から2035年にかけて、中国の60歳以上の人口が急速に増加し、2035年前後には総数が4億人を突破し、人口全体の30%以上を占めるようになると予測しています。それに伴い、年金制度への負担も急増する見込みです。
第一財経が2024年12月に報じたところによると、2030年以降、中国の高齢者扶養比率は急速に上昇し、2035年には36.3%、2050年には53.5%、2084年にはピークの87.5%に達すると見込まれています。また、2024年1月に発表された『復旦学報』の研究によると、年金の投資収益を考慮しない場合、2035年までに年金の累積赤字は30兆元に達する可能性があるとされています。一部の専門家は、これらの年金赤字は実質的に「隠れた債務」であると指摘しています。
アメリカのブルッキングス研究所に所属する中国経済専門家のデビッド・ダラー(David Dollar)氏は、BBCとのインタビューで「高齢化は経済体にとっての慢性疾患のようなものである」と述べています。労働人口の割合が減少する一方で、社会が支える必要のある高齢者の割合が増えることにより、年金の負担が拡大します。結果として、若者は生活の余裕がなくなり、子どもを持つことをためらうようになります。さらに、高齢者は消費意欲が比較的低いため、経済の活力も落ち込み、社会は悪循環に陥ると分析しています。
第一財経によると、中国の年金赤字問題はすでに切迫した状態にあります。人力資源と社会保障事業発展統計公報や『中国財政年鑑』のデータによれば、2019年の時点で、中国都市部職工基本養老保険基金の収支ギャップは9,713億元に達し、その年の財政補助は1兆319億元に上ったと報告されています。
中国保険業協会が2020年に発表した資料によれば、2025年から2030年にかけての年金赤字は8兆元から10兆元に達すると予測されています。また、中国社会科学院が2019年に発表した『中国年金精算報告2019〜2050』では、全国の企業職工基本養老保険基金が2035年に枯渇すると見込まれています。
原新氏は「現在の見通しとしては、2030年前後に全国の年金収支が黒字から赤字に転じ、『収入が支出に追いつかない』状態に陥る」と述べています。
安邦智庫もBBCの取材に対し、中国の高齢化は先進国よりも厄介な問題だと指摘しています。なぜなら、中国はまだ発展途上の経済段階にありながら高齢化を迎えており、いわゆる「未富先老(みふせんろう)」の状態にあるからです。国家や社会の資産蓄積が不十分で、社会保障制度も整っておらず、高齢化社会に向けた備えが不足しているため、その影響はより深刻だとしています。
(翻訳・吉原木子)