コロナ禍で2020年以降、中国経済は低迷し、内需が振るわない状況が続いています。消費の「グレードダウン」に続き、近年では「極限低消費」という生活スタイルが広がっています。

 給与の減少や業界内の激しい競争により、人々の物欲は低下し、中国では「いかに貧しく暮らせるか」を競い合うようになっています。

中国で広がる「極限低消費」

 最近、中国のネットユーザーの間で「極限低消費」という話題が共感を呼んでいます。

 例えば、月収3万元(約60万円)のホワイトカラー層が、12元(約240円)の弁当を奪い合うように購入する光景が見られます。北京の金融街にある高級オフィスビルでは、スーツ姿の会社員が弁当を持参する姿が増えています。また、中間層の家庭では旅行予算を大幅に削減し、98元(約2000円)の格安航空券の検索件数が400%も急増しました。

 専門家によると、「極限低消費」が広がる背景にはさまざまな要因があると分析されています。中国では一般的に、家計収入の約7割が住宅ローン、教育費、医療費に消えてしまうといわれています。35歳以上の再就職が困難な状況も深刻です。一方、若者の間ではブランド品への追求も避ける動きが広がっています。

 かつて「月光族」(給料を使い切るライフスタイル)の人々も、今では貯金を試みるようになっています。

 ネットユーザーのコメント。
 「目が覚めたのではなく、お金がないからだ。将来に対する見通しが暗い」
 「減給され、10年前の水準に戻った。昨年から、ネットで不要なものは買わず、出前も注文せず、外食も極力しない。週末は近所や団地内で散歩するだけ。教育費も節約し、習い事は可能な限りやめた」
 「以前は化粧品なども高級なパッケージのものを使っていましたが、今ではすべて簡易包装のものに切り替えました。服はほとんど買わず、お菓子もやめ、野菜と果物だけを買っています。ジムも解約し、今は大通りを走るだけです。」

 広東省のあるネットユーザーは、生活スタイルの変化をこう語ります。
 「以前は夜9時や10時にならないと駐車場が埋まらなかった。今では8時にはすでに満車。みんな外食をやめ、家で食事をするようになった」

 浙江省のネットユーザー「tier95」は、さらに極端な節約術を披露しました。
 「インスタントラーメンのスープの素を一度に使い切らず、乾麺を追加して何度も使っている。一つのスープの素で3回は食べられる。中国人は今後『どれだけ貧乏に暮らせるか』を競い始めるだろう」

 ネット上では「いかにお金を使わずに生活できるか」を競うような投稿が相次いでいます。その中には、ユーモラスでありながらも、どこか切実さを感じさせるものが少なくありません。

 たとえば、携帯料金を最安のプランに変更する、ボディソープの代わりに石鹸を使う、夜遅くにスーパーへ行き値引きされた野菜を買う、クレジットカードを解約する、1日2食にする、5年以上使い続けた中古のスマートフォンを使い続けるなど、こうした節約術が数多く共有されています。

 山東省に住む元公務員の男性は海外の中国語メディアの取材に対し、次のように語りました。「消費の低迷は明らかで、節約はすでに共通認識になっている。地元の実店舗は一軒が閉店し、別の店が開業するというサイクルを繰り返しており、新規開店の数が閉店のスピードに追いつかない状況が続いている。中心街にあった老舗のホテルは昨年末に倒産した。また、10年以上営業を続け、高級感のある雰囲気で知られていたブティックも、昨年11月に『店舗譲渡』の張り紙を出したが、いまだに買い手がつかないままになっている」

 この「収入不安」の波は、医療現場にも及んでいます。河北省のある医療従事者は、海外の中国語メディアの取材に対し、こう語りました。
 「半年間ボーナスが支給されず、家計の負担がかなり重くなった。副業として屋台を出し、食べ物を売って家計の足しにしようと考えている。給料はできるだけ貯めて、子どもの学費に回さなければならない」

格差の拡大、「金がある人」と「ない人」の二極化

 しかし、一方で異なる現実を指摘する声もあります。
「ネット上でも現実でも、常に二つの世界が存在してきた。ただ、現在はその二極化がさらに深刻になっている。貧しい人はますます貧しくなり、消費を切り詰める一方で、富裕層は引き続き一線都市で高級住宅を争うように購入している。1000万元(約2.1億円)の物件は、彼らにとってまるで格安の白菜のようなものだ」

 低所得層にとって、極限まで切り詰めた日々の生活費と比べると、旅行は「大きな出費」となります。

 ネット上では、格安の旅行プランについての話題も見られます。例えば、200〜300元(約5000円)で4〜5日間の団体旅行に参加できるほか、近場なら99元(約2000円)で旅行できるプランもあります。ただし、その実態は「ほぼバス移動で、途中に観光スポットが挟まれているだけ」というものです。

 こうした旅行について、ネットユーザーからのコメント。
 「今の時代、旅行がそれほど贅沢だと思うだろうか。家や車を買うのに比べれば、旅行費など微々たるものである」
 「お金のない人は使うお金がなく、お金を持っている人も将来が不安で使う気になれない。これは、未来に希望を持てない時代だ」
 「明日どうなるかわからない。だからこそ、貯金するのが一番だ」

軍事費と治安維持費は増加、国民の生活は困窮

 近年、中国共産党は各級行政機関に対して「緊縮財政」を求める方針を打ち出しています。しかし、その一方で、治安維持費や軍事費、海外支援などの支出は減少していません。

 2025年の全国人民代表大会(全人代)第14期第3回会議で、中国財政部(財務省)は軍事予算を1.7847兆元(約36.7兆円)公表しました。これは前年比7.2%増であり、公式が掲げる5%の経済成長目標を上回る伸び率です。軍事予算が7%以上の増加率を維持するのは、2022年以降4年連続となります。

 上海市浦東新区三林鎮政府と警備会社が締結した「重要・敏感時期の治安維持警備サービス契約」の流出文書によると、2025年における重点対象者の治安維持費用は480万元(約9600万円)に達することが明らかになりました。

 契約では、指定された管理対象エリアに特別警備員を配置し、現場での監視・管理を実施するとされています。さらに、対象者の自宅で24時間体制の監視・管理が行われることが規定されています。

 一方で、最近終了した全人代と全国政治協商会議(政協)に動員された警備員の時給は、仲介業者による中間搾取の結果、1時間あたり15元(約300円)にも満たなかったと報じられました。ネット上には、警備員が提供された「特別支給」の朝食として、おかゆ、饅頭(蒸しパン)、塩漬け野菜の写真を投稿した画像が拡散されています。

 こうした状況を受けて、ネット上では批判の声が相次いでいます。あるユーザーは次のように投稿しました。「中国では官僚階級が庶民の利益をすべて奪い取っている。国民の消費力が低迷しているのも当然の結果で、もはや解決策はない」

(翻訳・藍彧)