近年、中国政府は銀行、研究機関、国有企業などの重要ポストに就く職員の行動管理を強化しています。出国には許可が必要なだけでなく、一部の機関では、居住都市を離れる際にも上司への報告や申請、そしてその理由の説明が求められています。深圳のある関係者によれば、副処長級以上の管理職が広州に行く場合には、事前申請が義務付けられているとのことです。

 中国のある商業銀行に勤務する姜麗萍(ジャン・リーピン)さんは、今週金曜日(21日)、自由アジア放送の取材に対し、銀行では副処長級以上の職員に対し、私的な市外移動に厳しい制限が課されていると明かしました。

 「現在、銀行の管理職に対して行動範囲を制限する管理措置がとられています。例えば、深圳の銀行職員が広州へ行く場合、『何日に休暇を取り、深圳から広州に行く目的は何か、どんな用事か』を報告しなければなりません。報告せずに公共交通機関――たとえば飛行機や高速鉄道など――を利用すると、チケット購入時に身分証の提示が必要になるため、銀行の監査部門がその履歴をシステムで確認できます。事前報告をしていなければ、すぐに事情を尋ねられることになります。」

 こうした管理措置は、中国各地で数年前からすでに実施されているとされていますが、一般にはあまり知られていません。姜さんはさらに、自家用車で広州などへ移動する場合には、現時点ではスマートフォンによる位置情報の追跡は行われていないと補足しました。

 「車で移動する場合、チケットを買う際に身分証の提示が必要ないため、今のところは追跡されていません。」

 北京では、いくつかの銀行がスマートフォンによる追跡システムを導入しています。北京交通銀行に勤務するある職員の家族である周さんによると、同行の融資審査部門に所属する職員が週末に自家用車で天津へ向かっていた際、会社の監査部門から電話がかかってきて、なぜ事前に報告しなかったのかを問われたそうです。

 「彼が北京を出て河北省の境界に入った瞬間、上司から『北京を離れるなら一言連絡を入れるべきじゃないか?どこへ行くんだ?』と電話がかかってきました。正直、かなり怖いと思いました。」

 この件について、自由アジア放送は北京交通銀行の頭取室に電話をかけましたが、応答はありませんでした。また、深圳の工商銀行にも連絡を試みましたが、こちらも応答はありませんでした。

 このような管理の強化について、北京によく出張する姜麗萍さんは次のように語っています。
 「北京の銀行では、より高い職位の人や研究職などの重要な役職に就いている人に対し、特別な位置情報追跡システムが使われています。どこに行っても、その人の移動経路が把握されます。たとえ自家用車で北京を離れたとしても、その動きは追跡されます。北京では、こうした行動管理がより厳格になっているのです。」

 また、北京で研究職に従事する息子を持つ王さんは、最近息子から「北京を離れるには上司の署名と押印が必要」と聞いたと明かしました。

 「上司のサインとハンコがなければ、北京を出ることすらできません。海外に行くなんてもってのほかです。政府は体制内の人間を主に監視していますが、完全には抑えきれません。行こうと思えば、何らかの方法で出て行く人は出ていきます。今のスマートフォンには強力な監視機能があって、北京の境界をわずか1メートル越えただけで、移動通信会社からすぐに情報がフィードバックされるんです。それだけ監視が強まっている証拠です。」

 一方、一部の銀行職員が財務上の問題を抱えたことで、行動範囲を厳しく制限されるケースも出ています。山東省に住む孔さんによると、地元の銀行で職員が資金を使い込んで逃亡し、それを受けて当局が管理職の就業時間外の行動も制限するようになったそうです。

「多くの人が逃げ出しています。銀行の預金を穴埋めできず、うちの市にある銀行では30億元が持ち出され、もう取り戻せません。こうしたことは、実際にここで起きているのです。」

 自由アジア放送は、過去にも中国政府が10年以上前から、公務員、国有企業の職員、教師、医師などの公共部門に属する人々に対し、出国時の厳格な制限を行ってきたと報じています。たとえば、パスポートの提出義務や、出国申請の厳格な審査などが含まれます。これらの人々が出国を希望する場合、まず所属機関に申請してパスポートを返却してもらう必要があります。国務院の各部門では、たとえば処長が出国するには局長の承認が、局長が出国するには大臣の承認が必要というように、階層ごとに承認を要する仕組みがとられています。これは官僚の海外逃亡を防ぐための措置です。

 英紙『フィナンシャル・タイムズ』の分析によれば、こうした政策の実施は一部の人々の間で不満や議論を呼んでいます。政府の目的は国家の安全を強化し、機密情報の流出を防ぐことにありますが、一方で個人の自由を過度に制限するものとして批判されており、人材の海外流出や社会的不満の拡大につながる可能性もあると指摘されています。

(翻訳・吉原木子)