近年、中国経済の成長が鈍化し、消費意欲の低下も重なって、外食業界は深刻な打撃を受けています。2023年には、中国全土で閉業・廃業した飲食店が約300万軒に達し、過去最多を記録しました。現在では、北京をはじめとする複数の都市で飲食店の「倒産ラッシュ」が相次いでおり、その一方で、倒産した店舗の設備を回収する、いわゆる「レストランの葬儀屋」とも呼ばれる業者の仕事が急増しています。

 聯合早報がロイター通信の報道を引用したところによると、北京市内で閉店した多くの飲食店において、38歳の安大為(アン・ダウェイ)氏が作業員のチームを率いて、椅子、オーブン、収納棚、ベーカリー機器などの残された設備を回収しています。大型の設備はフォークリフトを使って運び出されており、現場は慌ただしい様子です。

 安氏によれば、北京、上海、広州、深センといった一線都市では、飲食店の月間倒産率が10%を超え、月によっては15%に達することもあるといいます。彼は、「つまり、1年間に店を経営しても、倒産が繰り返される確率が100%を超えるということです」と語っています。

 また安氏は、2023年に中国で新型コロナウイルス関連の防疫措置が緩和された後、不動産、金融、教育、ITなどの業界でリストラが相次ぎ、多くの失業者が飲食業界に流入してきたと述べています。彼らは生き残りをかけて起業を試みましたが、多くは短期間で失敗に終わりました。

 企業情報プラットフォーム「企査査(チーチャーチャ)」のデータによると、安氏のチームは昨年、毎月平均で約200軒の倒産した飲食店を解体しており、これは前年に比べて270%の増加です。また、全国的には2023年に閉業・廃業手続きを行った飲食企業の数が約300万軒に上り、過去最多となりました。

 ロイター通信は専門家の見解として、中国では飲食店の平均寿命がおよそ500日であり、北京ではそれが1年にも満たないと伝えています。北京市政府の統計によると、2024年上半期における市内の外食業界の純利益は、前年同期比で88%も急落しています。

 2024年3月21日に自由アジア放送(Radio Free Asia)が公開した映像では、北京のある厨房設備回収業者が、昨年は毎月平均で200軒分の厨房機器を回収していたと語っています。彼によると、今回回収に訪れた店舗はすでに2回目であり、つまりこのオーナーは2度目の廃業に直面していることになります。その業者は、わずか3か月で閉店した店舗の厨房で「今、普通の人が飲食店を開くのは、はっきり言って“死にに行く”ようなものです」と語りました。

 このような「倒産ラッシュ」は一線都市にとどまらず、中国各地へと広がっています。自由アジア放送の報道によれば、過去1年の間に閉店した店舗の業態は、フルサービスのレストラン、ティードリンク、カフェ、ベーカリー、火鍋、スイーツ、ビュッフェ、焼肉など多岐にわたり、知名ブランドも例外ではありません。江蘇省泰州市(たいしゅうし)の王さんはインタビューで、地元でも多くの飲食店が閉店しており、主な原因は市民の消費意欲の低下にあると語りました。「泰州でもたくさんの店が閉まりました。老舗も少なくありませんし、開店してまだ4~5年の店も閉じてしまいました」と話しています。

 ネット上で活発に発信を続ける人物、老周(ろうしゅう)氏は、消費の冷え込みに加えて、家賃や原材料費の高騰も、飲食業界の経営を圧迫している要因だと指摘しています。「飲食店の倒産は、庶民の懐にお金がないことの表れです。お金がなければ、誰がレストランに行こうと思いますか?今の流れを見る限り、この状況はさらに悪化するでしょう。なぜなら、企業が将来に希望を持てないからです」と語りました。

 飲食業界専門メディア「紅餐網(こうさんもう)」の不完全な統計によると、チェーンブランドも例外ではなく、多くが店舗数を縮小したり、市場からの撤退を余儀なくされています。例えば、かつて全国に約500店舗を展開していたドリンクチェーン「厝内小眷村(ツォネイシャオジュエンツン)」は、昨年末時点で50店舗を下回るまでに縮小されました。火鍋チェーン「哥老官(グーラオグァン)」も、最盛期には100店舗以上を誇っていたものの、現在は60店舗余りに減少しました。さらに、日本のファストフードブランド「モスバーガー」は、2023年6月に中国市場からの完全撤退を発表しています。

 飲食店の冷え込みは北京や広州にとどまらず、深セン、成都、長沙といった都市にも広がっており、街中では「閉店・転貸」の看板が目立つようになっています。昨年、中国各地を旅行した江西省景徳鎮市(けいとくちんし)の市民、王力(おう・りき)さんは、北京、上海、広州といった一線都市と比べて、中小都市の経済環境の方がさらに厳しいと感じたと語っています。「昨年の中国のGDPは、政府が発表した前年比5%の成長という数字には感じられませんでした」と述べました。

 こうした現状を受けて、SNS上では多くのネットユーザーが悲観的な声を上げています。「中規模や大規模の飲食店でさえ倒産している。資本力があり、ある程度のリソースを持っているところだけが、どうにか生き残っている」「人気があるのは、安価で個性のある屋台料理くらいだ」といったコメントや、「北京の状況は驚くことではない。むしろ消費がグレードダウンしているだけ」「飲食店だけじゃなく、永輝(えいき)スーパーも250店舗の閉鎖を発表した」「中国経済はもう完全に崩壊した」といった投稿も見られました。

(翻訳・吉原木子)