アメリカ国家情報長官室は20日に『中国共産党指導者の資産および汚職活動に関する報告書』を公表しました。これは、アメリカが初めて中国共産党の上層部および党内の汚職問題という敏感なテーマに正式に踏み込んだものです。

 報告書によると、汚職は現在の中国において一般的な現象であり、中国共産党政権が直面している重大な課題でもあります。その背景には、政治体制において権力が中国共産党に極度に集中していること、法の支配が党を中心に構築されていること、公職者に対する独立した監督機関が存在しないこと、そして政府の運営における透明性の著しい欠如が挙げられます。共産党が情報環境を厳しく統制し、検閲制度が広く行き渡っているため、外部から中国共産党の汚職の実態や指導部の個人資産について詳細に調査することは困難です。それでも、中共中央規律検査委員会(中紀委)や地方規律委員会が発表した情報から、反汚職調査の広がりや汚職の蔓延ぶりを間接的に読み取ることができます。

 2012年に習近平(しゅう・きんぺい)氏が政権の座に就いて以来、大規模な反汚職運動が進められてきました。この10年間で、合計500万人が調査の対象となり、そのうち470万人が違法行為を問われたと報告書は述べています。中国における汚職は多くの場合、金銭に関わるものであり、賄賂や公金の流用などが主な手口とされています。一部の共産党幹部やその親族は、自らの地位や人脈を活用して莫大な財産を蓄えてきたとされています。また、習氏の反汚職運動は単なる腐敗防止にとどまらず、党主導の「安全保障化」された政治運動の一環であり、その本質は上層部における政治的規律の弛緩やイデオロギーの曖昧さを正し、共産党の支配の正当性を国内で維持することにあります。

 報告書はさらに、共産党幹部の汚職の程度が地域や官僚の階級によって異なるとする研究を引用しています。ある地方の研究によると、官僚の8%から65%が、地位に応じて賄賂や汚職によって非公式な収入を得ているとされます。別の研究および世論調査では、共産党官僚の約半数が汚職に関与しているとされ、特に地方政府でその傾向が顕著だとされています。分析によると、賄賂によって官僚の正規収入が4倍から6倍に増えることもあり、上級幹部の方がより多くの金銭的利益を得ているとされています。これらの研究結果は、共産党および国家機構における汚職の広範さと深刻さを裏付けています。

 報告書では、こうした汚職の蔓延は、権力の集中、監督と責任追及の不在、特に省レベルでの制度的欠陥に起因するとしています。また、共産党の官僚制度内部には、政治的出世や経済的利益を追求する動機が強く存在しており、これが汚職を助長し、制度改革を妨げる要因となっていると指摘されています。

 さらに報告書では、習近平氏による反汚職運動には、政敵を粛清する政治的意図も含まれていると述べています。習氏は党の正統性や支配を脅かす行動を「反汚職」の名目で排除し、場合によっては自身の政敵を直接的に標的としたとされています。中国共産党の体制では、汚職は経済的な犯罪にとどまらず、「不忠誠」や「思想的な不純さ」を示す政治的な罪として扱われます。多くの高官が、特に知名度の高い中・上級幹部が、まず「重大な党規律違反」として公に非難された上で粛清されてきました。2024年だけでも50人を超える高級官僚がこのような反汚職運動の対象となりました。

 また、習氏に近いとされる幹部であっても、必ずしも免責されるわけではありませんでした。習氏と個人的に関係が深いとされる複数の幹部も粛清の対象となっており、反汚職運動の対象範囲が習氏の側近にまで及んでいることが示されています。

 軍部においても、反汚職の動きが強まっています。報告書によると、中国人民解放軍では古くから「カネで昇進を買う」文化が存在しており、習近平氏による10年にわたる反汚職運動の後も、なおその実態は根絶されていません。習氏が軍内の汚職に強い関心を示している背景には、将来の台湾有事に備え、2027年までに軍が必要とされる戦闘準備能力を確実に達成できるかどうかという懸念があると見られています。

 実際に、習氏はロケット軍(PLARF)の司令官および少なくとも9人の現役・元高官を逮捕し、2023年には当時の国防部長であった李尚福(り・しょうふく)上将を更迭し、同氏およびその前任者に対する調査を行いました。2024年には、中央軍事委員会政治工作部主任であり、軍の政治的忠誠を担保する役職にあった苗華(びょう・か)上将も調査の対象となりました。李尚福氏と苗華氏はともに「党規律違反」の疑いをかけられており、いずれも習氏の側近と目されていました。これらの事例は、軍内部における忠誠と効率に対する中共政権の深刻な懸念を反映すると同時に、反汚職の対象が中枢部にまで及んでいることを示しています。

 一方、こうした多くの兆候があるにもかかわらず、報告書は依然として中国共産党の指導部における具体的な汚職行為を外部から正確に把握することが困難であると認めています。ある学術研究によれば、起訴された共産党高官の8割以上が賄賂に関与していたとされます。しかし、指導者の財産公開制度が存在しないうえ、政府の情報統制が極めて厳しいため、高官の個人資産は非常に不透明な状態にあります。
なお、『ワシントン・エグザミナー』紙は、この報告書が最終的に示した内容は、北京高官の汚職の実態やその規模を十分に反映しているとは言い難いとの見解を示しています。

(翻訳・吉原木子)