最近、海外の時事評論家「多伦多方脸」氏(以下、「方脸」と略す)が「611Study」という調査プロジェクトを発表しました。このプロジェクトでは、綿密なデータを通じて中国の学生が直面している過重な学習負担を明らかにし、その背景にある制度的な問題や、こうした教育モデルが学生の心身の健康および国家の将来に与える潜在的な悪影響について掘り下げています。

 この調査は、中国国内の2000校以上から集めた1万件を超える学生の匿名投稿に基づいており、そこから浮かび上がる現実は、まるで生き地獄のような過酷な日常を露わにしています。中国の学生が日々どのような環境で学んでいるのかを、生々しく世間に突きつける内容となっています。

 「611Study」の主な発見の一つは、中国の学生の在校時間が常識をはるかに超えているという点です。データによると、半数以上の学生が週92時間以上学校に滞在しており、1日平均13時間を超える計算になります。99%の学生が朝8時以前に登校しており、約44%の学校では午前6時半から授業が始まることさえあります。一方、下校時間は非常に遅く、71.3%の学校では夜10時以降まで生徒が学校にいるのが常態化しており、午後8時前に授業が終わる学校はわずか4%にとどまります。

 このような長時間の拘束は、生徒の休息時間や個性の発展を著しく妨げており、しかもこの傾向は全国的に広がっています。さらに、月に8日間の休みを確保できている学校はわずか6.5%で、28%の学校が週1回の休み(単休)を実施、59%もの学校では単休さえ確保できていないという実態が明らかになりました。

 方脸氏はこの状況を厳しく批判し、中国の学生の労働強度はすでに法律が保障する成人の受刑者や戦争捕虜の基準すら上回っていると指摘しています。たとえば、中国の「監獄法」では受刑者に1日8時間以上の休息を保障しており、「ジュネーブ条約」においても戦争捕虜の労働時間には制限があります。彼は、現在の中国の学生が置かれている状況は「非人道的な扱い」と断じています。極端な長時間学習と深刻な休息不足は、学生たちの心身の健康を蝕んでいるのです。

 同時に、中国の学生のメンタルヘルスの問題も深刻です。調査に参加した2000校以上のうち、実に972校で生徒の自殺が発生しているとの報告があり、その割合は非常に衝撃的です。また、『中国国民心理健康発展報告』によれば、中国の青少年のうつ病傾向はすでに24.6%に達しています。

 多くの専門家は、過酷な学習負担がこの問題の主因であると分析しています。長時間の勉強、慢性的な睡眠不足、娯楽や人間関係の欠如、進学への不安などが重なり、学生の心に大きなプレッシャーを与えています。このように抑圧的な環境は、精神面への影響にとどまらず、人格の形成や将来的な社会適応能力にも深刻な影響を与えると考えられます。

 また、中国の学生が直面している問題は、時間的な過酷さだけでなく、学習内容そのものの非効率性や歪みにもあります。方脸氏は、中国の教育が試験対策を中心としており、生徒が学んでいるのは試験に受かるためのテクニックやパターンに過ぎず、本質的に価値のある知識ではないと指摘しています。

 理系教育においては、教科書の内容は浅く、実際に重点を置くのは膨大な補助教材や過去問で、出題者の思考パターンや解法に慣れることが目的となっています。

 文系に至っては、状況はさらに深刻です。政治の授業はプロパガンダに満ち、現実との乖離が激しく、国語の授業は難解な古文を機械的に解釈させるばかりです。方脸氏は、台湾の公民教科書における市民権や政治参加の内容と比較しながら、中国の文系教育は本質的に「服従のテスト」であり、生徒の独立思考を促すのではなく、従順さを植え付けることを目的としていると主張しています。

 このような教育体制では、生徒が独自の価値観を持ち、批判的思考力を育む機会が著しく制限されています。

 彼は、中国の教育問題の根本的な原因は、単なる人口の多さではなく、制度や仕組みにあると指摘します。特に大学入試制度(高考)については、「賢くて従順な召使い」を選抜する仕組みであると痛烈に批判しています。理系試験は知能の優劣を測り、文系試験は従順さを測る道具となっており、この制度は創造性や独立した思考を奨励するものではなく、命令を効率よく遂行する「道具人材」を量産する仕組みだと語っています。さらに、中国の教育制度が現代の政治経済学の先端知識を本気で教えるつもりがあるのか、台湾の教材にある民主主義や市民の権利に関する内容に触れさせる勇気があるのか、疑問を呈しています。

 また、教育資源の分配の不均衡も重大な問題とされています。一部の地方政府関係者はGDP成長や出世のためにインフラ建設へ予算を集中させ、教育分野への投資を後回しにしています。その結果、教育資源の慢性的な不足が続いています。現在、中国の教育費はGDPの約4%にとどまり、韓国、イギリス、アメリカ、台湾などに比べて明らかに低い水準です。大学の数も著しく少なく、平均して107万人に対し大学が1校しかない状況で、これは先進国に比べて非常に劣っています。

 たとえば、1990年の韓国は現在の中国と同程度の一人当たりGDPでしたが、教育費はGDPの8%に達していたとのデータもあり、教育投資の不足が生徒の進学競争を過酷なものにしている一因であると分析されています。

 教育機関内部でも「進学率競争」が激化しており、教育行政や学校の評価基準が進学率に依存するケースが多くなっています。その結果、多くの学校では生徒の時間や体力を無理に搾り取るような教育手法が採用され、「終わりなき問題演習マシン」が生み出されているのが現状です。

 このような過酷な制度と内容の圧迫の中で、学生の基本的な権利はほとんど無視されています。方脸氏は、成人が「996」(朝9時から夜9時まで週6日労働)に対して辞職や「躺平(寝そべり)」などの抵抗手段を持てるのに対し、学生は「611」制度(朝6時から夜11時まで)に対して抵抗手段がほとんどなく、学校と家庭の双方からの圧力を受けながら、最も弱く搾取されやすい立場に置かれていると述べています。

 このような高圧的な環境の中で長期間過ごすことは、中国の学生の心身の健康、さらには個性の発達に対しても、深く持続的な悪影響を与えているのです。

(翻訳・吉原木子)