アメリカ下院はこのほど、中国共産党のプロパガンダの拡散を防止するため、共産党機関紙「チャイナ・デイリー(China Daily)」の配布を米国議会内で禁止すると発表しました。また、共和党議員は、中国人留学生へのビザ発給を全面的に禁止する法案を推進しており、政府全体で中国共産党の影響力を排除する強い意志を見せています。

中国共産党のプロパガンダ排除へ

 現地メディアの報道によると、アメリカ下院は3月11日、「チャイナ・デイリー」を含む中国共産党系の新聞を議会内で配布することを禁止すると発表しました。

 米国議会では、新聞配達業者の「ナショナル・ニュース(National News)」が長年にわたり各種新聞の配達を担当してきました。これまで、ナショナル・ニュースは主要な新聞とともにチャイナ・デイリーをすべての議員事務所へ配達しており、配達を希望しない場合は申し出る必要がありました。

 しかし、多くの議員が配達について不満を表明したため、下院行政委員会はナショナル・ニュースと協議し、チャイナ・デイリーの配布を段階的に停止する方針を決めました。

 また、共和党下院議員のエイブラハム・ハマデ(Abe Hamadeh)氏は2月5日、中国共産党の管轄下にある新聞を議会内で配布することを禁止する法案を提出しました。ハマデ議員は、かつて米陸軍情報士官や検察官を務めた経歴を持ち、今回の決定について、「中国共産党の影響力排除に向けた重要な一歩」だと評価しています。

 下院行政委員会のブライアン・ステイル(Bryan Steil)委員長と、対中国共産党特別委員会のジョン・ムーレナー(John Moolenaar)委員長は、チャイナ・デイリーの配布停止の決定を受けて声明を発表しました。

 声明では、「ナショナル・ニュースが今後、下院議員事務所への『チャイナ・デイリー』の配布停止を発表したことを大変嬉しく思う」とし、「この措置を講じることで、中国共産党が下院でプロパガンダを拡散するのを直接阻止することができた」と指摘しました。

 ハマデ議員は、海外の中国語メディア『大紀元時報』の取材に対し、「チャイナ・デイリーは、外国勢力がアメリカ政府の中枢に影響を与えようとするプロパガンダであり、決して許されるべきではない」と指摘しました。さらに、連邦議会の多くの若手職員が、チャイナ・デイリーが中国共産党の資金によって成り立っていることを知らず、無意識のうちに影響を受けてしまう恐れがあるとの懸念を示しました。

 「チャイナ・デイリー」は、1983年からアメリカ国会議員の事務所に無料で配布されてきました。さらに、過去10年以上にわたり、中国共産党は数百万ドルを費やして、「ニューヨーク・タイムズ」や「ワシントン・ポスト」、「ウォール・ストリート・ジャーナル」などの主流メディアに広告を掲載してきました。それらの広告は「チャイナウォッチ(China Watch)」の名前で掲載され、一見すると特集記事のように見えます。しかし、その内容は中国共産党の政策を美化するものであり、非常に手の込んだプロパガンダに他なりません。

 中国共産党の影響力工作に対する認識が広まると、『ワシントン・ポスト』は2019年に「チャイナ・デイリー」の広告掲載を停止しました。また、『ニューヨーク・タイムズ』も2020年8月に、過去に掲載した広告記事をすべて削除しました。イギリスの『デイリー・テレグラフ』も「チャイナ・デイリー」との契約を打ち切りました。

 2020年、当時のアメリカ国務長官マイク・ポンペオ氏は、「チャイナ・デイリー」を含む中国共産党系の報道機関を「外国代理人」に指定し、政府の監視対象としました。

 ポンペオ氏は、2020年10月に『ボイス・オブ・アメリカ(Voice of America)』のインタビューに対し、「これらのメディアがアメリカ国内で発信する内容に対して何ら制限を課していない。私たちはただ、アメリカ国民や情報を受け取る人々が、通常の報道機関が伝えるニュースと、中国共産党自身が発信するプロパガンダとを明確に区別できるようにしただけだ」と語りました。

 半世紀近くにわたって米国議会で配布されてきた「チャイナ・デイリー」が締め出されたことは、中国共産党のプロパガンダ活動にとって大きな打撃になるでしょう。

米議会、中国人留学生締め出しへ議論

 アメリカ議会は、中国共産党の影響力を排除するため、中国人留学生へのビザ発給を全面的に禁止する法案の導入を進めています。

 3月14日、共和党の下院議員ライリー・M・ムーア氏は、中国国籍の学生に対するビザ発給を禁止する新たな法案として、「中国共産党のスパイ活動を阻止し、学術界の知的財産を保護する法案(STOP CCP VISAs Act)」を提出しました。この法案は、中国人留学生がアメリカの軍事機密を探るスパイ活動や、米国企業の先端技術を盗む事件が相次いで発覚したことを受けて提案されたものです。

 ムーア議員は今年2月、雑誌『ニューズウィーク(Newsweek)』に寄稿し、中国人留学生によるスパイ活動の脅威に対する懸念を表明していました。その中でムーア議員は、「現在、毎年30万人近い中国人留学生がアメリカの学生ビザを取得している。我々は実質的に、中国共産党に軍事機密の窃取や知的財産の盗用を許している状態だ。これは米国の国家安全保障を著しく損なう問題だ」と述べました。

 この法案にはすでに5人の下院議員が賛同しており、上院でもアシュリー・ムーディー議員が同様の法案を提出する予定です。

 この法案の特徴は、「中国共産党によるスパイ活動」を明確に標的としている点です。従来の審査強化措置とは異なり、中国国籍の学生がアメリカの学生ビザを取得することを全面的に禁止するという、より強硬な内容となっています。これまでのように特定のセンシティブな分野に限定して制限を設けるのではなく、あらゆる分野での学生ビザ申請を拒否する包括的な設計となっています。

 アメリカは冷戦時代にソ連や共産圏からの移民に対して厳格なビザ制限を課していました。1952年に制定された「移民国籍法(McCarran-Walter Act)」では、共産主義と関係を持っていると考えられた人物の入国を拒否したため、ソ連圏の留学生の入国をほぼ完全に遮断しました。しかし、当時の措置はあくまで特定の疑わしい個人を対象としたものであり、国籍による一律的な学生ビザの禁止には至りませんでした。

 もしムーア議員の法案が可決されれば、アメリカ史上初めて、中国人留学生に対する全面的なビザ禁止措置が導入されることになります。これは米中関係にさらなる緊張をもたらし、両国の対立がいよいよ本格化する象徴的な出来事になると予想されています。

(翻訳・唐木 衛)