中国全国人民代表大会(全人代)常務委員長の趙楽際(ちょうらくさい)氏が「呼吸器感染症」により、11日に行われた全人代の閉幕式に出席できなかったことが注目を集めています。

 新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)が中南海に侵入したのではないかとの憶測が広がっています。一方で、これが中国共産党(以下、中共)内の権力闘争の激化を反映していると指摘する声もあります。

コロナが中南海に侵入か? 趙楽際「呼吸器感染」

 趙氏が、重要会議を相次いで欠席し、全人代の閉幕式では、副委員長の李鴻忠(りこうちゅう)氏が趙氏に代わって議事を進行し、趙氏が「呼吸器感染」により欠席したことを正式に発表しました。

 中共の高官は一流の医療を受けており、医療保険料には上限がなく、最先端の医療技術や医療スタッフを揃え、定期的または不定期に健康診断を受けることが常態化しています。情報筋によると、中共幹部の「幸福指数」は、米国の億万長者の50倍にも達します。

 次官級以上の高官は、世界最先端の高額な医薬品を自由に使用でき、1日あたり数千元から数万元以上の医療費を投じることも珍しくありません。そのため、趙氏が突然「呼吸器感染」を理由に欠席したということは、新型コロナウイルスに感染した可能性が最も高いでしょう。つまり、ウイルスはすでに中共の最高権力中枢である中南海にまで広がっている可能性があります。

各地で突然死が相次ぐ 若者にも広がる異変

 最近、上海や河南省、陝西省など各地で、若者を含む多くの突然死が身の回りで起きていると市民が明らかにしました。

 中共は「インフルエンザの流行期」であると強調しているが、市民の間ではコロナによるものではないかとの疑念が広がっており、中共が実態を隠蔽しているのではないかと疑問を呈しています。

 現在、中国各地では経済が停滞し、多くの業界が不振に陥る中、病院や火葬場だけは業務がひっ迫し、長蛇の列ができていると報じられています。特に3月に入ってからは、若年層の突然死に関する報道が相次いでおり、3月2日から5日のわずか3日間で複数の人が「病気による死亡」と発表されています。

 江蘇省の医師、張亮(仮名)氏は、現在、多くの人が心筋梗塞や脳梗塞を発症し、突然死亡していることを明らかにしました。「仕事はこの分野に関係しているため、具体的な数字は言えないが、特に30代から40代の患者が多い」と証言しました。

 官製メディアは、冬から春にかけて急性呼吸器感染症が流行しやすく、感染リスクが高まると報じ、国民にワクチン接種を推奨しています。しかし、多くの市民は、最近の急死が過去のワクチン接種による体力の低下と関連しているのではないかと疑問を抱いています。

趙楽際の健康問題、権力闘争が背景か?

 中共内の権力闘争が激化し、すでに「死活問題」の局面に達していると指摘するアナリストもいます。

 独立系評論家の蔡慎坤(さいしんこん)氏は、「習近平氏と趙氏の対立は長年にわたって続いている。習氏の側近である孔紹遜(こうしょうそん)氏がすでに全人代の代表議案管理業務を事実上掌握していることから、趙氏に何かあった可能性が極めて高い」との見方を示しました。

 中共の高官は通常、重大な政治活動を欠席することはめったにありません。こうした場は、彼らにとって権力を誇示する重要な機会だからです。

 趙氏が全人代の閉幕式に出席しなかったことは、過去20年間で初めて、中共中央政治局常務委員がこの重要な政治行事を欠席した例となりました。また、李鴻忠氏の声明は、中共がこれまで維持してきた最高指導部の健康状態に関する秘密主義を破るものとなりました。

 一部のアナリストでは、趙氏は中共内の権力闘争で敗北し、政敵が健康問題を口実にして彼の権力を奪った可能性があると指摘しました。

 しかし、オーストラリア在住の法学者である袁紅氷(えんこうひょう)氏は、「習氏がこの時期に趙氏を粛清することはあり得ない」とし、「もし粛清するのであれば、全人代の会期中に趙氏を議長として務めさせ、その後、閉幕の段階で排除するような形にはならないはずだ」と指摘しました。

 袁氏は、体制内の関係者からの情報として、趙氏が実際に深刻な呼吸器疾患を患っていることを明かしました。しかし、趙氏自身は「出席すべきすべての会議に参加したい」と強く要望していたといいます。

 「趙氏は、引き続き政治局常務委員の地位を維持しようとしていた。もし健康上の理由で現在の会議に出席できなければ、2027年の第21回全人代での再任の可能性が完全になくなることを恐れていたのだ。しかし、最終的に常務委員会が彼の出席を認めなかった。皆が彼に感染することを恐れたからだ。特に習氏は感染を極端に恐れており、最終的に趙氏の出席を許可しなかったのだ」と袁氏は語りました。

趙楽際市が姿を現すも、疑念が深まる

 中国中央テレビ(CCTV)は、3月12日夜のニュース番組で、趙氏が同日午後に記者らと会見し、全人代への取材活動に感謝の意を示したと報じました。会見には李鴻忠氏をはじめ、中共の官製メディアや複数の中国メディアの代表者が出席しました。

 CCTVの報道では、趙氏本人の声は一切放送されず、終始アナウンサーによるナレーションが流れました。映像では、趙氏が講稿を手に持ち発言している姿が何度も映し出されましたが、映像上からは彼の「病状」を確認することはできず、前日に体調不良で会議に出席できなかったほどの深刻な状態には到底見えませんでした。

 しかし、趙氏が姿を現したことで、疑念が払拭されるどころか、かえって憶測が広がる結果となりました。外部の観察筋からは「説明すればするほど疑わしくなる」との指摘が相次ぎ、さまざまな憶測が次々と飛び交っています。

 X上では、多くのユーザーが趙氏の突然の「復帰」に疑問を投げかけています。
 「趙楽際がこんなに早く姿を見せたということは、そこまで深刻ではなかったのでは? 全人代のトップが、ちょっとした風邪程度で閉幕式を欠席するものなのか? この登場は、外部の憶測や批判を和らげるためのものだろうか。その後、徐々に姿を消していくつもりなのでは?」とコメントしました。
 「趙楽際が翌日にすぐ『無事』をアピールしたことは、逆に彼が閉幕式当日に出席できなかった理由が別にあったことを示している。何者かに阻止されたのか、それとも何らかの事情で出席を控えざるを得なかったのか。本人は出席したかったはずだ。それなのに、なぜ翌日になって慌てて『健在アピール』をしたのか?」
 「これはAIによる替え玉ではないか?趙楽際はまだ生きている。しかし、AIの替え玉がいつまで『生き続ける』のかは分からない」

 中国の元法律関係者である杜文(とぶん)氏は、「全人代常務委員長がメディア関係者を見舞うのは、毎年全人代閉幕後の慣例行事だ。この報道は、『趙楽際が病に倒れた』という話が極めて疑わしいことを証明している」と指摘し、「趙楽際が本当に病気ではなかったなら、なぜ全人代の閉幕式に出席しなかったのか?」と疑問を投げかけています。

(翻訳・藍彧)