近年、中国の五つ星ホテル業界は未曾有の氷河期を迎えています。かつて華々しい輝きを放っていた有名な高級ホテルが次々と閉鎖・売却され、中には投げ売りしても買い手がつかないケースもあります。長年放置され「お荷物」となってしまったホテルも少なくありません。業界関係者によると、この閉鎖の波は中国の不動産市場の衰退と密接に関連しており、経済全体の不振を反映していると指摘されています。それに伴い、高級ホテルの主な顧客層も激減しました。

 複数の中国メディアによると、五つ星ホテルは長年にわたり業界の最高峰とされ、単なる贅沢の象徴にとどまらず、高い収益性を誇るビジネスモデルとしても評価されてきました。しかし、ここ数年で市場から見放され、多くのホテルが閉鎖や格安売却、さらには放置される事態に陥っています。この傾向は2023年にはすでに顕著になっていました。同年12月には、天津リッツ・カールトンホテル、三亜インターコンチネンタルホテル、光合谷温泉リゾートなどの高級ホテルが不良債権資産として一括売却され、総額わずか20億元で取引されました。同時期には、上海ブルガリホテル、三至シェラトンホテル、南京金奥フェアモントホテル、重慶解放碑ウェスティンホテル、さらにはアメリカ大統領を迎えたこともある北京金茂ウェスティンホテルなどが相次いで売却・譲渡されました。

 2024年6月には、北京三里屯瑜舍ホテル——かつて1泊3万元の価格を誇った高級ホテルが正式に営業停止を発表。同年8月には、北京ソフィテルホテルがホテル取引サイトで28億元の売却価格を掲げました。さらに、80以上の中高級ホテルを展開し、中国ホテル業界の上位60社にランクインしていた山東藍海ホテルグループも、2024年11月には破産再編手続きに入りました。同年7月時点で同グループの負債比率は107.99%に達し、58のホテルプロジェクトが競売にかけられましたが、すべて流札となり、買い手がつきませんでした。

 中国文化・旅游部(文化観光省)のデータによると、2020年時点で中国国内の五つ星ホテルは850軒でしたが、2024年第3四半期には736軒まで減少し、わずか5年で114軒が消滅しました。また、五つ星ホテルの「投げ売り」も珍しくありません。温州万和ハワードジョンソンホテルは、かつて地元の結婚式会場として人気でしたが、2025年3月に最終的に4534万元で売却されました。当初の開始価格は7085万元であり、値下げ幅は2500万元を超えました。このホテルは、それ以前に入札者が現れず、2度の流札を経験しています。浙江紹興富麗華ホテルは、同地域で最初の五つ星高級ビジネスホテルでしたが、2025年5月に閉業予定で、現在2.02億元で再び競売にかけられています。

 業界関係者によると、五つ星ホテルの大規模な閉鎖は、中国不動産市場の変動と密接に関連しています。21世紀初頭、不動産市場の急成長により、多くの高級ホテルが次々と誕生しました。地方政府は投資誘致のため、土地取得の条件として五つ星ホテルの建設を義務付けるケースが多くありました。不動産開発業者にとって、ホテルの収益性は二の次であり、高級ホテルを建設することで周辺の不動産価値を上げ、土地のプレミアム価格を引き上げることが主な目的でした。その結果、全国的に五つ星ホテルが乱立し、土地売却条件の一部として必須項目になりました。

 例えば、2021年には東莞松山湖地区の土地売却条件に、「アマン(Aman)、バンヤンツリー(Banyan Tree)、ブルガリ(BVLGARI)、パークハイアット(Park Hyatt)、ペニンシュラ(Peninsula)」などの国際高級リゾートブランドを誘致することが明確に記載されていました。また、2013年には貴州省黔南州が政府計画案の中で、州内11の県市で合計17軒の五つ星ホテル建設を推進する方針を打ち出しました。しかし、中国不動産市場の急減速により、開発業者の資金繰りが悪化し、高級ホテルは逆に大きな負担となっています。2020年に中国政府が導入した「三道紅線」政策により、不動産企業の資金調達が制限され、不動産市場全体が低迷しました。多くの不動産会社は資金回収を目的に、所有する五つ星ホテルを手放し、財務の立て直しを図ろうとしています。

 五つ星ホテル業界の苦境は、不動産市場の低迷だけが原因ではなく、中国全体の経済情勢とも深く関係しています。特に、高級ホテルの主要顧客であるビジネス層の減少が大きな要因の一つです。かつて金融業界や不動産業界に属する高所得層が、ホテル業界を支えていましたが、現在では給与削減や失業、さらには破産に直面している人も増えています。ロイター通信は2024年1月、中国政府が人民銀行(中央銀行)、国家金融監督管理総局、中国証券監督管理委員会の職員の給与を約50%削減する方針を決定したと報じました。また、外国資本の撤退により、国際ビジネス需要も大幅に減少しています。

 さらに、中国政府の厳格な反腐敗政策により、公費による接待や出張経費が大幅に削減され、地方財政の逼迫と相まって、五つ星ホテルの宿泊需要がさらに落ち込んでいます。データによると、2024年第3四半期の五つ星ホテルの平均宿泊料金は前年比で5%減少し、稼働率も4%低下しました。北京市では、2024年1月から10月までの五つ星ホテルの宿泊者数が393万人にとどまり、2018年のピーク時と比べて133万人の大幅な減少となりました。

 業界関係者の予測によれば、2025年は五つ星ホテルの大規模な売却がピークを迎える「最悪の年」になる可能性が高いとされています。一部の専門家は、少なくとも半数の高級ホテルが破綻すると警鐘を鳴らしています。中国経済が長期的な低迷局面にある中、五つ星ホテル業界の衰退は避けられない現実となりつつあります。

(翻訳・吉原木子)