全国人民代表大会と中国人民政治協商会議における中国共産党国務院の工作報告によると、過去5年間の雇用情勢は安定しているが、民間からの報告や経済データを見てみると、近年は失業が非常に広がっているのが実情です。
特に製造業の雇用は6か月連続で減少しており、労働需要の縮小が続いています。また、2025年の大卒者数は2024年を上回る見込みであり、若年層の就職競争は一層厳しくなると予測されています。
財新PMI、6か月連続で雇用減少 公式失業率の信頼性に疑問も
中国公式が発表した過去5年間の政府工作報告によると、2020年から2024年までの都市部調査失業率はそれぞれ5.2%、5.1%、5.5%、5.2%、5.1%となっています。しかし、中国当局は過去にも統計データの操作が指摘されており、これらの公式数値の信頼性には疑問の声も上がっています。
特に注目すべきは、中国当局が失業者の定義を大幅に狭めていることです。1時間以上働く人は失業者としてカウントされず、在学中の大学生や農村で生活する農民、長期間失業し求職活動をしていない人も統計から除外されています。
過去5年間、公式発表の失業率は5.1%から5.5%の間で推移しており、一見すると雇用状況は安定しているように見えます。しかし、ネット上の反応を見れば、ホワイトカラー、ブルーカラーを問わず、多くの労働者が職を失い、再就職の道を見つけられずにいる現実が浮かび上がります。
米金融サービス企業S&Pグローバルが3月3日に発表した2月の「財新中国製造業PMI(購買担当者景気指数)」によると、中国の製造業の雇用は6か月連続で減少しており、これは、中国社会の現状と一致しています。
同じ3月3日にYouTubeに投稿された動画では、あるネットユーザーが次のように語っています。「30万人が杭州に足止めされている。いったいどうなっている?」「1週間ずっと仕事を探しているが、どの工場も募集しているのはせいぜい10人か20人。それなのに、仕事を探しているのは数百人もいて、面接の機会すら得られない。工場の入り口には、私と同じように仕事を求めている人が荷物を抱えてあふれ返っている。」
動画の中では、別の中年女性は次のように述べました。「杭州市の失業者数はすでに100万人を突破した。街中の配車サービスの運転手やフードデリバリーの配達員たちが、仕事を巡って熾烈な競争を繰り広げている。それだけでなく、どの業界も商売が冷え込んでいて、特にアパレルショップは次々と閉店し、経営が厳しすぎて生きる意味を疑うほどだ」
あるホワイトカラーは、「2025年の最新の『死に方』は杭州で仕事を探すことだと感じている。先週から今週にかけて面接を受けられたのはたったの1社。求人サイトのBOSS直聘のページを隅々までチェックしても、もう応募できる仕事が残っていない」と嘆いていました。
杭州市は中国でも経済が最も発展した地域の一つです。その杭州ですらこれほど深刻な状況に陥っていることを考えれば、他の地域の雇用環境は想像できるでしょう。
中国、再び「最難の就職年」へ
「卒業即失業」はもはや冗談ではなく、中国の大学生にとって厳しい現実となっています。中国最大手求人サイト「智聯招聘」が発表した報告によると、2024年の大学卒業生の就職率はわずか55.5%にとどまり、つまりほぼ半数の大学生が卒業後に失業状態にあるということになります。
2024年、中国では1179万人の大卒者が社会に出ましたが、すでに「史上最も厳しい就職シーズン」との評価を受けています。2025年は状況が一層悪化するとみられます。中国教育部の予測によると、2025年には1222万人の大卒者が新たに労働市場に参入する見込みで、就職競争はさらに激しくなりそうです。
上海交通大学のバイオテクノロジー専攻を卒業したばかりの戴さんは、BBC中国語版の取材に対し、「大学生の価値は下がり続けているし、修士号なんて無価値になっている」と語りました。
また、前述のYouTube動画では、あるネットユーザーが、「一流大学の大学院生に卒業し、名門大学の修士号を持ち、2年間働いた結果、2025年1月の手取りは3381元(約69000円)だった」と明かし、自嘲気味に「学歴は虎のように立派、給料は雀の涙3500元(約7万円)」と皮肉っています。
大学生の楊さんはBBCニュースの取材に対し、「南方航空の筆記試験は、大学院入試と同じように二つのカメラで監視される厳しい形式だった。それなのに、この複雑な試験を受けたのは2000人以上。結局、このポジションに何人採用されるのか誰も知らないし、本当に募集しているのかさえ分からない」と不信感をあらわにしました。
「失業証」を「就業・創業証」に改称
最近、あるネットユーザーがX(旧Twitter)に、「先週、街道弁事所(地域行政機関)で失業証を発行してもらおうとしたら、職員から『今は失業証とは呼ばず、就業・創業証になった』と言われた」と投稿しました。
この措置はすでに数年前から実施されていたとみられます。上海市人力資源・社会保障局の公式サイトによると、かつてこの証明書は「労働手帳」と呼ばれ、その後「就業・失業登記証」へと変更し、現在は「就業・創業証」という名称に統一されたとのことです。
台湾励志協会の賴榮偉執行長はラジオ・フリー・アジアの取材に対し、「失業証の名称変更は、中国当局がコロナ後の失業問題をもはやコントロールできなくなっていることを示している。政策の失敗への批判をかわすために、政治的手法で対応しているにすぎない」と指摘しました。
中年の求職者、行き場なし
ネットユーザー「拾玖」は3月3日に投稿した動画で、夫の厳しい就職状況について語りました。「38歳の夫がリストラされて、半年以上経ってもまだ仕事が見つからない。夫が信じていた人脈や誇りに思っていた友人関係は、現実の前ではまったく役に立たず、元同僚や上司、顧客、さらには私たちの家を買った人にまで仕事の紹介を頼んだが、返事はほとんどなかった。仕事探しの毎日は、自分をすり減らすような苦しみだ。街道(地域行政機関)が主催する就職説明会に行ってみても、さらに絶望した。ほとんどの求人が35歳以下を条件にしている」
ブロガー「舒雅」は、「経験は年齢に勝てない時代になっている」と嘆き、「10年間、人事の仕事をしてきたが、40歳で失業した後、まったく仕事が見つからない。20代の未経験者にすら競争で勝てないのだ。今の就職市場では、経験よりも年齢が重視され、年齢だけで競争相手にならないのだ」と語りました。
また、別の中年ネットユーザーは同日に投稿した動画で、厳しい現実を語りました。「35歳を過ぎて失業したら、もう仕事を探さないほうがいい。面接官はみんな2000年以降生まれの若者ばかりで、彼らは私たちを嘲笑するだろう。『いい年をして、まだ面接に来るなんて恥ずかしくないのか』と。これから私たちができる仕事は、フードデリバリー、宅配便の配達、清掃員、警備員、工場でネジを締めることくらいだ」
(翻訳・藍彧)