2025年初め、中国本土では競売にかけられる物件(法拍房)が、急増しているものの、成約率は過去最低を更新し続けています。不動産市場の崩壊や、経済の低迷により、住宅価格が急落し、多くの住宅所有者がローンの返済ができず、競売に追い込まれています。人々の間では、住宅ローン破綻による悲惨な実話が、次々と語られています。

 中国指数研究院の競売データベースによると、2025年1月から2月にかけて、全国で競売にかけられた物件は、計17万2千件に上り、前年同期(16万5千件)と比べ約4.5%増加しました。しかし、同期間に成約したのは、わずか2万8,200件であり、回数ベースでの成約率は、わずか13.7%にとどまっています。さらに、競売物件の平均落札価格は、市場価格の74.95%と、大幅な値引きが行われています。2024年の通年では、全国で競売にかけられた物件が、累計76万8千件に達し、主に住宅や商業用不動産が含まれていました。しかし、これらのデータはあくまで氷山の一角に過ぎず、実際に住宅ローンの返済ができずに、競売手続きに入った物件の数は、統計をはるかに上回る可能性があります。

 競売物件の増加が続く一方で、買い手はほとんど現れず、金融機関も深刻な影響を受けています。徐州の業界関係者が公開した動画によると、全国の競売物件数は、すでに100万件に迫っているものの、全体の成約率は、20%未満にとどまっています。つまり、約80万件の物件が市場に滞留し、「換金できないコンクリート」と化しているのです。徐州でも競売物件の成約率は、約20%に過ぎません。

 関係者によると、一部の住宅所有者は、1〜2年前からローン返済を滞納しているものの、銀行側はすぐに差し押さえを実施せず、むしろ支店長が頻繁に電話をかけたり、直接訪問したりして、「少しでもいいから返済してほしい」と、住宅所有者に頼み込んでいるといいます。場合によっては金利の引き下げや、無利息対応を提案することもあるそうです。それでも返済が難しい場合、銀行側が仕事を紹介し、所有者が働きながら、返済できるよう支援するケースすらあるとのことです。とにかく「これ以上のローン破綻を防ぎたい」、というのが銀行の本音なのです。

 安徽省のある銀行の財務部門に勤務する王氏も、現在、競売物件の売却が、極めて困難になっていることを認めています。失業や給与の減額により、多くの潜在的な買い手が、購入力を失っているためです。仮に競売が成立したとしても、その後の執行手続きが難航するケースが多く、例えば、所有者が唯一の住居を競売にかけられた場合、退去する場所がなくなるため、手続きが滞ることもあります。このような状況から、銀行はやむを得ず返済期間の延長措置を、取らざるを得ません。「今年の返済が難しければ、来年に延長する」といった、柔軟な対応を取るケースが増えています。

 2023年6月、放課後に帰宅した少女が家の前で、途方に暮れる姿を捉えた写真がSNSで拡散されました。彼女が慣れ親しんだ家の扉には封印が施され、涙ながらに「お父さんは一時的に住宅ローンが払えなくなっただけで、決して悪質な滞納者じゃないのに!」と訴えました。この光景は、多くの住宅ローン破綻者の家庭が直面する、現実を象徴するものとなりました。

 徐州の業界関係者が語った実際の事例では、2017年に100万元の物件を購入したある顧客は、30万元を頭金として支払い、70万元のローンを組みました。月々の返済額は4,100元で、30年間で総額150万元を、返済する計画でした。しかし、経済の低迷によりローンの返済が滞り、最終的に競売へと追い込まれました。5年間で返済した額は、25万元にのぼるものの、そのうち元本はわずか5万元で、残りの20万元はすべて利息でした。最終的にこの物件は、市場価格の7割で落札され、70万元の価値しか認められませんでした。さらに、違約訴訟費用などで、13万元が差し引かれ、手元に残ったのはわずか57万元。にもかかわらず、銀行への債務は依然として、70万元残っており、既に返済した元本5万元を差し引いても、なお8万元の負債が残る結果となりました。彼は「20年の青春を銀行への返済に捧げた。マイホームを手に入れることが、まるで人生を賭けたギャンブルのようになってしまった」と語りました。

 SNS上では、負債を抱えた人々の苦境を訴える声が、ますます増えています。「深圳で10年働いた努力が、一夜で水の泡になった」、「自分が最も悲惨だと思っていたが、億万長者ですら、フードデリバリーをやっている時代だ」といった投稿が相次ぎました。

 1980年代生まれの郭強(仮名)も、そのような負債を抱える一人です。彼は2008年に深圳で起業し、飲食業や銀行の顧客マネージャーとして働いた後、2017年には東南アジアでコンビニチェーンを経営し、30店舗以上を展開していました。しかし、2019年末に帰国した後、新型コロナウイルスの影響で事業が停止。2018年に深圳で購入した物件には、200万元以上の頭金を支払い、月々3万元以上を返済していましたが、2020年以降、訴訟や資産凍結により収入が激減し、生活が困窮するようになりました。「この数年、多くの友人が借金に苦しみ、家族も次々と亡くなっていった。いとこは工場経営をしていたが、40代で突然亡くなり、従兄弟は経済的なストレスから、酒を飲みすぎて命を落とした」と語ります。

 彼は、自身の物件価格が、1,000万元から500万元に下落し、競売にかけられたとしても、なおローンを完済できない状況にあると述べました。「至る所で不幸なニュースが聞こえてくる。負債者たちの悲劇は、今もなお続いているのです」と、彼は沈痛な表情で語りました。

(翻訳・吉原木子)