米国ミズーリ州が、中国政府による新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)の情報隠蔽と個人防護具(PPE)の買い占めがパンデミックを引き起こしたとして、244億ドル(約36兆円)の損害賠償を求めて提訴していた裁判で、同州が勝訴しました。

 米国の連邦判事スティーブン・N・リンボー・ジュニア氏は、3月7日に下した判決でミズーリ州の主張を認め、中国共産党に対し賠償を命じました。この訴訟は5年前にミズーリ州が起こしたもので、中国政府が新型コロナの発生を隠蔽し、感染拡大の責任があると主張していました。

中共に新型コロナの責任 米裁判所が賠償命令

 リンボー連邦判事は判決の中で、「裁判所は、ミズーリ州が、原告の訴状の第4項に基づき、被告がミズーリ州に対して責任を負うことを証明する証拠を、裁判所が十分納得する形で提供したと判断する。よって、裁判所は被告に対し、連帯して総額244億8882万5457ドル(約36兆円)と判決後の利息を支払う判決を下す」と述べました。判決によると、利息は判決が下された3月7日から計算されることになります。

 この訴訟では、中国共産党(以下、中共)およびその関連機関として、国家衛生委員会、非常事態管理部、民政部、湖北省政府、武漢市政府、武漢ウイルス研究所、中国科学院が被告として名指しされました。

 ミズーリ州のアンドリュー・ベイリー司法長官は、判決当日に発表した声明の中で、「この判決は、ミズーリ州および米国にとって、中共が新型コロナウイルスを世界に拡散させた責任を追及する闘いにおける画期的な勝利である」とし、「中共は法廷への出廷を拒否したが、それによって言葉に尽くせない苦しみと経済的損害を引き起こした責任から逃れられるわけではない。我々は、ミズーリ州内の農地を含む中国側が保有する資産を差し押さえることで、一銭たりとも取り戻すつもりだ」と述べました。

 ベイリー長官の事務所によると、今回の判決額は、ミズーリ州の史上最大の判決額の6倍に相当します。

 この判決は、ミズーリ州の前司法長官エリック・シュミット氏が2020年に、中共が「パンデミックの最中に重要な医療機器(PPEを含む)の生産、購入、輸出を妨げた」として提訴してから5年後に下されたものです。

 シュミット氏は当時、中共がコロナの感染拡大を隠蔽し、医療物資を買い占め、供給網を操作した結果、ミズーリ州だけでなく米国全体が甚大な損害を被ったとして訴訟を起こしました。しかし、当時の裁判所は管轄権がないとして訴えを却下しました。

 今年1月、控訴裁判所はミズーリ州に有利な判決を下し、下級裁判所による訴訟棄却の判断を覆しました。ただし、控訴裁判所は、訴訟の対象を中共による医療物資の買い占めに限定するよう求めました。

 ミズーリ州が米国で唯一、中共の責任を追及する訴訟を正式に提起した州です。しかし、ミズーリ州が提訴する前に、米国ではすでに複数の法律チームが米国市民や中小企業を代表して中共を提訴し、コロナのパンデミックによって生じた被害の責任を問う動きがありました。

 その中でも、カリフォルニア州で起こされた訴訟では、中共に対し少なくとも8兆ドル(約1184兆円)の損害賠償を求めています。

 コロナの感染が拡大し始めた当初、世界各国はマスクや防護服、人工呼吸器などの医療物資を必死に確保しようとしていました。しかし、中共はパンデミックが本格化する前の段階から、こうした重要な医療資源を世界中で大量に買い占めていたのです。その結果、各国は感染拡大の最中に深刻な医療物資の不足に直面することになりました。
 
法律を通じた正義の追求

 アナリストは、この判決が極めて重要な意味を持つと指摘しています。まず、これは米国の裁判所が初めて正式に、中国政府が新型コロナウイルスのパンデミックにおける不正行為の責任を負うべきだと認定したものであり、法的責任を問う先例を確立したことになります。

 さらに、この判決は、世界各国に対し、中国政府の責任を法的手段で追及できることを示しました。これまで、中国政府に対する責任追及は主に外交や政治の場で議論されてきましたが、今回の判決により、各国が法的手続きを通じて賠償を求める道が開かれたと言えます。

 近年、中共は新型コロナウイルスのパンデミックにおける対応だけでなく、さまざまな分野で世界各国に深刻な影響を及ぼしてきました。

 経済面では、中共が「一帯一路」構想を通じて多くの国を「債務の罠」に陥れ、その結果、一部の政府が中共の意向に従わざるを得ない状況に追い込まれています。

 軍事面では、中共は国際秩序に挑戦し続け、周辺国の安全を脅かしています。南シナ海や台湾海峡ではたびたび緊張を高める行動をとり、地域の不安定化を招いています。

 人権問題に関しても、中共は新疆、チベット、香港において市民に対する弾圧を続けています。

 最も深刻なのは、中共が国内で大規模な強制的生体臓器摘出を行い、それを「一帯一路」を通じて国外にも拡大しています。

 ミズーリ州の取り組みは、中共の脅威にどのように対応すべきかを考える国々にとって示唆を与えるものとなります。それは、法的手段によって責任を追及することです。例えば、米国の他の州や他国の政府も、同様の訴訟を起こすことで、中共の行為に対し具体的な代償を求めることができます。
 
習近平の娘の豪邸も確保に難航?

 ベイリー司法長官の事務所は判決に関する声明の中で、「ミズーリ州は今後、240億ドル(約35.5兆円)の判決額の回収に動き、必要に応じてトランプ政権と協力し、中共が保有する資産を特定し、差し押さえる。これはミズーリ州の経済と国家安全保障を守るための重要な一歩である」と強調しました。

 これについて、時事評論家は、もし米国政府が中国政府の資産を没収すれば、中国高官が米国に保有する莫大な個人資産にも影響が及ぶのは必至だと指摘しています。過去に公開された情報によると、中共の最高指導部の官僚、習近平氏を含む要人が、米国内に巨額の資産を持っているとされています。さらに、最新の情報では、習近平氏の娘である習明沢氏が、米国ニューヨーク・マンハッタンに総額3200万ドル(約48億円)相当の高級住宅2軒を所有していると報じられています。

 現在の情勢を踏まえると、これらの資産が米国政府によって没収される可能性もあるとみられています。

 米国在住の時事評論家・江峰氏は、米中対立が軍事衝突に発展する可能性がある主な要因として、「台湾・南シナ海」と「新型コロナウイルスの責任追及」の2つを挙げています。

 現在、新型コロナウイルスのパンデミックにおける責任追及が正式に始まったことで、中共はかつての清朝末期と同じ状況に直面する可能性があるのではないかと指摘しています。

 当時の清朝政府は外国人を殺害し、教会を焼き払い、鉄道を破壊するなどの行動をとった結果、八カ国連合軍の介入を招き、厳しい責任追及を受けました。江峰氏は、米国政府によるコロナ大流行の責任追及が、この歴史的な事態と類似した展開をもたらすのではないかと懸念を示しています。

 今後、米中関係の緊張がさらに高まる中で、中共がどのような対応を取るのか、国際社会の動向が注目されています。

(翻訳・藍彧)