2月17日午前6時33分、重慶市江北区の港城工業園で大規模な火災が発生しました。火災は7時間以上続き、最終的に倉庫全体が焼失しました。関係者によると、この火災は港城工業園が従業員への賃金を長期間未払いにしていたことが原因であり、賃金交渉が決裂した労働者が報復として放火した可能性があるとのことです。
当日の午前、多くの重慶市市民がSNSに動画を投稿し、江北区港城工業園内の工場が突如として炎上し、激しい火の手と黒煙が立ち上る様子を伝えました。ネット上に拡散された映像では、午前10時の時点で工場の一部がすでに火に飲み込まれ、黒煙が絶えず上昇し続ける中、複数の消防車が懸命に消火活動を行っていました。
午前10時頃、報道関係者が現場に到着すると、警察が火元から約400メートル離れた地点に規制線を張り、歩行者や車両の通行を厳しく制限していました。消防隊は消火用のホースを約1キロメートルにわたって敷設し、近くの川から水を取り入れながら消火活動を続けていました。現場周辺では、近隣の工場の従業員や市民が規制線の外から火災の様子を見守っていました。
江北区消防救援局は午前11時20分に公式発表を行い、出火した倉庫は鉄山坪街道港城中路36号に位置し、港城工業園内にあることを明らかにしました。発表では「火災はすでに鎮火し、人的被害は確認されていない。出火原因については現在調査中です」と述べられました。しかし、関係者の話によると、港城工業園では従業員の賃金未払いが長期間続いており、賃金を求める労働者が繰り返し交渉を試みましたが、解決に至らず、最終的に放火に及んだ可能性があるとのことです。
目撃者の一人である鄧さんは、「今思い出しても恐ろしいです。私たちの社員寮は火元の工場と道路を一本挟んだだけの距離でした」と語りました。彼は泰諾機械工場の従業員で、事件当日の午前6時頃、夜勤を終えて寮に戻り、休んでいたところ、突然「火事だ!」という叫び声で目を覚ましたと言います。「寝たばかりだったのに、外で大勢の人が叫んでいるのが聞こえました。とにかくすぐに逃げろと言われて、慌てて服を着て、サンダルを履いて外へ飛び出しました」と当時の様子を振り返りました。
火災が発生したのは、重慶三易プラスチック製品工場と、重慶飛龍プラスチック製品工場の倉庫でした。近隣企業の従業員によると、「倉庫には大量のプラスチックやゴム製品などの可燃物が保管されていたため、火の回りが非常に速かったです。倉庫はほぼ全焼しました」とのことです。火災後に拡散された映像では、倉庫は完全に焼け落ち、鉄骨梁が黒く焦げて崩れ落ち、屋根の白いトタンがわずかに残るだけの無惨な姿をさらしていました。
港城工業園の管理委員会と江北区緊急管理局によると、今回の火災による人的被害は確認されていないものの、現在、工場の損害状況を調査中とのことです。企業情報によれば、重慶三易プラスチック製品有限公司は2005年6月に設立されました。ゴム製品、プラスチック製品、自動車部品の製造・販売を行っています。一方、重慶飛龍プラスチック製品工場は1997年3月に設立され、プラスチック製品の製造、機械加工、建物の賃貸事業などを展開しています。
旧正月休暇が明けたばかりの中国各地では、大規模な賃金未払い問題が次々と表面化し、労働者による抗議デモが頻発しています。SNS上には、全国各地で発生した労働者による賃金支払い要求デモの動画が拡散され、企業経営の厳しさと地方政府の財政難が浮き彫りになっています。
2月16日、山西省呂梁市では、清掃作業員が未払い賃金を求めて政府庁舎前で抗議活動を行いました。清掃作業員の家族によると、両親は村の清掃業務に従事しており、月給はわずか600元(約1.2万円)です。賃金未払いがすでに20カ月続いているとのことです。2023年に一部の賃金が支払われたものの、それ以外は3年にわたって未払いの状態が続いています。これに対し、清掃会社は「政府からの支払いが滞っており、会社の資金繰りが厳しいため、給与を支払う余裕がない」と説明しています。
2月17日、江蘇省張家港市の東洋タイヤ工場では、従業員がストライキを決行しました。同社は2月14日、張家港支社の株式86%を遼寧恒達盛投資有限公司に売却すると発表しました。しかし、従業員に対する補償措置は一切提示されませんでした。会社側は「経営には影響がない」「労働契約の変更もない」と説明しましたが、労働者側は「経営責任が新たな企業に移行し、万が一工場が閉鎖された際、賃金や退職金の未払いが発生する可能性が高い」と懸念を表明しました。こうした補償を求める声が強まるなか、ストライキは現在も続いています。
また、2月17日には四川省綿陽市の華晨雷ノ金杯自動車の従業員が、会社の破産発表を受け、市政府前で賃金未払いへの対応を求める集会を行いました。同日、山東省済南市莱蕪区の泰山製鉄でも、政府の補助金未払いと資金繰りの悪化を理由に、数千人の投資家や労働者が抗議デモを実施しました。関係者によると、政府は過去に工場の移転を進める見返りとして補助金を約束していたものの、実際には支払われず、企業の資金難が深刻化したとのことです。
2月17日から18日にかけて、江西省上饒市のジンコ・ソーラー(じんこエネルギー)では、一部工場の閉鎖に伴い、労働者に補償を支払わずに解雇したことを受け、連日抗議デモが行われました。2月18日には、陝西省西安市の長安華宇公司で、農民工が賃金未払いの問題で集団抗議を実施しました。翌19日には、同市内の翰林北路中洋建設の工事現場で、未払い給与を巡り労働者が建物の屋上から飛び降りるという痛ましい事件も発生しました。
このように、地方政府や企業の財政状況は逼迫しており、賃金未払い、倒産、解雇が相次ぎ、社会不安が一層深刻化しています。労働者の抗議活動が各地で拡大するなか、中国社会は混乱の兆しを見せており、政府への不満も高まりつつあります。
(翻訳・吉原木子)