最近、中国の80年代生まれ世代の死亡率に関するデータがネット上で広まり、社会的な議論を呼んでいます。このデータによると、80年代生まれの若者たちの死亡率が急激に上昇しており、すでに約1,200万人が亡くなり、死亡率は5.2%に達しているとされています。これは70年代生まれの死亡率をはるかに上回る数字で、多くのネットユーザーが衝撃を受けています。

 2月16日付の「搜狐網」の記事によれば、2025年の旧正月直後に第7回人口センサスの補足データが発表され、ネット上で大きな反響を呼びました。2024年末時点で、80年代生まれの生存率は94.8%、死亡率は5.2%を超えています。これは、80年代生まれの20人に1人がすでにこの世を去った計算になります。また、過去の人口統計と比べても非常に衝撃的な結果となっています。 これは、80年代生まれの総人口約2億2,300万人のうち、すでに1,000万人以上が亡くなっている事になります。しかも、10歳年上の70年代生まれの方が、死亡率が低いという不可解な点も指摘されています。しかし、このデータを報じた記事はその後、何らかの理由で削除されたとされ、信憑性や背景をめぐり、多くの憶測が飛び交っています。

 ここ数日、中国本土のSNSでは、50年代から90年代生まれ迄の死亡率をまとめた表が拡散されています。 各世代の死亡率はそれぞれ50年代2%、60年代0.7%、70年代4%、80年代5.2%、90年代3%とされています。そのうち80年代生まれの5.2%が最も高い数値です。一部のネットユーザーは、公開情報を基に分析し、80年代生まれは1980年から、1989年にかけて合計約2億2,300万人が誕生し、2024年時点での推計生存者が約2億1,200万人であることから、生存率94.8%、死亡率5.2%、累計1,000万人以上が亡くなったことになると述べています。

 時事評論家の趙蘭健氏は、この傾向について「80年代生まれは中国初の『一人っ子政策世代』であり、幼少期から『勉強を頑張れば良い仕事に就ける』と教えられてきた。しかし、大学を卒業しても就職は厳しく、社会に出てすぐの頃には住宅価格が急騰した。結婚や家庭を持っても教育費、医療費、親の介護費などが負担となり、必死に働いても35歳前後でリストラされ、社会から見放される現実に直面する人が多い」と分析しています。こうした住宅費、教育費、医療費、介護費という「四重の重圧」が、過労死やうつ病、自殺などへと人々を追い込み、80年代生まれの高い死亡率を生む要因になっているというのです。

 ネット上でもこのデータに強い関心が集まり、「90年代生まれは今後さらに厳しい状況になるかもしれない」「一人っ子世代が亡くなると高齢の親がどうやって生活するのか?」「85年生まれの私は必死に働いてやっと生活できている」「亡くなっているのはほとんど社会の底辺で働き続けた80年代生まれだ」「私の周りの80年代生まれは過労死が相次いでいる」といった声が上がっています。中には「同級生がすでに7人も亡くなった」「友人や同級生の訃報を毎年聞く」といった深刻な話も少なくありません。

 さらに、この80年代生まれの高い死亡率については、パンデミック期における真の死亡者数を反映している可能性があるとの見方も浮上しています。2023年1月17日付の「看中国」の報道では、でコラムニストの邢仁涛氏が、2022年7月初旬に起きた上海公安局のデータベース流出事件を取り上げ、ハッカー「ChinaDan」が中国本土の住民情報や警察案件データをネット犯罪フォーラムで販売し、流出データは23TB、10億人以上の個人情報が含まれているとの事でした。

 セキュリティ研究者による検証では、氏名や生年月日、住所、身分証番号など約9億7,000万件の情報が含まれていたことが確認されたといいます。邢氏は「ハッカーが得たのは部分的な情報ではない。全国規模のデータベースと考えられる。つまり中国公安当局が把握している人口は10億人程度で、政府の公表する14億人とは大きくかけ離れている」と指摘しました。

 さらに、中国当局は2019年以降の新型コロナウイルス(COVID-19)流行下で内部告発者の逮捕や厳重なロックダウン、隔離措置などを行い、実際の死者数を隠蔽してきた可能性があるとも指摘されています。公式に発表される重症者数や死者数があまりにも少なく、国民の間でも疑念が拭えない状況です。

 最近は中国本土でインフルエンザが大流行し、北京や上海などの病院は患者でいっぱいになり、突然死の増加や火葬場の行列などから「これはインフルエンザではなく、新型コロナウイルスの再拡大ではないか」と疑う声が広がり、「当局がまた真実を隠しているのではないか」という不安が高まっています。

 こうした80年代生まれの高い死亡率は、単に統計上の数字にとどまらず、社会の急速な変化の中で重いプレッシャーに苦しんだ末に命を落とす人々が多かったことを示す世代全体の悲劇でもあるともいえます。教育、住宅、医療、介護という多重の負担に加え、パンデミック下での混乱によって命を落とす人が相次ぐ80年代生まれの高い死亡率は、社会が抱える深刻な問題を浮き彫りにしています。

(翻訳・吉原木子)