中国経済の減速と不動産市場の低迷により、不動産収入に依存してきた地方政府の財政が困難に直面しています。その結果、多くのインフラ建設プロジェクトが途中で中断され、深刻な問題となっています。

広西で建設中断された鉄道橋脚が注目集める

 広西チワン族自治区柳州市の中心部を貫く幹線道路の上に並ぶ鉄道橋の橋脚が数キロメートルにわたって続いています。しかし、その上には敷設されるはずだった鉄道の線路は影も形もありません。

 総工費は約126億元(約2618億円)で、2016年12月に着工したこの鉄道は、当初の計画では今年中に開通する予定でした。しかし、工事はすでに2021年に中止され、橋脚と駅舎だけが残されています。

 柳州鉄路投資開発グループは昨年11月4日、桂柳路北側にある橋脚と付属施設を撤去するという工事通知を発表しました。

 中国メディアの報道によると、現場の作業員は橋脚の下部から、「木を鋸で切るように」切断すると説明しました。1本の橋脚を切断する費用は約10万元(約208万円)にのぼり、地中に埋まっている部分はそのまま残され、撤去されていません。

 地元のネットユーザーは、「こんなに無駄な建設と撤去を繰り返して、一体どれだけの柳州市民の税金が無駄にされたのか?そもそも最初から建設すべきではなかった」と批判しています。

 しかし、「日経新聞」の報道によれば、今年1月に撮影された写真では、これらの鉄道橋脚がまだ完全には撤去されていないことが確認されています。

 「この鉄道橋の工事は何年も放置されて、もう遺跡のようになっている」とネットユーザーが不満を訴えていました。
 
貴州市の山奥で放置された2本のトンネル

 あるネットユーザーが投稿した動画では、次のように語られています。
 「貴州市の山奥で、2本の荒廃したトンネルがある。その中には、なんと2台の大型トラックが放置されたままだ。ここで一体何が起きたのだろうか?巨額の資金を投じて建設されたトンネルが、なぜ今は使われていないのだろう?作業再開の可能性はまだあるのか?」
 
地方債務の膨張、なぜインフラ推進を急ぐのか

 中国の地方政府はこれまで長年にわたり、土地の使用権売却によって財政を支えてきました。しかし、近年の不動産市場の崩壊と、巨額のインフラ投資が重なったことで、地方財政は深刻な債務危機に直面しています。

 インフラ建設のために発行された地方政府債券は「隠れ債務」とも呼ばれ、その返済負担は年々増大しています。その結果、財政圧力が強まり、未完成のまま放棄される公共プロジェクトが各地で増加しています。

 経済の減速を受けて、中国当局は2023年と2024年に2つの政策文書を発表し、大規模インフラ投資の厳格な管理を掲げました。

 2023年には、中国国務院弁公庁が発表した『重点省分類による政府投資プロジェクト管理強化措置(試行)』で、広西チワン族自治区を含む12の重点省・自治区に対して、2024年は新規政府投資プロジェクトの着工を一時停止するよう求めています。

 2024年9月1日、中国財政部と住宅都市農村建設部など6つの部門が共同で策定した『都市基盤施設資産管理弁法(試行)』が正式に施行されました。この規定では、収益が全く見込めない、または極めて乏しい都市基盤施設のために違法な借金を行うことを厳しく禁止しており、新たな隠れ債務の増加を断固として防ぐ姿勢が示されています。

 しかし、これと同時に、中央政府はここ2年間、すでに多額の債務を抱える地方政府に対して「公共プロジェクトの加速」を指示し、経済成長を維持するための圧力を強めています。また、特別債券プロジェクトにおいては「自己審査・自己発行」の試行が進められており、地方政府はインフラ建設のために地方債を発行するよう強く促されています。この矛盾した方針が、地方財政の不安定化に拍車をかけている状況です。

 「日経新聞」の報道によれば、すでに建設が中断された貴陽市の環状道路プロジェクトの資金を転用し、同市は61件の新たな開発事業を開始しました。これらのプロジェクトにはダムや病院の建設が含まれており、省エネ企業向けの総合開発区の整備も進められています。

 しかし、2024年1月初旬の時点で、この開発区に入居を計画している企業は一社も存在しません。

各地で進行計画中の運河プロジェクト

 中国メディアの報道によると、全長134.2キロメートルに及ぶ平陸運河の建設が2022年8月に広西チワン族自治区で開始され、700億元(1兆4500億円)以上を投じて2026年12月末までに完成する予定です。

 2024年6月、公式発表によれば、平陸運河の累積投資額は330億元(6857億円)以上で、掘削作業はすでに半分以上が進んでいるとされています。

 また、江西省、湖南省、河南省、湖北省、安徽省など内陸部の各省でも、数千億元規模の投資を投じた新たな運河建設計画が広がりつつあります。

 この運河建設ブームは中央政府主導の政策によるものです。2020年、中国交通運輸部は『内陸水運発展綱要』を発表し、平陸運河の建設を含む複数の運河プロジェクトを統括的に推進する方針を打ち出しました。2021年には、中国国務院が平陸運河プロジェクトを「第14次五か年計画」と2035年の長期目標に正式に組み込み、国家レベルの重点プロジェクトとして位置づけました。

 公式メディアは「運河の掘削は経済発展のために不可欠である」と強調しています。しかし、ベストセラー作家の宋鴻兵氏は2023年8月末に発表した文章で次のように疑問を投げかけています。「現在、地方政府はどこも財政難に直面しており、特に江西省、湖南省、河南省、湖北省、安徽省などの内陸省は、長年にわたり東部省からの財政移転によって財政を維持してきた。このような状況で、果たして中国の巨大インフラプロジェクトである運河建設という「スーパー・プロジェクト」を支えるための資金をどのように調達するのか」

 ドイツ在住の水利専門家である王維洛氏は、大紀元の取材に対し、次のように語っています。
 「地方政府が財政難に直面しているにもかかわらず、インフラ建設に積極的なのはなぜか。その主な理由は、プロジェクト資金が地方に下りてくると、地方政府はまずその一部を差し引いて公務員の給与支払いに充て、地方財政の危機を一時的にしのぐためだ。また、大規模プロジェクトでは汚職による不正資金が全体の3分の1、場合によってはそれ以上に達することもある」

地方政府が直面するのは将来の債務返済リスクのみ

 経済学者の謝田氏は、大紀元の取材に対して次のように述べています。
 「中国当局が進めるインフラ建設は、十分な実現可能性調査が行われておらず、市場の需要も真剣に考慮されていない。基本的には『思いつき』で一斉に始められる計画経済型のプロジェクトだ。これは中国のGDP成長率向上や官僚の業績評価に有利であるため、たとえ無駄が生じても気にされない。中国当局のインフラ建設への異常な執着と無秩序な拡張は、中国経済が急速に成長しているという虚像を作り上げ、国際的な投資家を欺くことを目的としている」

 公式情報によれば、中国の高速鉄道の総走行距離はすでに4万8000キロメートルを超えています。しかし、それを運営する中国国家鉄路集団(国鉄集団)の債務は、過去最高の1兆ドル(約151.45兆円)に迫っており、各地で利用者の少ない「ゴースト駅」が大量に出現しています。

 今年の旧正月期間中、帰省ラッシュにもかかわらず「普通列車は満員で乗れないのに、高速鉄道はガラガラだった」という状況がSNS上で話題となりました。

 それにもかかわらず、国鉄集団は2024年1月2日、「2025年には全国で2600キロメートルの新路線を開通させる予定」と発表しました。さらに2030年までには、全国の鉄道運行距離を18万キロメートルに拡大し、そのうち高速鉄道は6万キロメートルに達する見込みだとしています。

(翻訳・藍彧)