2月3日未明、台湾人俳優の徐熙媛(バービィー・スー)さんがインフルエンザによる肺炎の合併症でこの世を去りました。この訃報は芸能界を震撼させたのみならず、インフルエンザによる合併症の致死性について改めて注目を集めることとなりました。
海外の専門機関によると、昨年12月以降、北半球ではインフルエンザの感染が急速に拡大しています。米国でも鳥インフルエンザの重症患者が亡くなるなど、楽観視できない状況です。
中国当局、鳥インフルの流行を隠蔽か
一般的にインフルエンザの症状は、呼吸器系の異常に加え、倦怠感や四肢の脱力感、筋肉痛なども挙げられます。さらに、呼吸困難や心拍数の増加、集中力の低下やめまいが現れた場合、すぐに医療機関を受診しないと重症化する恐れがあるとされています。
台湾の疾病管制署(CDCに相当)のデータによると、北半球では昨年12月以降、インフルエンザの感染が急速に拡大しています。特に香港では感染が増加し、中国、日本、韓国でも増加の勢いとなっています。
しかし、中国の国営メディアは中国国内のインフルエンザの流行についてほとんど言及していません。それどころか、世論の関心が諸外国の感染状況に向くよう誘導さえしています。
例えば、中国中央テレビ(CCTV)は韓国で鳥インフルエンザが急速に拡大し、累計135万羽の産卵鶏が処分されるなど、大量の家畜が殺処分されていると報道しました。さらに、アメリカやイギリス、日本などでインフルエンザの感染が拡大している状況も報じています。一方、中国国内の鳥インフルエンザ流行については一切触れられていません。
しかし、中国国内の情報によると、現在、H5N1型の鳥インフルエンザがすでに流行しているとのことです。昨年12月、中国のあるウイルス検査機関が発表した報告によると、H5N1、H5N2、H5N6、H5N8といった複数の亜型がアヒルの群れの間で流行しており、感染源はこれらのウイルスを保有するアヒルやその他の鳥類とされています。
H5N1型鳥インフルエンザウイルスについて、世界保健機関(WHO)は、ヒトからヒトへと感染する可能性があるのではないかと懸念しています。もし本当にヒトからヒトへの感染が発生すれば、世界的な危機になる恐れがあります。
これについて、中国の鳥インフルエンザウイルス専門家である劉秀梵(りゅうしゅうぼん)氏は、2014年にH5N1に関する論文を発表し、以下の3つの重要な情報を明らかにしました。
まず、H5N1型鳥インフルエンザは、1996年に広東省のガチョウの群れで初めて発生したことです。その後、このウイルスはアジア、ヨーロッパ、アフリカの63の国と地域に広がりました。そして、2003年から2004年6月27日までの間に、このウイルスは世界16カ国で667人の感染が確認され、そのうち393人が死亡しました。
しかし、この論文の内容が中国国内のメディアに引用されると、すぐに中国当局によって封殺されました。
中国当局は鳥インフル感染を隠蔽しているのか?
医学的知見を持つ米国在住の時事評論家・唐靖遠(とうせいえん)氏は、台湾人俳優のバービィー・スー さんがインフルエンザウイルスによる敗血症(はいけつしょう)と診断されたことについて、「非常に稀なケース」であると指摘しました。
唐靖遠氏によると、インフルエンザウイルスが肺炎を引き起こし、さらに敗血症に至るケースは、通常、5歳未満の幼児や65歳以上の高齢者など、免疫力が低い人々に見られるとのことです。
しかし、バービィー・スーさんは発症からわずか4日で亡くなっており、病状の進行は極めて速かったとされています。健康な成人が、わずか4日間で軽い呼吸器感染から敗血症に至ることは極めて異例であり、免疫系が深刻なダメージを受けていた可能性を示唆していると唐靖遠氏は分析しています。
唐靖遠氏はバービィー・スーさんの突然の逝去について言及し、今回のインフルエンザの流行が、通常のものとは異なる可能性を示す警鐘となった、と述べました。さらに、「感染の疑いがある場合や、症状が重い場合は決して軽視せず、速やかに医療機関を受診することが重要だ」と注意を呼びかけています。
一方、アメリカ陸軍研究所ウイルス研究室の元主任・林暁旭(りん・ぎょうきょく)博士は、海外の中国語メディア 『大紀元時報』 のインタビューに応じ、「最も懸念されるのは、中国で鳥インフルエンザのヒト感染が発生しているかどうか、そして、それがヒトからヒトへの感染に変異していないかという点だ」と指摘しました。
林暁旭博士は、各国がこの問題に注意を払うべきだと警鐘を鳴らしました。そして、「中国政府が鳥インフルエンザのヒトへの感染について何かを隠しているのではないかという懸念が強まっている。これは非常に憂慮すべき事態であり、国際社会はより注意深く監視すべきだ。米国では昨年からヒトへの感染例が急増しているが、その背景に何があるのか、さらなる調査が必要だ」と述べました。
H5N1のヒトからヒトへの感染に警戒を
時事評論家の唐靖遠氏も、自身の番組で今回の感染拡大に対する警戒を呼びかけました。
時事評論家の唐靖遠氏によると、ニューヨーク州の疾病管理センター(CDC)は2月3日、突如として緊急通知を発表しました。この通知では、すべての入院患者のうちA型インフルエンザ陽性、または陽性の疑いがある人に対し、直ちにウイルス検査を行うよう求めています。これは、患者が鳥インフルエンザウイルスに感染しているかを特定するための措置です。
唐靖遠氏は、この緊急通知に含まれる重要なポイントとして、3つの点を挙げています。
まず、CDCは入院後24時間以内に患者から検体を採取し、A型インフルエンザウイルスの亜型を分析して報告するよう求めている点です。
次に、重症患者や集中治療室(ICU)に入院している患者については、季節性インフルエンザやH5N1型鳥インフルエンザの感染が疑われる場合、検査結果を待たずに抗ウイルス薬「オセルタミビル」(一般名:タミフル)の使用を推奨している点です。
そして三つ目は、H5N1型鳥インフルエンザの感染が疑われる場合、患者は負圧隔離室で治療を受けるべきであり、高性能なエアフィルター(HEPAフィルター)を備えていない病室での入院は避けるべきだとされている点です。
唐靖遠氏は、今回の緊急通知の内容を分析し、「ニューヨーク州ではすでに鳥インフルエンザの深刻な感染拡大が発生している可能性がある」と指摘しました。また、特定の地域で集中感染が起きていることも否定できないとしています。
緊急通知では、H5N1型ウイルスに対する検査体制の強化を明確に求めています。特にH5N1型は、致死率が30%から50%と非常に高いものの、通常の感染経路は動物から人へのものであり、人から人への感染は極めてまれとされています。
しかし、今回の通知では、疑わしい症例について直ちに隔離を求めていることから、ニューヨーク州の疾病管理センターがすでに人から人への感染が発生している証拠を掴んでいる可能性があると唐靖遠氏は推測しています。
なお、唐靖遠氏は、現時点では鳥インフルエンザの人への感染に関する情報が限られており、現在の感染リスクを正確に評価するのは難しいとしています。その上で、今回の分析が今後の予防策を講じるうえでの参考になればと述べています。
(翻訳・唐木 衛)