中国山東省に住む77歳の老婦人が最近、自身の貧しく苦しい人生を嘆き、「来世には(人間に)生まれ変わりたくない」と誓う動画がネット上で拡散され、話題となっています。
この動画は多くの人々の共感を呼び、SNSでは「人生があまりにも苦しい」「疲れ果てた」「絶望的だ」といったコメントが相次いで寄せられています。
「人間より牛や馬の方がまし」
1月23日に公開されたネット上の動画には、山東省の白髪の老婦人が腰を曲げ、よろよろと足元をふらつかせながら、不要品を積んだ自転車を押している様子が映っています。彼女は「来世には(人間に)生まれ変わりたくない」と語り、「人間でいるより、牛や馬のほうがましだ。生きていても何の希望もない」と嘆きました。
彼女は77歳で、リサイクル品を拾って生計を立てており、1日にわずか3~5元(約65円~108円)しか稼げないといいます。昼食は煎餅を1枚買って食べるだけで、他の食べ物を買えないとのことです。
老婦人には2人の子どもがいたが、そのうちの1人は20年前に遠方で亡くなり、もう1人の子どもは肉体労働をしているものの、ほとんどお金を稼げていません。彼女は「私ほど苦しんでいる人はいない。動けなくなったら、おしまいだ」と話し、涙をぬぐいました。
2024年6月19日、ティックトックに投稿された動画には、全身が埃まみれの中年男性が、茶碗を手に持ち、地面にしゃがみ込んでいる様子が映っていました。彼は苦しそうな表情で、「長く生きるつもりはない。親を見送り、子どもが大きくなったら、それでおしまいだ。この世には未練がなく、来世はもう来ない。あまりにもつらすぎる」と語りました。
そう言い終えると、彼は涙を流し、泣き崩れました。
また、北京で深夜に出前の配達をしている出稼ぎ男性が、「お金も稼げず、子どもの面倒を見る時間もない。年老いた親のそばにいて孝行することもできない。今はもう夜9時を過ぎているが、わずかなお金のためにまだ働き続けなければならない。本当に疲れた」と涙を浮かべながら、40歳になっても何も成し遂げられなかったと嘆いている動画もあります。
彼は鼻をすすりながら涙を流し、「この人生でやるべきことはすべて終わった。来世がどんなに素晴らしい世界でも、もう生まれ変わりたくない!」と訴えました。
多くの中国のネットユーザーが共感を示すコメントを残しました。
「生活が本当に厳しすぎる、あまりにも疲れた!」
「この人生がこんなにも苦しいのに、来世のことなど考えたことがない」
「中国人の骨の髄まで(中国)共産党に搾り取られてしまった!」
「現世では、もう(中国)共産党の家畜にはなるのをやめよう!(中国)共産党を倒してこそ、庶民に希望が生まれる」
来世では中国人になりたくない
2023年10月、中国のネットユーザー「孫太傅」が中国のニュース配信アプリ「今日頭条」に「もし来世があるなら、どの国を選びますか?」という記事を投稿しました。この問いかけは大きな反響を呼び、約24時間の間に1095件のコメントが寄せられました。
その結果、「中国を選ぶ」と答えた人は96人、「中国を選ばない」と答えた人は95人でした。選ばない理由について「中国でなければ、どこでもいい」といった表現が目立ちました。
なぜ、これほど多くの人が「来世では中国人になりたくない」と考えているのでしょうか?
これは、中国人が反抗的だからでしょうか?それとも、この国の現実があまりにも過酷で、人々が絶望せざるを得なくなっているのでしょうか?
実は、「来世はもう来ない」という言葉には、ある背景があります。ある女性が深夜に、わずか9秒の動画を投稿しました。動画には、疲れ果てた失望の表情を浮かべる彼女の姿が映っており、その後、彼女は泣き崩れました。動画の説明文には、ただ「来世はもう来ない」という短い言葉が添えられていました。
この投稿は、中国人が抱える最も深い「隠された痛み」を浮き彫りにし、大きな共感を呼びました。動画は440万件の「いいね」を獲得し、53万件ものコメントが寄せられました。
「来世はもう来ない」という言葉は、こうして中国社会の中で急速に広まり、今や多くの人々の心の声を代弁する流行語となっています。
中国のネットユーザーたちのコメントを見れば、彼らがどれほど深刻な苦しみを抱えているのか、少しは感じ取れるかもしれません。
「もし本当に輪廻があるのなら、今世を終えた後は魂ごと消え去り、跡形もなく消滅したい。何もかも終わらせて、永遠の虚無になりたい」
「もし地獄が19層あるなら、人間界こそが第19層の地獄だ。人間として生まれること自体が試練のようなもの。もし来世が本当にあるなら、もう二度と生まれ変わりたくない。閻魔大王に贈り物をもらっても、もう絶対に来ない」
「人が向かう方向こそが文明の方向だ。誰もが憧れる場所は、たとえ天国でなくても楽園のようなもの。誰もが逃げ出す場所は、たとえ地獄でなくても牢獄のようなもの」
こうしたコメントは、中国社会における人々の絶望と疲弊が、どれほど深刻なものなのかを物語っています。
中国で広がる「移住」の波
2022年、中国政府の厳格なゼロコロナ政策によって、多くの若者や裕福層が中国を離れることを決意しました。
裕福な人々は家族と資産を携えて中国を捨て、国外へと去っています。一方で、経済的に恵まれない貧しい人々は移住することもできず、自らの境遇を子どもに引き継がせたくないという思いから、結婚も出産もしない「躺平(タンピン)」を選択する若者が増えています。
また、中国当局が「国家安全維持法」を強行したことにより、多くの香港市民も未来に希望を失い、中国本土と同様に「移住」の波が起きています。
グーグル・トレンドによると、香港における「移民」という言葉の検索ボリュームは、2019年までは比較的安定しており、2019年4月に突然急上昇し、2020年5月にピークに達したといいます。その後も、香港市民の「移民」への関心は依然として高い水準を維持しています。
公式発表によると、2023年に日本に居住する約300万人以上の外国人のうち、中国人が最も多く、その数は82.2万人に達しました。この数字は前年の76.2万人を大きく上回っています。
東京大学の客員研究員を務めるジャーナリストの賈葭(ジア・ジア)氏は、当初アメリカへの移民を考えていました。しかし、中国で新型コロナウイルスの感染が拡大したことを受け、急いで国外脱出を決意し、最終的に日本を選びました。賈氏はAP通信の取材に対し、「日本に来て驚いた。アメリカよりも日本のほうが良い」と語りました。
賈氏のような知識人にとって、中国の統制がますます厳しくなる中で、日本はより自由な空間を提供しています。また、裕福な投資家や企業家にとって、日本には中国にはない財産保護の制度を備えています。
投資移住コンサルのHenley & Partners(ヘンリー・アンド・パートナーズ)のレポートによると、2023年に中国を離れた百万長者(資産100万ドル以上の個人)は約1万4000人に上り、これは世界で最も多い数字となりました。日本は彼らの主要な移住先の一つとなっています。
(翻訳・藍彧)