中国国家統計局は1月17日、2024年の国内総生産(GDP)が5%成長したと発表しました。しかし、アメリカに本拠地を置く独立系の調査機関「ロジウム・グループ(Rhodium Group、栄鼎集団)」によると、中国経済の2024年の成長率はわずか2.8%に過ぎず、中国政府の公式発表とは大きく食い違っているとの試算結果が出ています。
一部のアナリストの見解では、中国経済はここ3年間にわたり悪化が続いており、その状況は毛沢東時代の「大躍進」後に訪れた経済衰退と「大飢饉」に非常によく似ていると指摘されています。
また、トランプ大統領は就任し、中国からの輸入品に対する関税を引き上げる方針を明確にしています。この政策は中国の輸出産業に大きな打撃を与え、経済全体の成長をさらに抑制する恐れがあります。このような状況下で、中国経済はこれまで以上に大きなリスクに直面しているとされています。
中国の公式データが意図的に誇張か
中国政府が発表する経済データの信頼性には、かねてから疑問の声が上がっています。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、海外の一部のエコノミストは、中国当局が公表したGDP成長率の数値とは対照的に、他のさまざまな経済指標は、より弱い経済状況を示していると指摘しています。
例えば、消費者物価指数(CPI)、税収、オンライン支出などが低迷しており、中国経済は不動産市場の低迷による困難に深く陥り、デフレの瀬戸際に立たされています。
こうした中、エコノミストは、中国当局が発表するGDPデータが、政治的な目標を達成するために意図的に誇張されている可能性があると示唆しています。
コーネル大学のエスワール・プラサド教授(経済学)は、「これらの成長データは信頼の範囲を超えており、信頼の構築にも、中国経済の厳しい状況を打開する助けにもならない」と述べ、「急激に変動する株式市場、不況が続く不動産市場、続く人民元の元安、外資系企業の撤退や資本流出など、これらの要因こそが中国経済の実態をより正確に反映している。これらの指標は、経済成長率が5%に達したという主張とほとんど一致しない」と指摘しました。
輸出好調 貿易黒字が過去最高を記録
中国政府が投資を工場へ誘導した結果、国内の工業生産は急速に拡大しました。製品価格の低さ、為替レートの弱さ、電気自動車などの新製品分野における高度な専門技術に支えられ、昨年の中国の輸出貿易は好調で、記録的な貿易黒字を達成しました。
中国の公式データによると、2024年の中国の貿易黒字は7兆元(約150兆円)を超え、2018年の3倍に達し、過去最高を記録しました。この驚異的な貨物輸出量は、世界の貿易に広範な影響を与えています。
米メディアが1月15日に報じたところによると、ブラッド・セッツァー米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済政策担当)は、次のように述べています。「これは持続可能ではない。世界貿易がわずか3%の成長率にとどまる中で、中国の輸出が12%の速度で成長し続けることは不可能である。そうなれば、他国の輸出分野に深刻な悪影響を及ぼすだろう」
悪化するデフレ、「大飢饉」の再現か?
輸出黒字の増加とは対照的に、中国経済のその他の指標はGDPよりもはるかに弱い状況を示しています。
1月17日に発表されたデータによると、2024年の不動産開発投資は前年比10.6%減少し、年間の新規住宅着工面積は23.0%減少しました。この減少幅は2023年を上回っています。
生産者物価指数(PPI)は2年以上にわたり下落が続いており、12月の消費者物価指数(CPI)はわずか0.1%の上昇にとどまりました。公開されたデータによると、2024年の淘宝(タオバオ)と天猫(ティエンマオ)のオンラインショッピングプラットフォームの売上高は、2023年と比べてわずか0.2%の増加にとどまりました。
ブルームバーグの報道によると、多くのアナリストは現在の中国が、1960年代以来最も長い経済全体の価格下落周期に入っていると考えています。デフレが悪化しているだけでなく、内需は毛沢東時代の「大躍進」運動が終わったころの水準まで弱まっています。「大躍進」は中国経済を深刻に後退させ、数千万人が死亡する「大飢饉」を引き起こしました。
トランプ大統領が財務長官に指名したスコット・ベネット氏は16日、中国経済は不況ではないにせよ、すでに衰退に陥っており、輸出によって困難を脱しようとしていると述べました。また、中国当局が軍事発展を最優先目標としており、経済成長を維持するために世界の他地域に安価な商品を輸出しようとしていると指摘しました。
一方、日経アジアが16日に報じた新たな調査によると、80%の中国人消費者が「消費の格下げ」に陥っていると感じており、43%の回答者が低価格商品を買い続けることに不安を抱いているとしています。
米メディアは、中国の内需を活性化し、消費者がより多くの国産品を購入できるようにするためには、中国当局が軍事費や治安維持費を削減し、国有企業への補助金を削減し、社会保障の不十分な分野に資金を移す必要があり、場合によっては減税を行う必要もあると指摘しました。しかし、中国当局はこれらの施策を講じていません。
ロジウム・グループ「2024年の中国経済成長率は約2.8%」
ウォール・ストリート・ジャーナルが中国の主要上場企業の決算を分析したところ、昨年第3四半期に23%の企業が純損失を計上し、半数以上の企業の純利益が前年同期比で減少していることが明らかになりました。
昨年前11カ月の全国税収は3.8%減少しました。また、昨年のセメント生産量は毎月減少傾向を示しています。中国の公式統計によると、インフレ要因を除いた場合、2024年第1~3四半期の年換算成長率は約4%となり、コロナのパンデミック前の7%を超える水準を下回っています。
ロジウム・グループは、これらのデータに基づき、中国のGDP成長率を2.8%と試算しました。これは中共が公表した公式データを大幅に下回るものです。
ロジウム・グループ中国市場研究部長のローガン・ライト氏は、「中国政府が発表したデータと経済の現実との間には大きな差がある」と述べました。
ライト氏は、過去1年間で中国当局が利下げを行い、株式市場や地方政府への財政支援を打ち出し、さらに2025年には政府借入を大幅に増やす方針を示唆したことを指摘しました。また、「もし経済成長率がわずかな減速にとどまるのであれば、これらの措置は必要なかっただろう」と述べました。
フィンランド銀行新興経済研究所のイッカ・コルホネン所長は、「中国経済の行方には、より大きな不確実性が存在している」と述べました。
同研究所の試算によると、2024年の中国経済成長率は中国の公式発表値より約1%低いとされています。また、同研究所は経済活動のインフレ調整において、中国国家統計局とは異なる手法を用いていることを明らかにしました。
多くのエコノミストは、中国経済の成長見通しが大きく変化していると指摘しています。中国経済は現在、不動産市場の低迷、政府財政の逼迫、インフラやその他の資産投資の収益率低下、そして人口減少といった根深い問題に対応するために懸命に取り組んでいる状況です。
(翻訳・藍彧)