旧正月(春節)前後の時期、北京の静けさが話題になっています。地方出身で北京に出て働く人々の間では、ここ数年の変化についての議論が活発になり、一方で北京市民の中には「正月らしさもなく、人の気配が薄くなった」と嘆く人もいます。専門家の分析によると、この現象の主な要因は経済の低迷と人口の減少だと考えられています。
最近、インターネット上で「北京の寂しさが目に見えるようになった」という記事が拡散され、多くの共感を呼んでいます。この記事の筆者は、ある冬の日の昼間に988番バスに乗り、朝陽公園(ちょうようこうえん)や酒仙橋(しゅせんきょう)、望京(ぼうけい)を経由しながら北京市内の現状を観察した様子を記録しています。筆者は、「少し立ち止まって、自分の身の回りの変化をじっくり見てみたかった」と語っています。
記事によると、冬の北京はもともと寂しげな雰囲気があるものの、現在は街並みがどこも同じように見え、まるで地方都市のようになっているそうです。大使館エリアでは人影がまばらで、北京に住む外国人の数は40%以上減少しているとのことです。かつて彼らはこの街の消費を支える存在でしたが、その姿が消えたことで、商業エリアの活気も失われてしまいました。酒仙橋の都市と農村の境界エリアは、数十年間ほとんど変化がなく、古びた住宅が今も使われています。
かつて賑わいを見せた商業エリアである望京も様変わりしました。道路にはほとんど人が歩いておらず、レストランには客の姿がなく、まるで空気までが寂しげに感じられるそうです。鳥すら見かけないにもかかわらず、高層ビルだけはそびえ立ち、まるで未来都市のような光景が広がっています。しかし、平日昼間にもかかわらず、オフィス街にはランチを取る会社員の姿すらほとんど見られないとのことです。
2024年5月、アリババの北京本社が正式に稼働し、約1.9万人の社員が望京を離れました。さらに年末にはSNSアプリ「陌陌(モモ)」の約1000人の社員も同地を去りました。加えて、かつて人気を誇った配信サービス「熊猫直播(パンダライブ)」やファッション系EC「美丽说(メイリシュオ)」など、数多くのインターネット企業がすでに撤退しています。彼らと共に、最も活気があった25歳~35歳の若年層も流出しており、一部の人々はすでに昨年解雇されていた可能性もあるそうです。
筆者は記事の最後で、豪華な税務署のオフィスを訪れたものの、そこにもほとんど人がいなかったと述べています。
実際、北京の静けさについての議論は今回が初めてではありません。昨年1月にも、王府井(おうふせい)(北京市中心部の繁華街)の様子を撮影した動画がネット上に投稿され、かつて人々で溢れかえっていた歩行者天国が閑散としている様子が映し出されました。しかし、この投稿はすぐに削除されたそうです。とはいえ、多くのネットユーザーは「北京の寂しさはもはや紛れもない事実」だと語っています。
「望京東(ぼうけいとう)は朝夕の通勤ラッシュ時だけ渋滞しますが、それ以外の時間帯は人影がまったくありません。経済が好調かどうかを見極めるには、通勤ラッシュではなく、商業施設や飲食店の状況を見るべきです。今やレストランもショッピングモールも閑散としており、経済が厳しいことは明らかです」と指摘する声もあります。また、「2015年ごろから衰退が始まり、2018年には大手企業が次々と撤退し始めました。当時はちょうど米中貿易戦争が勃発した時期でした」と振り返る人もいます。
一方で、「高層ビルはただのコンクリートの塊にすぎません」「低所得者を排除した結果、庶民向けの市場も消えました」「もはや繁栄は過去のものとなり、今ではただ冷え込むばかりです」と嘆く声も少なくありません。
北京市在住歴28年の李さんは、日常の変化について次のように語っています。
「今やホワイトカラーの人々は自宅から弁当を持参するようになり、中高級レストランで食事をする人はほとんどいなくなりました。転職の話題も減り、今では残業や会社の業績について話す人が増えました。中古住宅市場は低迷し、成約率は2018年以前の15分の1に落ち込んでいます。大型スーパーの閉店が相次ぎ、ウォルマートやカルフールも撤退しました。オフィスビルの賃料は3分の1から半額まで下がり、一部のビルは賃料無料で光熱費だけで借りられるようになっています。タクシーは以前よりも安く、簡単に拾えるようになりました。失業した人々が運転手として働き始めたためです。フードデリバリーの到着も驚くほど早くなりました。これもまた、配達員が急増している証拠です。」
専門家は、北京の衰退の背景には経済の低迷と人口の減少があると指摘しています。特に北京市の常住人口は2190万人前後で推移しているものの、外来人口の割合は9年連続で減少し、2023年末時点で37.70%まで低下しています。
さらに、経済の不透明感が増す中、人々の消費意欲も低下しています。「銀行口座に貯金があったとしても、将来が見えない以上、人々はお金を使うことをためらいます。その結果、消費が冷え込み、経済が停滞するのです」との見方もあります。
かつて活気に満ちていた北京は、今や「静かな街」へと変わりつつあります。経済低迷、企業撤退、消費意欲の減退、そして人口減少。これらの要因が重なり合い、北京のみならず、中国全土の大都市が同様の状況に陥っています。
(翻訳・吉原木子)