(イメージ:YouTubeスクリーンショット)

 元アメリカ空軍准将で、26年以上にわたり国防総省内で戦略と外交の上級職を務めるロバート・スポルティング(Robert Spalding)氏は、最新著書『Stealth War ~How China Took Over While America’s Elite Slept』(ステルス戦争~アメリカのエリートたちが寝ている間に中国が引き継いだ方法)に、「第三次世界大戦は遠い悪夢ではなく、中国共産党は既にこの戦争を数十年前から発動している。中国共産党は、この本当の21世紀戦争を発動した唯一の政権である。彼らの武器は、銃や弾丸、核弾頭ではなく、お金と技術で買収した影響力である。この戦争では、全ての人が兵士だ」と著述した。同書は、中国共産党がアメリカに対し、どのように“超限戦”を行っているのかを描いている。
※超限戦:あらゆる手段で制約無く戦うこと

 2019年11月、テレビ番組『チャイナ・アンセンサード(China Uncensored:無検閲の中国)』がスポルティング氏を取材した際、彼は「現在、米国会両党と米国最高経営責任者レベルの人々は、中国共産党のアメリカへの脅威が、経済面だけでなく、アメリカの民主主義にも及ぶと気付き始めている。中国共産党がどのように社会全体をコントロールしているのかを、今すぐアメリカ国民に気付かせる必要がある!」と訴えた。

元アメリカ空軍准将ロバート・スポルティング(Robert Spalding)(イメージ:YouTubeスクリーンショット)

世界の支配者は誰なのか?

 スポルティング氏は、世界を支配するのは、アメリカでも中国でも構わないと思う人に対し「NBAは良い例です。要するに、政治、学術、企業、金融など社会のあらゆる機関は、中国共産党の一味になりました。だからマネージャーの一人が香港を支持するようなツイートをしただけで、NBAはその人を解雇しようとした。この一件でも外国のシステムに対する中国共産党の制御力を推測できる」と答えた。
※NBA:北米で展開する男子プロバスケットボールリーグ

 スポルティング氏は自身の話をした。「ホワイトハウスで、弁護士やシンクタンクに電話をし、“中国側の行為を暴くための支援か、中国共産党を阻止するために実用的な政策を策定する必要がある”と求めましたが、それらに対し、彼らはいつも“役に立てず申し訳ありません。中国の投資者やクライアントを怒らせたくありませんので…”と答えます!」

 「中国共産党は我々の社会の隅々まで浸透した。率直に言って、これらの機関の責任者達もこの状況を知っている。だが責任者達は、中国共産党がいつの日か奇跡的に民主主義に変換するだろうと誤解している」と続けた。

チャイナマネーは全米社会に浸透している

 中国共産党の資金は、アメリカの大学システムや、ワシントン州の主要シンクタンク(多くの役員が中国共産党と関係を持っている)へ流れたり、元政治家へ遊説のための賄賂として流れたり、中国語メディアに中国系アメリカ人を洗脳させるなど、アメリカ社会全体に浸透している。自由社会、民主主義の原則を支えるためにアメリカが依存しているほぼ全ての主要機構が、事実上、中国共産党との経済的・財務的関係を確立している。

 「我々が中国共産党を求めたのか、あるいは中国共産党が我々を求めたのか?はっきり言って、両方存在します」とスポルティング氏は述べた。

 アメリカ企業は紛争を回避したいという願望を持ち、中国共産党との対話により、良い関係を築く事が出来、激しい衝突を避けられると思っている。しかし、競争や戦争に対する中国共産党の考えはアメリカ人と全く異なっている。

中国共産党はすでに第三次世界大戦を発動している

 「中国共産党は、21世紀戦争を発動している唯一の政権です」スポルティング氏はこう語る。「我々は、第三次世界大戦についてよく話をします。“いつ始まる?”、“促進因子は何?”、“どのように戦う?”などと、まず特定の都市に生物兵器を投下することを想定し、米軍は戦争の予想や推測をし、様々な状況を探ります。将来の戦争がどう変化をするのかを考えるばかりで、米軍は海外で戦うから、自国での戦争を心配する必要がないと考えていました」

 「しかし実際には、アメリカは長い間この戦争で中国共産党によって打ちのめされていましたが、多くのアメリカ人は気付いていません。グローバリゼーションとインターネットの普及は、ライバルをアメリカのテレビ番組とインターネットに連れてきました。米軍兵士達は海外で、アメリカ本土の家族を守っているが、その家族たちは経済、金融、情報の分野で、だんだんと中国共産党の影響を受けています」

目の敵(かたき)

 「なぜ中国共産党は、アメリカを目の敵にしているのでしょう?それは、中国共産党が維持しようとする中央集権による統治が、アメリカのイデオロギーとは真逆だからです。天安門広場での大虐殺以降、中国共産党は中国社会に『免疫』を開始しました。幼稚園から全ての学年の子供に、“中国共産党はどれほど大事なのか”、“欧米諸国はどれほど邪悪なのか”、“日本はどれほど邪悪なのか”、“中国の百年の恥、愛国教育”などを洗脳し、ファイアウォールを構築し、メディアやSNSを利用する他、あなたのアプリデータを随時監視する等の手段を使って民衆を洗脳します」

 「これらと同時に、毛沢東が数千万人の中国人を殺した事の様に、中国共産党に不利な意見の存在を、大部分の中国の民衆は何も知りません。文化大革命は中国人と過去の全ての関係を断ち切り、歴史を改ざんしました。それを知っているメディアで働く人々も民衆を審査します。たとえ彼らが天安門広場での大虐殺の真実を知っても、「噂を広めない」を理由にして、自分の家族にすら伝えません」

世界の全てが見える「目」

 「このような審査制度は、フェイスブックとツイッターからコピーされました。それは、西側は利益のためであり、東側は民衆をコントロールするためです。この2つの異なるパターンはその中間点で融合している。5Gはまさにそのためのツールです。4Gはスマートフォンに関わるが、5Gはインターネットに関わります。5Gが普及すれば、スマートフォンを使うのではなく、玄関まで行き「ウーバー!」と呼ぶだけで、タクシーが駆けつけて来ます。それは、カメラがあなたの顔を認識するからです。これらの個人情報は全て、アメリカのテクノロジー企業に収集されたデータで、Baidu(百度)、Alibaba(アリババ)、もしくはTencent(テンセント)により中国に送られる可能性があります

 オーストラリア戦略政策研究所の研究員ホフマン(Samantha Hoffman)氏は最近、「グローバル・エンジニアリング・ビッグデータが中国共産党の権力を膨張させる」と題する報告書を発表し、「中訳語通テクノロジー会社(GTCOM)」について述べた。「GTCOMは65種もの異なる言語での翻訳サービスを提供し、ビッグデータと人工知能の企業と名乗り、年間2~300 万GB(ギガバイト)のデータを収集する。しかし同社を中国共産党の財務総省及び中央宣伝部門が共同所有している。そのウェブサイトでは、“収集した膨大なデータは、中国共産党の軍事情報部門と宣伝部門に送られる”と告げている。これがまさに5Gの世界で我々が直面している問題である。中国共産党は狡猾だ。5G環境が整えば、人が外出すると、全ての機器(IoTデバイス)がその人のデータを収集し始める。人々の生活は便利になるが、あなたが誰で、何をしているのか、全てを中国共産党も知ることになる。

 これは中国共産党が、“世界の全てが見える目”を持つ事を意味する。現在アメリカ企業は5Gの業界基準設定機関に何の進言もしておらず、中国共産党が5Gの標準規格だけでなく、5Gの基礎特許技術も完全に支配している。だから、どの国の会社であろうと、3GPPのネットワークを構築すれば、中国のネットワークを構築することになる。中国共産党が成功すれば、武器を構えることもなく、楽々と全世界を占領してしまう。

 そうなった本当の原因は、欧米諸国が自国のインフラ、産業基盤、基礎科学研究、R&Dなどへの投資を停止したからだ。アメリカは再び“国民第一”になるだろう。

 「今、我々は皆、(この戦場の)最前線に立たされていて、正義の味方になるのか、中国共産党の味方になるのかを選択しなければならない」と、スポルティング氏は語った。

テレビ番組『チャイナ・アンセンサード(China Uncensored:無検閲の中国)』(英語):

(翻訳・常夏)