中国で公式が集中購買された薬の品質問題が相次いで発覚し、国民の不満が高まる中、中国国家医療保障局(国家医保局)が厳しい批判の的となっています。現在、薬の品質に関する議論がSNS上で激化し、多くの患者や医師から「麻酔薬が効かない」「下剤が効果を発揮しない」「抗生物質でアレルギー反応が出る」「降圧剤が血圧を下げない」といった深刻な問題が報告されています。

 近年、中国の医療関係者からジェネリック医薬品の安全性や有効性に対する疑問が相次いで寄せられており、公立病院で輸入された薬が排除されつつあることにも批判が集まっています。上海の著名な外科医は一部の麻酔薬が患者を眠らせる効果を発揮しないと指摘し、北京の心臓病専門医は集中購買された降圧薬が血圧を十分に下げられないと訴えています。また、大手オンライン健康プラットフォームの元編集者は、中国の製薬会社の一部が詐欺まがいの行為を行っていると非難しています。

 江蘇省人民病院の外科主任である白剣峰氏は、手術中に麻酔薬(筋弛緩剤)の品質問題を強く実感したと語っています。かつて腹腔鏡手術では1本の筋弛緩剤で全身麻酔が可能でしたが、現在は3本使用しても十分な効果が得られないことがあるそうです。しかし、3本は既に規定の最大投与量であり、それ以上の増量は不可能だということです。

 このように、現在使用されている集中購買の筋弛緩剤は、手術の安全性を脅かす要因となっているのです。

 2018年に導入された医薬品の集中購買制度は、競争入札を通じて薬の価格を大幅に引き下げました。中国政府の公式データによると、過去5年間で、集中購買制度により多くの医薬品の価格が半分以上下がり、政府は約4400億元(約9兆円)の医療費を削減できたとされています。しかし、価格の引き下げとともに、集中購買された薬の品質問題も次第に顕在化しています。

 上海瑞金病院の一般外科主任である鄭民華氏は、取材に対し、集中購買制度は薬価を抑えることに成功しましたが、極端な低価格では品質の安定性が損なわれる可能性があると指摘しています。彼の父親は長年高血圧の治療を受けていますが、集中購買の降圧剤に切り替えたところ、血圧が急上昇し、180mmHgに達したそうです。また、医薬品の流通に携わっていた薬剤師の陸青氏は、自由アジア放送(RFA)に対し、集中購買の初期段階ではまだ合理的でしたが、ここ1~2年、特にコロナ禍以降は「最安値至上主義」となり、価格だけを基準に決定されるようになったと語っています。製造コストや薬効、さらには企業の信頼性さえ考慮されず、単に最も安い入札者が選ばれる仕組みになってしまったということです。

 集中購買された薬の品質問題が相次ぐ中、国家医療保障局は厳しい批判に晒されています。多くの医療専門家は、現在の騒動は集中購買制度の長年の矛盾が一気に噴出した結果だと指摘しています。彼らは、政府が医薬品のコスト削減に過度に注力したことで、医薬品の品質問題が深刻化していると警鐘を鳴らしています。

 ボイス・オブ・アメリカは、厳しい情報統制が敷かれている中国で、このような公の場での批判が広がるのは極めて異例であり、政府の医療コスト削減政策に対する国民の不満が爆発した結果だと報じています。こうした世論の圧力を受ける中で、中国政府は医療保険制度の維持に奔走していますが、その財政は危機的状況に直面しています。特に、高齢化の進行により医療費の増大が避けられず、医療保険基金の資金不足が懸念されています。中国政府の公式発表によれば、集中購買の資金は主に国家医療保険基金(医保基金)から拠出されていますが、ここ数年(特にコロナ禍以降)、基金に深刻な不足が生じている可能性が指摘されています。

 陸青氏によると、資金不足の状況下で、集中購買制度の運用は「政治的な運動」のようになり、薬の品質が軽視されるようになったそうです。政府は薬の製造コストや企業の信頼性を考慮せず、単に「最も安い入札者」を選ぶだけになってしまったということです。大手製薬会社かどうか、オリジナルの新薬かどうかは問題ではなく、価格が最も安ければ採用されるという現状があるとのことです。

 こうした医薬品の品質問題は、国民の不満を招くだけでなく、医療界からも強い反発を受けています。先週、20人以上の医師が連名で提案を提出し、集中購買のリストに含まれていないオリジナル薬(原研薬)も患者が選択できるようにすることを求めました。北京朝陽病院の心臓内科主任である盧長林氏も、医師や患者が必ずしも集中購買された薬のみを使用しなければならない制度には反対しているとのことです。

 医薬品の集中購買制度は、本来、医療費の削減を目的として導入された制度でした。しかし、価格競争が激化する中で医薬品の品質や安全性に悪影響を及ぼすようになれば、その弊害は見過ごせません。

(翻訳・吉原木子)