中国経済の低迷が続く中、多くの国民が「消費の節約」を余儀なくされています。特に旧正月を前に、支出を抑える方法が中国のSNS「小紅書」で大きな話題となっています。同時に、経済環境の悪化が将来への不安をさらに助長し、消費意欲の低下に拍車をかけています。

 小紅書の統計によると、「節約」に関する投稿はすでに150万件を超え、累計閲覧数は1億3,000万回を突破しています。このデータからも、中国の消費者が節約志向を強めていることがうかがえます。

 中でも消費の落ち込みが顕著なのが、免税ショッピングの中心地である海南省です。海南省税関が1月初めに発表したデータによると、2024年の海南省へのショッピング目的の訪問者数は前年より15.9%減少し、675万6,000人から568万3,000人に減少しました。また、免税商品の売上総額も前年比29.3%減の309億4,000万元(約6,000億円)に落ち込んでいます。この数字からも、高額商品の購入に対する消費者の慎重姿勢が強まっていることがわかります。

 一方、SNS上では日常生活の中でいかに節約するかについての情報共有が活発に行われています。1月26日、小紅書のユーザー「泡芙泡泡(パフパフ)」が投稿した動画では、1週間のファストフードチェーンの割引情報が紹介されました。例えば、月曜日はマクドナルドの会員デー、火曜日はHEYTEA(喜茶)の配送料無料、水曜日はローソンで15元以上購入すると5元割引といった内容です。こうした投稿は大きな反響を呼び、コメント欄には「割引クーポンを活用する」「賞味期限が近い食品を購入する」「外食を減らす」などの節約術が多数寄せられました。

 SNSでの話題だけでなく、実際の生活でも消費の節約を実感する人が増えています。南部地方で店を営む陳さんは、「以前は大人もそれなりに消費していたが、今は子供にかかる費用を除いて、ほとんど何も買わない」と話します。「タバコとお茶くらいしか買わないが、それすらグレードを下げている。以前は芙蓉王(フーロン)を吸っていたが、今は牡丹(ムータン)に変えた」。市場価格を比較すると、芙蓉王(ソフトブルー)は1箱60元(約1,200円)ですが、牡丹(ソフトブルー)は35元(約700円)と、約半額の価格差があります。

 武漢市のタクシー運転手である方敏さんも、経済の低迷を肌で感じているといいます。彼によると、例年、新年の前にはタクシーの需要が急増し、1日の売上は少なくとも500~600元(約1万円~1万2,000円)に達していましたが、今年は400元(約8,000円)程度にとどまっています。さらに、「売上が200元(約4,000円)減ったということは、純利益が半減したということ」と語ります。客足の減少を補うため、ライドシェアアプリにも登録してみたものの、昨年と比べて予約数が大きく減っており、状況は厳しいままだといいます。

 こうした消費の縮小は、経済全体の先行き不安とも密接に関係しています。パンデミック後の経済回復が思うように進まず、多くの人々が将来に対して悲観的な見方を強めています。旧正月を迎えるにあたり、自由アジア放送(RFA)が中国各地の市民にインタビューを行ったところ、「新年に対する期待はほとんどない」「経済がさらに悪化するのではないか」といった声が多数聞かれました。

 中国西南部の省に住む女性は、新年の雰囲気が年々薄れていると感じているそうです。家族での食事会、新しい服を買うこと、花火を楽しむといった伝統的な活動はまだ続いているものの、全体的な消費が大幅に減少していると話しています。彼女は、経済状況がさらに悪化するのではないかと心配しており、そのため不要な支出をできるだけ減らしているそうです。

 東部地域に住む別の女性も同じような意見を持っています。今年の旧正月は家で餃子を作るだけで済ませる予定で、外出して消費することはほとんどないと話しています。家庭での支出もさらに慎重に計画しているとのことで、新しい年に対する期待はほとんど持てないと語っていました。また、経済環境がますます悪化していることから、2025年は2024年よりもさらに厳しい年になるかもしれないと述べています。

 このような経済不振に直面し、多くの人々が生活支出をより慎重に計画するようになっています。一方で、政府の経済政策に対する信頼も下がっている状況です。市民の多くは、「政府の政策は実際には何も改善をもたらしていない」と感じているそうです。

 中国政府が発表した2024年のGDP成長率は約5%となり、総額18兆ドル(約2,700兆円)に達したとされています。しかし、経済の成長構造には大きな偏りがあり、輸出や工業生産は堅調な一方で、個人消費は伸び悩んでいます。また、失業率の高さも依然として深刻な問題となっています。

 中国経済の成長は依然として輸出に大きく依存していますが、海外市場の不確実性が高まる中、この成長モデルが今後も維持できるかどうかは不透明です。2024年の中国の貿易総額は43兆8,500億元(約870兆円)で前年比5%の増加を記録しました。しかし、この輸出依存型の成長が2025年以降も続くかは不確定です。

 経済評論家の古春秋氏は、「トランプ大統領は現在のところ追加関税を発動していないが、中国の輸出環境は依然として不透明な状況にある」と指摘しています。もし米国が関税を引き上げた場合、中国の製造業はさらに厳しい状況に追い込まれる可能性があります。

 一方、中国政府は国内経済を支えるための政策を打ち出していますが、その重点は依然として産業投資やインフラ整備に向けられており、個人消費の活性化にはあまり力を入れていません。これにより、過剰生産のリスクが高まり、消費の冷え込みやデフレ圧力を加速させる可能性が指摘されています。

 中国経済は、成長の鈍化、消費の縮小、製造業の停滞、輸出の不安定化といった複数の要因によって厳しい状況に直面しています。国民の購買力は低下し、新年を前に「節約」が一般的な傾向となっている現状は、中国社会全体の経済的な不安が高まっていることを象徴しています。

(翻訳・吉原木子)