2024年、中国経済規模で第1位を誇る、広東省の地域総生産(GDP)は、前年比3.5%増にとどまり、2年連続で「約5%成長」という目標を達成できませんでした。1月25日、広東省統計局は2024年の経済運行概要を発表しました。それによると、広東省の地域総生産は、14兆1633億元(約268兆円)で、不変価格で前年比3.5%の増加となりました。分野別に見ると、第1次産業の付加価値額は、5837.03億元で前年比3.4%増、第2次産業は5兆4365.47億元で4.4%増、第3次産業は8兆1431.31億元で、2.8%増でした。この成長率は、広東省が設定していた成長目標には届かず、経済が直面する厳しい状況を映し出しています。
広東省は長年にわたり、中国経済の「安定の柱」とされてきました。1月15日、広東省省長の王偉中氏は、広東省の経済規模が、36年連続で全国第1位を維持していると述べましたが、同時に外部環境の変化による悪影響が、大きいことを指摘しました。広東省は輸出依存度が非常に高いため、世界経済の変動が、直接的に影響しやすい構造になっています。このため、外的な衝撃によって有効需要が不足し、一部の企業が経営困難に陥っています。不動産市場も依然として調整が続き、また新しい産業への転換が進む中で、移行期に伴う痛みも生じています。さらに、主要技術の多くが依然として、海外依存の状態であることも問題視されています。これらの課題は、広東省経済だけでなく、中国全体の経済に影響を与える可能性があります。
こうした厳しい状況は製造業にもはっきりと表れています。長らく「世界の工場」として、中国経済を支えてきた製造業ですが、近年では競争力の低下が顕著で、深刻な打撃を受けています。1月27日、中古電子基板を扱うあるネットユーザーが動画で、「なぜ私たちの受注はすべて海外に流れてしまったのか?私たちはかつての『世界の工場』に戻れるのか?中国ではますます多くの工場が倒産し、大量の労働者が職を失っている。中国の製造業は、本当に崩壊してしまうのだろうか?」と問いかけました。この動画は多くの人々の共感を呼び、幅広い議論が巻き起こりました。
その一方で、1月26日に別のネットーザーが投稿した動画では、揚州市江都区のあるオーダーメイド工場が倒産し、その名義で所有していた27ムー(約1.8ヘクタール)の工業用地や、7341平方メートルの建物が一括して、売却処分されたことが明らかにされました。また、金属プレス工場で働いていた労働者が、SNSで「この工場は本当に倒産した。数か月給料が支払われず、年末になっても清算されなかった。本当に運が悪い」と嘆く投稿をし、多くの同情を集めました。
こうした個別の事例は、中国国内の製造業全体が抱える、厳しい現状を反映しています。特に中小企業の経営危機が深刻で、多くの企業が資金繰りの問題で、存続の危機に立たされています。
また、2025年1月の製造業購買担当者指数(PMI)は、市場の期待を大きく裏切る形で、50を下回り、収縮を示しました。1月27日に中国国家統計局が発表したPMIは、49.1で、昨年8月以来の最低水準となりました。この数値は製造業が縮小していることを明確に示しており、中国の経済環境の厳しさが、浮き彫りになっています。これに先立つ2024年12月の財新製造業PMIも50.5で、外部環境の悪化や海外需要の減少が、中国製造業の回復を妨げていることが報じられていました。
製造業の危機は下流産業から、上流産業にも波及しています。石油化学業界では需要のピークアウトが見られ、2024年には供給過剰の問題が深刻化しました。中国国家統計局によると、2024年の原油輸入量は、前年比1.9%減、加工量も1.6%減と、いずれも20年以上ぶりの減少となりました。国有大手企業や地方企業の多くは、利益を出せず、破産に追い込まれるケースも相次いでいます。
さらに、太陽光発電業界でも競争が過熱し、供給過剰が問題となっています。2024年末までに、少なくとも26社が赤字決算を発表し、中には業界大手の隆基緑能のような企業も含まれます。一方で鉄鋼業界では価格の下落が続き、多くの工場が操業停止や、破産に追い込まれる事態となっています。
このような厳しい経済状況にもかかわらず、中国政府は依然として、「経済の明るい未来」を強調しています。習近平国家主席と、中国の宣伝部門を担当する蔡奇政治局常務委員は、2023年以来、「経済光明論」(中国経済の未来は明るいと見る論)を掲げ、経済に対する楽観的な宣伝を推進しています。しかし、政府が発表するデータと、一般市民が実感している経済状況の間には、大きな隔たりがあり、多くの疑問や批判を呼んでいます。中国国家統計局が2024年のGDP成長率を、5%と発表したものの、多くの専門家はこれを疑問視しており、実際の成長率はより低い可能性が高いとされています。
広東省の経済成長率の鈍化や製造業の危機、企業倒産の増加は、中国経済全体が直面する、深刻な問題を浮き彫りにしています。政府がいくら「明るい未来」を強調しても、実際の状況がその言葉に追いつかない現実が、ますます多くの人々に認識されつつあります。中国経済の将来は、今後も大きな不確実性を抱えたままであると言えるでしょう。
(翻訳・吉原木子)