中国経済は現在、1960年代の大飢饉以来最長となるデフレ局面に直面しており、人民元の下落や資本流出の懸念が深刻化しています。

 一方、トランプ大統領が新たに発動を検討している高関税政策が追い打ちをかける可能性があり、中国当局は国内外の経済的な試練に対して進退窮まっています。

 不動産危機による家庭資産の損失や企業の過剰生産能力も相まって、経済停滞の悪循環が深まっています。

中国、3年連続でデフレに直面

 ブルームバーグの報道によると、最新の調査で、シティグループやJPモルガン・チェースを含む主要なウォール街の銀行エコノミストたちは、中国がデフレスパイラルから抜け出せず、2024年が経済デフレに突入して2年目となり、それは2025年まで続く可能性が高いとされています。

 複数のアナリストは、中国が1960年代以来最長となる全体的な経済価格の下落期にあると指摘しています。しかし、この問題は昨年末の経済成長率のデータによって覆い隠されている可能性があると分析されています。

 2024年末時点で、名目GDP成長率と実質GDP成長率の差を示すGDPデフレーターは2年連続でマイナスを維持しています。この状況は、1990年代末のアジア金融危機時に記録されたものと並び、異例の事態となっています。

 ブルームバーグの調査によると、2025年のGDPデフレーターはマイナス0.2%になると予測されており、通貨デフレの状況が続く見通しです。2026年には0.9%まで回復し、デフレ局面は終息すると見られていますが、その水準はコロナの流行前と比較して依然として大きく低いままです。コロナ禍以前の10年間、中国のGDPデフレーターの平均値は3.4%を記録していました。

 GDPデフレーターはインフレーション状況を測定する指標であり、中国当局が1952年以来公表している公式データの一つです。2023年から2025年にかけて、GDPデフレーターが3年連続でマイナスを記録する見込みであり、これは1960年代初めの中国の大飢饉以来、物価が3年連続で下落した初めてのケースです。その大飢饉では数千万人の命が失われました。

 デフレーションとは、社会全体で大多数の商品価格が下落する現象を指します。一見すると、商品価格の下落は消費者にとって魅力的に映るかもしれませんが、多くの人々がさらに価格が下がると予想して購入を先送りする可能性があります。このような消費支出の減少は企業の収益を圧迫し、結果として企業は投資を削減し、給与を引き下げたり、従業員を解雇したり、最悪の場合には倒産に追い込まれることになります。

 収入の減少と失業率の上昇はさらに人々の購買力を低下させ、最終的には社会全体が悪循環に陥ることになります。

 JPモルガン・チェースのチーフ中国エコノミストである朱海斌氏は、「GDPデフレーターのマイナスや名目GDP成長率の低迷は、企業の利益低下や財政収入の減少を通じて経済に直接影響を及ぼし、さらには収入成長の鈍化を通じて間接的な影響ももたらす」と指摘しています。

 2024年末以降、習近平政権の厳しい規制により、中国国内の経済アナリストたちはデフレーションに関する議論をほとんど避けていますが、中国の債券市場では価格の継続的な下落への懸念がすでに表面化しています。債券利回りは歴史的な低水準にまで下がっています。

 また、新たに就任したトランプ米大統領が、中国に対して最大60%の関税を課すという公約を実行に移す可能性があります。アメリカとの貿易戦争が再開されれば、中国企業の商品輸出は阻まれ、国内での買い手を探さざるを得なくなります。この状況は、すでにデフレの苦境にある中国経済にとって大きな打撃となるでしょう。

習近平経済政策の失策

 中国がデフレの難局から抜け出せない主な原因は、不動産危機にあります。この危機により、中国の家庭が失った資産は推定18兆ドル(約2800兆円)に達するとされています。このような巨額の損失は、人々が消費よりも貯蓄を優先する傾向を助長しています。

 西側諸国の自由市場経済とは異なり、中国経済は中国共産党政権の管理下にあります。習近平政権は中国製造業の発展を重視し、多くの「新質生産力」産業に多額の補助金を投入しましたが、これが大量の過剰生産能力を生み出す結果となりました。

 中国経済には、利益が低い場合や赤字であっても、多くの企業が生産量や生産能力を維持し、さらには拡大するという構造的な特徴があります。このような国家補助に依存した経済政策は、中国国内での生産過剰と需要不足との間の持続的な不均衡を引き起こしています。その結果、工業生産の成長が小売販売の回復を上回る可能性があります。この状況は、製造業者間での激しい競争を招いています。

 中国経済の現状について、メイバンク(マラヤン・バンキング)のエコノミストは次のように述べています。「激しい価格競争を経験した業界では、今年、一部の弱い企業が市場から撤退する可能性がある。つまり、2025年に入ると、中国企業の倒産が避けられない」ということです。

人民元の為替問題、中国当局をジレンマに陥らせる

 中国経済が持続的なデフレに突入する中で、人民元の為替問題は中国当局をさらなる板挟みの状況に追い込んでいます。国内経済の不振に加え、新たなトランプ政権による関税措置への対応が求められる中、中国当局は有効な解決策を見いだせず、苦境に立たされています。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の1月15日の報道によれば、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から見ると人民元は本来元安になるべきですが、資本流出の影響で、中国当局が大幅な為替変動に警戒しています。

 中国人民銀行(中央銀行)は引き続き人民元を支え、政策を調整することで、中国企業が人民元を外貨に両替する需要を抑えようと試みています。

 中国当局が現在最も懸念しているのは、大規模な資本流出です。2015年、国内経済の低迷に対処するために人民元を対ドルで突然3%切り下げた結果、資本流出がさらに加速しました。

 2014年から2017年にかけて、中国の外貨準備高は約1兆米ドル(約156兆円)減少しました。その後、中国当局は資本規制を強化し、中国経済が安定に向かったことで、資本流出はようやく抑制されました。

 しかし、中国経済が低迷している中、人民元の為替レートを安定させるためには、北京は大規模な経済刺激策を講じるのが難しい状況です。同時に、資本規制も2015年以来最も厳しい試練に直面する可能性があります。このような状況で、国内経済の苦境とトランプ大統領による関税圧力を同時に受ける中、中国当局の対応は一層困難さを増しています。

 ブルームバーグのコラムニスト、任淑麗氏は、トランプ大統領が指名した財務長官ベッセント氏について言及し、ベッセント氏が1992年にイングランド銀行を打ち負かした実績を引き合いに出し、「現在でも中国人民銀行を揺さぶることができる」と述べています。ベッセント氏は積極的な債券発行手段を用いて、中国人民銀行を追い詰め、人民元の切り下げを余儀なくさせる可能性があると指摘しています。

 任氏はまた、中国のメディアが人民元の安定性を大々的に宣伝する一方で、中国国債の利回りが大幅に低下していることが、人民元が価値を保つための信頼できる手段ではないことを明確に示していると述べました。同氏が最近執筆した評論記事では、「人民元の切り下げはもはや選択肢ではなく、必然である」と結論付けています。

(翻訳・藍彧)