中国吉林省長春市にある企業が最近、給与の支払いに現金の代わりに「商品券」を使用し、しかもその商品券が自社系列の商業施設でのみ使用可能であることが明らかになり、従業員の不満を引き起こしています。
 ネットユーザーからは、「これは自分たちでお金を刷るつもりなのか?」と驚きの声が上がっています。

強制的な消費促進?企業が給与を商品券で支給
 吉林省長春市のあるネットユーザーが1月4日に動画を投稿し、自身が「摩天活力城(まてんかつりょくじょう)」という企業で働いているが、3か月間も給与が支払われず、最終的に会社から給与代わりに一束の商品券が渡されたと明かしました。
 動画に映る商品券は、見た目がまるで人民元のようで、額面も異なり、番号が印刷されています。また、券面には「重慶路・活力城モール」や「大衆置業」といった文字が記載されており、いずれも長春大衆卓越控股集団有限公司に属しているとのことです。
 中国の大手新聞紙「華商報」の報道によれば、「活力城モール」のスタッフは、これらの商品券がすでに商業施設内で利用可能になっていると認めました。しかし、釣り銭は出ないうえ、使用期限も設けられているとのことです。また、事情に詳しい関係者は、これらの商品券は企業内部で流通する専用のクーポンであると説明しています。
 ネットユーザーは次のようにコメントしています。

「もし給与が商品券で代替できるのなら、テンセントが給与を仮想通貨で支払うことも可能だということになる。それが現実になれば、さらに驚くべき事態になるだろう」
「この商品券で子どもの学費が払えるのか?水道代や電気代が払えるのか?住宅ローンが返済できるのか?」
「政府部門がこうした問題を見過ごしているとは思えない。内需拡大というのはこういう方法でやるのか?庶民の問題はこんな風に解決するのか?」
 著名な公益弁護士である趙良善氏は、メディアに対して次のように述べました。「『労働法』第50条には明確に記されている。給与は通貨形式で毎月労働者本人に支払わなければならず、給与を差し引いたり、理由なく支払わないことは禁止されている」
 また、『給与支払い暫定規定』第5条によれば、「給与は法定通貨形式で支払うべきであり、現物や有価証券など他の形式で支払うことはできない」と定められています。

給与支払いの手法が次々と変化
 中国経済の悪化に伴い、企業の業績が低迷する中、各地で賃金未払い事件が多発しています。現金の代わりに商品券を用いて従業員に給与を支給するというやり方は、今回が初めてではありません。
 2024年12月2日、河南省鄭州市にある企業が、従業員に給与の代わりにショッピングカードを配布し、使用日や場所を指定しました。一部の従業員は、額面が数十万元に及ぶショッピングカードを受け取ったものの、「毎月1日のみ使用可能」「一度に利用できる金額も制限されている」といった厳しい条件が付けられていました。
 中国当局はこうした違法行為を処罰するどころか、「使用可能な店舗を増やすべき」と推進し、ネットユーザーの間で大きな議論を引き起こしました。
 2025年1月6日、山東省立医院(グループ)魯東医院の職員がネット上で投稿し、病院側が給与の代わりに数十枚の検診カードを渡されたと訴えました。

 病院の職員は、「今年は検診の業務が伸び悩んでおり、病院全体が検診センターの業務を手伝っており、私たちは皆、売上だ」と述べました。
 ネットユーザーは「これらの企業が人民元の代用品を出すなんて、反乱を起こそうとしているのでは?」という驚きの声もあれば、「これは人民元の崩壊が近いことを示している。中国政府の統制力が弱まっている証拠だ」との見方も出ています。

人民元の崩壊が迫る?
 中国文化大学教授の陳松興氏は、これは中国の地方政府が深刻な債務危機に陥っているためであり、「中央政府は、迅速に大規模な財政措置を講じて地方政府に資金を移転し、地方が当面の支出を賄えるようにする必要がある。しかし、中国当局はジレンマに直面している。地方政府を救済すれば財政問題がさらに拡大し、救済しなければ地方政府が立ち行かなくなる。現在の状況は、中国当局にとって数十年来最も窮境な時期であり、財政面でも経済全体の景気面でもこれほど厳しい時期はなかった」と指摘しました。
 人民元について、米投資銀行ゴールドマン・サックスは1月6日、トランプ氏大統領が就任直後に、中国の全商品に20%の関税を直ちに課す見込みであり、これが2~3か月以内に正式に実施されるとしています。この関税が適用されれば、人民元は年内に1ドル7.5元まで下落する可能性があると予測されています。
 一方で、中国当局は人民元の元安を抑え、米国の関税による影響を相殺しようとしています。しかし、人民元の為替レートを制御するには外貨準備に依存する必要があります。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国中央銀行のデータに注目し、2024年の中国の外貨準備が急減し、その減少幅が外部予測の3倍に達していると報じました。この背景には、中国の公式データがしばしば大幅に改ざんされることが知られているものの、それを考慮しても人民元は大きな圧力に直面しており、中国当局が為替レートを完全に制御できるとは限らない状況が浮き彫りになっています。
 個人メディア「財経真相」は、人民元に影響を与えるもう一つの要因として、米国10年国債の利回り上昇を挙げています。米中間の国債利回りの差が過去最高の3%を記録しているため、理想的な状況では人民元は1ドル8.7元を下回るべきだと指摘しています。
 ただし、中国の中央銀行が人民元の暴落を放置することは考えにくいといいます。「財経真相」は、人民元が守られるかどうかの鍵は中国当局の中央銀行ではなく、ホワイトハウスとウォール街にあると述べています。これまでにも、米連邦準備制度理事会(FRB)とウォール街が重要な局面で介入し、その結果、人民元が急騰しています 。人民元の支えとなるのは、14億人の廉価な労働力が生産する商品であり、これらの商品が最終的に米国に輸出されるため、関税が人民元の為替レートを押し下げる大きな要因になっています。
 陳教授も、「人民元の為替レートは最終的に中国の経済力に依存する。もし輸出が中国経済を支える最後のエンジンだとすれば、そのエンジンが停止した場合、中国国内の投資が不調で、消費も振るわず、輸出もダメだという状況では、中国が経済衰退の運命から逃れるのはほとんど不可能だろう」と述べました。

中国で「最も危険な世代」が現れた?
 中国当局にとって最も深刻な課題は、経済衰退が引き起こす社会的不安、特に「何も持たない」若者たちの反発であるとされています。

 今年初めに陝西省蒲城県で発生したデモはその兆候の一つと見られています。
 最新のニュースによれば、蒲城県では別の省から特警(特殊部隊 )が派遣され、デモ参加者の半数が拘束され、各村の出入口が封鎖され、村民の出入りが禁止されていました。今回の抗議デモはひとまず収束したものの、その影響はなお続いています。 
 コラムニストの伍凡(ウー・ファン)氏はSNSで次のように述べています。「蒲城県の抗議デモに参加した人々の多くは若者であり、特に仕事を見つけられない若者たちだ。現在の経済環境下では、このような集団的な事件が今年ますます増えるだろう」
 別のネットユーザーは、中国のほぼすべての省・市が財政赤字に陥っており、状況は深刻化しているため、政府の資金繰りが途絶える可能性があると指摘しました。
 中国の株式市場、人民元の為替レート、不動産市場が全体的に崩壊の危機にある中、蒲城県での抗議が他地域へ波及すれば、2025年中に中国共産党政権の崩壊を招く可能性があるとの声も上がっています。

(翻訳・藍彧)