中国国内メディアの報道によると、習近平は今年1月6日に開催された中央規律検査委員会の会議で、改革の精神と厳格な基準で党を支配し、反腐敗闘争を新たな段階に引き上げると強調しました。この発言によって中国では新たな粛清の嵐が吹き荒れるのではないかと考えられています。発言の真意について、看中国記者は、オーストラリア在住の法学者で、中国共産党の内部情報に詳しい袁紅冰(えん・こうひょう)教授に話を伺いました。

「自己革命」で揺らぐ統治基盤

 袁紅冰氏は、中国共産党第二十回中央規律検査委員会の第四回会議における習近平の発言について、「厳しい姿勢を再び示し、いわゆる反腐敗闘争を続けると宣言せざるを得なかった」と述べました。その背景には、中国における腐敗の根本的な原因が、中国共産党の独裁体制そのものに由来するという事実があります。

 袁紅冰氏は指摘します。「習近平は、いわゆる反腐敗闘争を10年以上続けてきたが、腐敗は根絶されていない。それどころか、腐敗は中国共産党の独裁体制そのものに深く根差している。腐敗と専制独裁政治は共存するものであり、この体制が続く限り、腐敗はなくならないだろう。習近平が今回『自己革命』という言葉を持ち出して再び反腐敗を強調したのは、これまでの努力が失敗に終わり、特に自身に忠誠を誓う官僚集団を作り上げる試みが失敗したことを意味している」。

 袁紅冰氏によれば、習近平は現在、非常に危険で差し迫った政治的危機に直面しています。「習近平は現代のハイテク技術で武装された秘密警察組織を用いて統治をしている。習近平は依然として中国共産党官僚に対する生殺与奪の権力を握っているが、第二十回党大会以降、習近平に対する反発が多く発生しており、中国共産党の数千万人の官僚の中で、多くの者が面従腹背(めんじゅうふくはい)の状態であることが明らかになった。つまり、表向きは習近平を称賛していながら、内心では強い不満を抱えているのだ。これが習近平を極めて危険な政治危機に追い込んでいる。」

 さらに袁紅冰教授は、「自己革命」の名のもとに、習近平が自身に忠誠を誓わない官僚を見つけ出し、新たな大粛清を行う恐れがあると予測しています。袁紅冰氏は、「中国共産党の官僚は、暴力的な統治を行う基盤だ。習近平が進める『自己革命』は、実際には彼自身の個人独裁を実現するためのものであり、結果的に中国共産党の統治基盤を相当程度破壊することになるだろう。この行動は、まさに『毒を飲んで渇きを癒やす』ようなものであり、さらに大きな混乱を引き起こすだろう」と分析しました。

トランプ氏に勝つ戦略

 中国共産党内部の情報筋によると、2024年12月に開催された中国共産党政治局の拡大会議で、習近平は重要な演説を行いました。「偉大な闘争を用いて、トランプ旋風が引き起こす激しい挑戦に打ち勝つ」という題名のこの演説は、中国の地方都市のトップや軍の旅団長クラスにまで伝達され、共産党全体で戦略的な共通認識を形成する目的があるとされています。

 袁紅冰教授によると、習近平は演説の中で、「来たるべき激しい挑戦を乗り越えた後、再び偉大になるのはアメリカでもトランプでもなく、中国共産党とこの私だ」と明言しました。この発言は、党内での結束を呼びかけると同時に、対外的な強硬姿勢を示すものと考えられています。

反対派官僚を粛清する「伝家の宝刀」

 習近平は、トランプ旋風の挑戦に打ち勝つ鍵として、「中国共産党自身の仕事をしっかりと行うこと」を強調しました。この「仕事」には外交分野での取り組みが含まれており、具体的には欧米諸国や日韓、英米、米豪の関係を分断することが含まれています。また、中国共産党が主導するBRICSや上海協力機構(SCO)を活用し、南半球の諸国との経済、政治、外交、軍事、文化交流を強化する方針を掲げています。

 さらに、党内での「自己革命」を徹底することも、「中国共産党自身の仕事」として求められています。習近平は演説の中で、腐敗官僚の粛清、特に「政治的に忠誠ではない官僚」の排除を最重要課題として迅速に進めるよう共産党組織に指示しました。

 共産党内部の情報筋によると、習近平は今回の演説で、「政治的に忠誠ではない」という新たな概念を明確に打ち出し、党内粛清の主要任務と位置付けました。この動きは、2027年に予定されている中国共産党第二十一回党大会での再任を狙う習近平が、党内での反発を大きな脅威として捉えていることを如実に示しています。

 習近平は、新たな血なまぐさい党内粛清を通じて、自身の独裁体制をさらに強化しようとしています。現在、中国社会で最も裕福な階層とされる共産党官僚の中には、数億円から数十億円相当の財産を所有する者が数多く存在しています。そのため、官僚を粛清することは、忠誠心に欠けた者を排除して政治的リスクを防ぐだけでなく、習近平の統治下で深刻化する経済危機の緩和にも寄与するとされています。

 このように、政治的に忠誠ではない官僚の粛清は、習近平にとって権力基盤を安定させるための「伝家の宝刀」として機能しているのです。

台湾問題と習近平の再任

 袁紅冰氏によると、習近平は演説の中で、台湾は「中国共産党の核心的利益の核心」であると再度強調しました。中国共産党内部の情報筋によれば、習近平が台湾問題を強調する背景には、台湾侵攻を通じて自身の党内での威信を回復し、2027年の第二十一回党大会で再任を果たすための交渉材料にしたいという思惑が隠されているとのことです。

 これについて袁紅冰氏は、「習近平は、2027年の第二十一回党大会で再任し、任期制限を撤廃する自身の思惑を、台湾侵略作戦と結びつけている」と指摘しました。そして、「台湾を守る戦いは、中国共産党の権威主義的な拡張戦略と自由及び民主主義との戦いだ。台湾を防衛することは、国際社会が習近平の独裁者としての意志を挫き、世界の平和と安全に対する脅威を防ぐことができるかどうかを試す重要な指標にもなる」と話しました。

 袁紅冰氏は最後に、「トランプ大統領が掲げた『アメリカを再び偉大に』という理念と、中国共産党の拡張戦略は根本的に矛盾しており、衝突は避けられない。この二つの政策は、戦略的な観点から見ても、大規模な対立や戦争に発展する可能性がある」と警鐘を鳴らしました。 

(翻訳・唐木 衛)