2024年5月1日未明、広東省梅州市の梅大高速道路の茶陽区間で深刻な路面陥没事故が発生しました。公式発表によると、この陥没により52人が死亡、30人が負傷し、23台の車両が落下しました。今年1月22日、当局は省レベルの調査報告を発表し、この事故を「陥没災害」と定義し、「長期間の持続的な降雨と複数の要因が重なった結果」と結論付けられました。しかし、この結論は、世論の疑念を払拭するどころか、さらなる論争と反発を引き起こしました。
広東省政府が発表した調査報告によると、この陥没は梅大高速道路で発生しました。事故が起きたのは未明の1時57分で、路面が滑りやすく、視界が悪い中、交通量が通常を大幅に上回っていました。報告によれば、この区間は「逆三角形」の谷間地形にある斜面路堤で、長期間の降雨が地下水位の上昇を引き起こし、浸透圧、浮力、滑動圧が継続的に蓄積された結果、路堤の底部が軟化し、せん断強度が大幅に低下して大規模な陥没を引き起こしたとされています。
一方で、調査報告は、工事の調査、設計、施工、監理、そして検収といった各段階における明らかな問題点も指摘しており、これらが路堤の災害耐性を直接的に弱めたとしています。それにもかかわらず、最終的な結論として、今回の事故の主因を「天災」とし、「人災」ではないとしたことで、社会的な批判が高まりました。
実際、事故発生翌日の5月2日、新華社通信はこの出来事を「陥没災害」と迅速に報じ、人的要因の可能性については一切触れませんでした。同日、習近平国家主席は「重要指示」を発表し、救援活動の強化と「社会の安定維持」を強調しました。このような迅速な災害認定は、世間に疑念を抱かせるとともに、事故調査の公正性についての懸念を引き起こしました。一部のネットユーザーは、十分な調査が行われないうちに「天災」として片付けられたのではないかと疑問を呈しています。さらに、陥没した区間には鉄筋コンクリートの護岸構造が不足しているとの指摘もあり、設計や施工に重大な欠陥があった可能性が指摘されています。多くのコメントが「典型的な手抜き工事だ」と批判し、関連責任者の徹底的な調査を求めました。
専門家の意見は、世論の不満をさらに高めました。アメリカの橋梁設計のエンジニアである竹学葉氏は、事故に関する情報を分析した結果、この陥没は自然災害ではなく、深刻な工事品質の問題であると断言しました。同氏は、通常の基準に従って建設された高速道路の護岸が、大雨の影響でこのような大規模な陥没を起こすことはあり得ないと指摘しました。竹氏によれば、施工過程で技術基準が遵守され、路基が層状に圧縮され、十分な支え構造が施されていれば、極端な降雨でも耐えられるはずです。しかし、中国では近年、インフラ建設において手抜きや多重下請けが横行しており、これが今回の事故で明らかになったと述べました。同氏はまた、梅大高速の陥没は単なる工事問題ではなく、中国のインフラシステム全体の積年の問題が表面化したものだと指摘しました。
中国のインフラ建設は近年、規模と速度の両面で世界的に注目されています。高速道路の総延長はすでに世界一となっていますが、この急速な発展の裏側には多くの品質問題が潜んでいます。今回の梅大高速陥没事故は、単一プロジェクトの失敗ではなく、インフラシステム全体に存在する構造的な欠陥を浮き彫りにしました。プロジェクトの承認から施工監督、そして竣工検査に至るまで、すべての段階で管理不行き届きや腐敗が原因となるリスクが存在します。特に土砂工事は利益率が高いため、不正行為が起きやすい部分とされています。護岸工事のような目に見えない部分は、表面からは問題が分かりづらいため、手抜き工事が横行しやすいのです。
公式のデータによれば、今回の陥没区間は長さ約17.9メートル、総面積は184.3平方メートルに達しました。竹氏は、このような陥没は施工中に必要な補強措置が欠如していたためと結論づけました。また、中国では近年、住宅、橋梁、高速鉄道などのインフラが完成直後に亀裂や漏水などの問題を露呈する例が多発しており、今回の事故もその一環だと指摘しました。
さらに、事故の公式発表における「災害」と「事故」の表現の使い分けも議論を呼びました。中国の基準では、30人以上の死亡者または1億元以上の経済損失をもたらした事案は「特大事故」と定義されます。しかし、今回の公式報告では一貫して「事故」という言葉を避け、「災害」と表現されています。この言葉の選択は、責任追及を回避する意図があるのではないかと批判されました。一部のネットユーザーは、「人災を天災として片付けるな」と厳しく非難し、「千年を超える歴史を持つ趙州橋がいまだ健在であるのに、現代の高速道路がこれほどもろいのはなぜか」と疑問を呈しました。
梅大高速陥没事故は、単なる悲劇ではなく、インフラ管理体制の欠陥を浮き彫りにしました。これを契機に、中国はインフラ建設の「量から質への転換」を真剣に考えるべきです。プロジェクト全体を通じて、より透明性の高い監査システムと、市民による監視メカニズムの導入が必要です。また、施工の過程で発生する多重下請けや不正行為を根絶し、日常的な保守点検を強化することで、問題を未然に防ぐ取り組みが求められます。
しかし、これらの変革を実現するには多大な努力が必要です。事故後、広東省政府は複数の施工企業や32名の公務員を処分しましたが、こうした「対症療法的な対応」が本質的な問題を解決できるかどうかは未知数です。多くの人々が懸念するのは、このような処分が末端責任者にとどまり、より深い制度的問題には触れられないのではないかという点です。
梅大高速陥没事故は、社会全体が安全と信頼を再構築するための警鐘です。事故の真相を透明にし、公正な対応を行うことが、犠牲者への最大の敬意であり、社会の信頼を取り戻す鍵となります。これからのインフラ建設において、高い基準と厳格な管理体制を確立することで、同様の悲劇を防ぐことが求められます。
(翻訳・吉原木子)