近年、中国の医療業界では、中国産医薬品の効果に対する疑問が広く提起されています。特に、薬品集中購買政策が実施されて以降、「血圧が下がらない」「麻酔が効かない」「下剤が効かない」といった問題が頻発し、患者を困惑させるだけでなく、臨床現場の医師たちも苦悩しています。この問題は地方両会(地方各級人民代表大会と中国人民政治協商会議を総称したもの)でも議論の焦点となり、医療関係者や患者の間で医薬品の品質に対する懸念が高まる一方です。また、政策の本来の目的と実際の運用との間にある矛盾も、多くの注目を集めています。
今年の上海の「両会」では、政治協商会議(CPPCC)の委員である鄭民華氏を含む20人の委員が共同で提案を提出し、集中購買薬品の効果が安定していないことを指摘しました。この提案では、集中購買政策が低価格で薬品を提供し、医薬品の利用可能性を高めることを目指している一方で、実際の運用において多くの問題が顕在化しているとされています。鄭民華教授は、集中購買薬品は価格の安さを追求するあまり、品質が保証されていないと述べています。その結果、医師は患者からの「効果がない」という訴えに対して適切に対応できず、非常に難しい状況に置かれているといいます。病院で提供される薬品の種類が集中購買政策に制限されているため、医師が患者にとって最適な薬を自由に選択できない現状も指摘されています。
北京市の「両会」でも、北京市政治協商会議の委員である盧長林氏が同様の懸念を表明しました。彼は、集中購買薬品と輸入薬、先発医薬品との間には顕著な効果の差が存在していると指摘しています。その差は、単に治療効果の不足だけでなく、副作用の増加としても現れています。例えば、ある臨床研究では、中国産の経口抗凝薬を輸入薬と同じ用量で使用した場合、効果が劣るだけでなく、脳卒中や肺塞栓が発生する患者の割合が明らかに高いことが示されました。また、一部の集中購買薬品は製造過程で不純物が多く含まれているため、アレルギー反応などの副作用を引き起こしやすい状況にあるとも報告されています。
中国産薬品の品質問題は臨床現場だけでなく、教育分野の科学実験にも影響を及ぼしています。北京の著名な中学校で化学を教える曹葵教師は、自身の経験を共有しました。彼によれば、高校の化学実験でアスピリン腸溶錠を用いてアセチルサリチル酸の反応を検出する実験がありますが、輸入ブランドのアスピリンから中国産ブランドに切り替えたところ、実験結果に大きな違いが見られたといいます。具体的には、中国産薬品では加水分解する前から溶液が変色してしまい、加水分解前後の比較実験が不可能になったとのことです。曹教師が複数のブランドをテストした結果、中国産薬品には輸入薬品に比べて遊離サリチル酸の含有量が多いことが判明しました。これは、中国産薬品の製造工程が輸入薬品に比べて劣っていることを示唆しています。
中国の薬品集中購買政策は2019年に導入され、「大量購入による価格引き下げ」を目指す仕組みで、患者の経済的負担を軽減することを目的としていました。しかし、政策実施から6年が経過する中で、薬価は大幅に下がったものの、薬品効果に関する問題が次第に顕在化してきました。統計によると、集中購買の対象となった薬品の大部分は中国産のジェネリック薬であり、輸入薬や先発医薬品の割合はわずか5%未満にまで減少しています。この結果、先発医薬品が市場から姿を消し、多くの患者が安価な中国産薬品を選ばざるを得ない状況に陥っていますが、これらの薬品の効果は期待を大きく下回ることが多いのが現状です。
実際、マイコプラズマ肺炎にかかった子どもの親は、自身の体験を次のように語っています。輸入アジスロマイシン注射液を購入できず、仕方なく中国産薬品を使用したものの、子どもの高熱は一向に下がらず、最終的には輸入薬に切り替えざるを得ませんでした。このようなエピソードはインターネット上で広く議論され、多くの患者や医師が中国産薬品の効果に対して強い疑問を抱いていることが浮き彫りになりました。
さらに、三甲病院(中国の上級医療機関)の麻酔科医師によれば、中国産麻酔薬は先発医薬品と比較して効果が劣り、これは国内外の製薬技術の差や一部の製薬企業が品質管理を軽視していることに起因すると考えられます。同じ用量で使用しても、中国産麻酔薬では十分な効果が得られず、手術中に麻酔が効かないリスクを増加させるケースがあるとのことです。このような問題は、手術の安全性を損なうだけでなく、医師と患者の信頼関係にも悪影響を及ぼしています。
こうした問題はネットユーザーの間でも大きな話題となっています。ある患者は「中国産薬は価格が安いが、副作用や効果の面で差が大きい」とコメントしました。また、別のユーザーは「集中購買の薬は胃で溶けてしまい、腸溶錠としての役割を果たさず、胃に負担をかける」と批判しています。「低価格を追求する政策は品質を犠牲にしており、その代償を患者が払わされる」という声も少なくありません。
さらに、薬品集中購買政策は製薬企業や市場構造にも大きな影響を与えています。輸入薬が徐々に市場から姿を消す中で、患者や医師の選択肢はますます限られています。希少疾患や複雑な病状を持つ患者にとっては、薬品供給の困難がさらに深刻化しており、一部の特効薬や輸入薬は保険適用外となったため、患者は自費で購入せざるを得ない状況です。
これに対し、上海市の政治協商会議委員らは、医師の薬品選択権を拡大し、特定の患者が先発医薬品を利用できる特別なルートを設けるなど、いくつかの具体的な改善提案を行いました。これらの提案は広く支持されていますが、政策の調整と実行が急務であることは明らかです。
集中購買政策は薬価の引き下げという点で一定の成果を上げましたが、コスト管理と効果保証のバランスをどう取るかは、中国の医薬品業界にとって重要な課題となっています。今後、関連部門は薬品品質の監督、保険政策の最適化、業界発展の方向性についてさらに詳細な計画を立てる必要があります。患者、医師、政策立案者、製薬企業が連携し、医薬品の品質と効果を向上させる解決策を見つけることが求められています。
(翻訳・吉原木子)