中国国家統計局は17日、2024年の国内総生産(GDP)の成長率が5%に達し、総額が初めて130兆元を突破したと発表しました。しかし、この数値は国民が実際に感じている経済低迷や生活の困窮とは大きくかけ離れており、多くの疑問や皮肉を呼び起こしました。一部の人々は公式データを「白々しい嘘」と批判し、国内外のSNSではこれをめぐる批判的なコメントが相次ぎました。

 中国の公式メディアによると、国家統計局長の康義氏は記者会見で、中国経済の規模は引き続き世界第2位を維持し、5%という成長率は主要経済大国の中でも上位に位置すると主張しました。また、中国は世界経済成長への貢献率が約30%であり、世界経済の成長を牽引する最大の原動力であるとも述べました。しかし、こうした楽観的な発言に対し、国民の間では疑念が広がっています。厳しい検閲下にある微博(ウェイボー)上でも、「現実感が全くない。ただの数字にすぎない。10%成長と言われても反論できないよ」と皮肉るコメントや、「私の周りは貧しいまま」といった声が多数投稿されています。

 さらに、「気温と体感温度の差みたいなもの」「昨年目標を設定した時点で、今年5%になるのはわかっていた」など、公式データの信ぴょう性を揶揄する声も上がっています。中には「各種指標の成長率がすべて5%未満なのに、どうやってGDPが5%成長するのか?」といった具体的な疑問を投げかける人もいます。

 こうした疑問や批判は中国国内だけでなく、海外のSNSプラットフォーム「X」でも議論が巻き起こっています。「統計局は宣伝部門そのものだ」「これが目標達成型統計法だ」「どうせ来年になったらこっそり修正される。今は適当に発表しているだけ」などの辛辣なコメントが相次ぎました。あるネットユーザーは「習近平が5%と言えば、必ず5%になる仕組みだ」と指摘し、別のネットユーザーは「本当の経済成長率はマイナスだろう」と断じています。さらに、「統計データは好き勝手に飾られる小娘みたいなものだ」とまで皮肉を込めた発言も見られました。

 過去1年間、中国経済は低迷を続け、政府の景気刺激策も効果を上げられず、失業率が高止まりし、消費は大きく落ち込みました。多くのネットユーザーは動画を通じて市場の停滞や生活の厳しさを記録し、共有しています。あるネットユーザーは「今年6月から仕事がない。生活費はとにかく節約しているし、何万円も病院代に消えた」と語り、別のネットユーザーは「煙草を吸わなかった私が、今日は一箱買った」と皮肉を込めて投稿しました。さらに、労働者が日常生活で苦労している様子を映した動画も増え、こうした現実は「盛況」を強調する公式データとの矛盾をさらに際立たせています。

 イギリスのフィナンシャル・タイムズも中国経済の現状について報じ、中国の不動産市場が深刻な低迷に直面していると指摘しました。多くの中国国民にとって、公式に発表された華やかな数字は現実の生活と大きなギャップがあります。北京市のライドシェア運転手は「普通の人として言えるのは、生活していくのに十分なお金を稼げればそれで十分。成長とか発展なんて考えられない」と語りました。

 北京で広告・デザイン会社を経営する男性も「成長の源がどこにあるのかわからない。政府が言いたいように言っているだけだ」とコメントしています。「2024年は会社を経営して20年以上で最も厳しい年だった」とも語りました。こうした意見は、特定の職種や地域に限らず、全国的なトレンドとして広がっていると言えるでしょう。

 公式の発表に対して、経済学者や専門機関からはデータの信ぴょう性について厳しい疑問が投げかけられています。台北の中華経済研究院の研究所所長、劉孟俊氏は、多くの経済データが現実と矛盾していると指摘しました。劉氏によれば、中国は人口の急速な高齢化、不動産投資の長期低迷、16~24歳の若者の高い失業率という課題を抱えています。失業率が20%から16%に下がったといえども、消費の主力層である若者の失業が続く中で、どのようにして消費が逆風の中で増加したのか説明がつきません。また、2024年の生産者物価指数(PPI)は前年同期比で2.2%減少し、消費者物価指数(CPI)はゼロ成長に近い数値でした。これらのデータは内需の弱さを示しているにもかかわらず、公式報告には反映されていません。

 イギリスのオックスフォード大学中国センターの研究員ジョージ・マグナス氏も、中国政府の経済データを「虚構」と批判しました。同氏は、中国政府が毎年非現実的なGDP成長目標を設定し、それを達成したと発表することが慣例化していると指摘しました。また、5%成長の経済体であれば本来、大規模な金融・財政刺激策を必要としないはずですが、中国政府はここ数年、繰り返し景気刺激策を打ち出しています。この矛盾がデータの信頼性を低下させていると述べました。

 2024年12月、中国の著名な経済学者である高善文氏はフォーラムで、中国の実際の経済成長率は2%程度にとどまっている可能性が高いと発言しました。同氏によれば、過去3年間でGDP成長率は累計で10ポイント過大評価されている可能性があり、これを修正すれば中国は「比較的正常な国」になるだろうと指摘しました。しかし、この発言は当局の怒りを買い、高氏に対する調査が行われたと報じられています。

 中国政府が発表する華やかな数字は現実の課題を覆い隠すものにすぎないとの批判が高まっています。雇用、収入、内需の問題が解決されない限り、GDP成長率の数字は単なる政治的演出と化す恐れがあります。特に地方都市や農村地域における経済格差の拡大が懸念されており、こうした課題への具体的な対応が求められています。

(翻訳・吉原木子)