中国経済は今、かつてない危機に直面しています。最新のデータによると、2024年11月、中国からの資金流出規模は記録的な457億ドル(約7.2兆円)に達し、過去最大の単月赤字を記録しました。
専門家たちは、人民元の大幅な下落と資金流出のピークが2025年に訪れる可能性があると警告しています。外国資本の撤退が加速する中、人民元の価値がいかに保たれるのか、疑問の声が広がっています。中国当局が経済成長の柱としてきた不動産や輸出産業の崩壊が顕著になる中、専門家たちは2025年を「借金で凌ぐ年」と位置付け、危機感を募らせています。
中国国内で加速する資金流出
独立系テレビプロデューサーの李軍(リー・ジュン)氏は、新唐人テレビのインタビュー番組「菁英論壇(エリートフォーラム)」で次のように述べました。「中国の公式データによると、2024年11月に中国資本市場から流出した資金は過去最高の457億ドルに達した。中国外為管理局が発表したデータでは、同月のクロスボーダー投資収入は1889億ドル(約29.7兆円)、支出は2346億ドル(約36.9兆円)で、その結果457億ドルの赤字が生じた。これは史上最大の単月赤字だ。過去20~30年間、この数値は常に黒字を維持していた。2022年初頭にコロナのパンデミックが終息した直後でさえ、この黒字額は1000億ドル(約15.7兆円)に達していた。しかし2022年末には急落し、200億ドル(約3.15兆円)前後にまで減少した。2024年10月には赤字が258億ドル(約4兆円)に達し、11月にはさらに拡大して457億ドルに上った」
元中国建設銀行投資銀行部総裁の翟山鷹(ザイ・サンイン)氏は、「菁英論壇」番組で次のように述べました。「現在起きている資金の大規模な流出は、まだ序章に過ぎない。ここ1、2か月の資金流出は、先見の明がある一部の人々が行動を起こしたにすぎない。2025年には資金流出がピークに達する可能性が高く、2026年になっても資本流出の可能性があるかどうかはわからない」
「2024年10月から2025年の旧正月直前まで、例年の状況からすれば外貨準備高が急騰する時期になるはずだ。しかし、2024年の外貨赤字の規模がすでにひどい状態にある。このままでは、旧正月後に状況がどれほど深刻化するか想像もつかない」
翟氏は、今後人民元の為替レートが大幅に下落し、その規模は私たちの想像を超えるものになるだろうと述べました。その理由について、次のように説明しています。「仮に中国に10億人の人口がいるとして、そのうちの1億人が1人当たり1万米ドルの外貨割当額を利用して外貨を両替すれば、その総額は1兆米ドルに達することになる」
「今なぜ外貨を両替する人が少ないのか?それは、「多くの中国人がまだ何らかの最終的な希望を抱いているからである。しかし、もし人民元安が避けられない大きなトレンドだと認識された場合、全国民が外貨両替に走ることになる。その時には、外貨は水のように大量に海外に流出するだろう」
外国資本は中国から撤退する見通し
ベテランのメディア人である郭君(カク・クン)氏は、「菁英論壇」で次のように述べました。「2024年12月、グローバル資本にとって非常に象徴的な出来事が起きた。それは、中国の人民元建て30年国債の利回りが、日本の30年国債の利回りを下回ったことである。これは非常に重要な象徴的意義を持つ。これは何を意味するのか?中国の30年国債は今や世界の主要経済国の中で最も利回りが低く、かつリスクが最も高い。投資するなら、同じリスク水準で投資先を選ぶならば、当然、より高い利回りの場所を選ぶだろう」
「中国に投資されている外国投資資本の規模は現在約2.5兆米ドル(約394兆円)で、その多くが中国国債に投じられている。これらの資金は間違いなく中国から引き揚げられるだろう。その理由は簡単だ。米国への投資の利回りは中国のほぼ2倍であり、しかも米国国債は非常に安定しているため、間違いなく中国を離れる」
「中国が現在の為替相場のトレンドをコントロールできているのは、表面上はまだ大量の外貨準備を保有しているからだ。しかし、中国経済がさらに悪化し、特に外資の大量引き揚げが続けば、米ドルに対して人民元安になる可能性は非常に高い」
中国外貨準備高の実態
翟山鷹氏は、「中国の輸出入企業は、年末になると会社が保有する米ドルを人民元に両替する必要がある。つまり、米ドルを国に引き渡さなければならない。中国では、あらゆる外貨は国家の所有物とされている」と述べ、中国の外貨準備高に関する一般的な認識について、「多くの人は、中国政府が膨大な外貨準備高を持っていると思っているが、これは誤解である。外貨準備高とは外貨の総資産を指すが、外貨負債を考慮に入れると状況は全く異なる」と指摘しました。
翟氏によれば、2023年末時点で中国の外貨総資産は3.2兆米ドル(約500兆円)に達している一方で、外貨負債総額は約2.4兆米ドル(約378兆円)に上るといいます。総資産から総負債を差し引くと、外貨純資産はわずか7000億米ドル強(約110兆円)に過ぎません。2024年11月だけで外貨純資産は457億米ドル減少しており、これは小さな数字ではありません。
また、中国の外貨準備高について、公式には米ドル換算で計算された外貨総額とされており、その中には米ドル以外にもロシアのルーブル、ベトナムのドン、タイバーツなどの通貨が含まれています。中国当局によれば、米ドルは外貨準備全体の約60%を占めています。
中国当局の発表では、2024年5月末時点の外貨準備高は3.2兆米ドル(約500兆円)ですが、そのうち実際の米ドル保有額は1.92兆米ドル(約302兆円)に過ぎません。一方で、外貨負債は2.4兆米ドル(約378兆円)に達しており、結果として米ドルの純資産はマイナスになっているのです。
人民元の価値はどこにあるのか?
翟氏は、主権国家の通貨の価値は、その国自身の経済状況と密接に関連していると述べました。「昨年10月、11月に中国当局が行った一連の関連会議、特に2024年の中央経済工作会議が終了したばかりだが、そこで非常に悪いシグナルが発せられた。しかし現在、市場ではこの点に触れる人がほとんどいない。そのシグナルとは、中国が主要な収益を担える核心産業を持たなくなったということである。現状を見れば、不動産や対外貿易の輸出が急速に崩壊しているのが分かる」
「中央経済工作会議の報告書全体を通読すると、2025年の中国政府は借金をすることでしか生き残れないことが明らかである。2024年の中国の財政収入は約20兆元(約430兆円)、財政支出は約40兆元(約860兆円)である。その財政支出の内訳を見ると、10兆元(約10兆円)が地方債の発行、11兆元(約236兆円)が国債の発行に充てられている。つまり、中国政府は借金によって2024年を何とか乗り切ったのである」
「ある国が全世界に対して『私は借金をしないと生きていけない。収入源はもう何もない』と明言した場合、その国の通貨価値は一体どこにあるのだろうか?」
(翻訳・藍彧)