中国経済の低迷が続く中、一線都市では賃金削減やリストラがますます深刻化し、多くの人が故郷に帰ることを「最後の逃げ道」として考えるようになっています。しかし、今やその逃げ道も厳しい状況に置かれており、小都市や県城(県庁所在地)でも賃金の崩壊が始まり、公務員として働く若者たちの生活にも大きな負担がかかっています。

 あるネットユーザーによれば、南部の県城では月給がすでに3000元を下回り、驚くことに体制内(公務員や関連職)の友人の中には月給2000元程度しかない人もいるとのことです。さらに昨年のボーナスは支給されず、一部では過去の支給分のボーナスを「返還」するよう求められるケースも出ています。

 「安定した公務員の職」と言われる立場でありながらも、彼らは決して安泰な生活を送れていません。公務員の仕事は激務であり、残業は常態化しており、夜10時過ぎまで働くことも日常茶飯事です。若い世代は大量の書類作成を任され、古参の同僚たちから雑用や重労働を押し付けられることも少なくありません。さらに、小都市では仕事を変えようとしても簡単にはいかず、上司同士のしがらみや人間関係が転職を難しくしています。

 このネットユーザーは、高校や中学時代の友人たちが「大都市は生活のプレッシャーが大きい」として帰郷を選んだものの、実際には小都市での生活が大都市よりも厳しい状況にあると指摘しています。大都市では仕事の選択肢が多く、転職に他人の顔色を伺う必要もありません。しかし、小都市では賃金が低い一方で物価は決して安くなく、若者たちの消費意欲やライフスタイルは変わらないため、低収入・高支出の現実が生活を圧迫しています。その結果、体面を保つ生活を送るためには、大都市以上の努力が必要になっています。

 別のネットユーザーは動画で、小都市の生活費の高さについて述べています。「小都市の月給は2000〜3000元程度で、1日あたり約100元、1時間あたり約11元です。しかし物価は一線都市と大差なく、ミルクティーは1杯十数元、麺1杯も十数元、住宅価格は1平方メートルあたり5000〜6000元です。1年間節約しても、車を買うことすらできません。」

 さらに、別のユーザーは「小都市の生活のプレッシャーも大都市と変わらない」と語り、今の中国経済の低迷を背景に多くの店舗が閉店している現実を紹介しています。

 澎湃新聞の報道によると、近年、山西省、甘粛省、内モンゴル自治区、安徽省、青海省、湖南省などで人口の少ない小都市における行政機関改革が進んでいます。一部の行政機関や事業単位は大幅に縮小され、統廃合が行われた結果、千人以上の人員が削減される地域も出ています。この改革の最も直接的な目的は、行政コストと財政負担の軽減です。

 2020年4月、山西省は人口20万人未満の小都市を対象に機関改革を試験的に開始しました。例えば婁煩県では、事業編制の数が3000人以上から341人へと激減し、削減率は88.6%に達しました。河曲県では1964人から659人へと66.4%の削減、浮山県では1944人から970人へと50.1%縮小されました。これと同様の改革は青海省や甘粛省、江西省、湖南省でも進行しており、「安定した職業」とされてきた公務員制度も揺らぎつつあります。

 現在、多くの小都市では、公務員の給与未払い、減給、年末賞与や手当の廃止が頻繁に起きており、月給3000元が当たり前の状況になっています。

 小都市での「安泰な生活」という幻想は、一夜にして崩壊しました。その主因は、県域の財政がすでに逼迫していることにあります。例えば貴州省では、2022年に全88の区県の中で財政自給率が100%を超えた地域は1つもなく、茅台鎮を抱える仁懐市ですら87.65%、最低の榕江県では4.71%という低水準に留まっています。つまり、貴州省のすべての地域が上級政府からの財政支援に頼らざるを得ない状況です。

 また、陝西省漢中市の仏坪県は典型的な事例です。人口2.6万人のこの小都市では、財政供給の対象となる職員が3000人近く存在し、8人に1人が公務員を支える構図となっています。2022年の一般財政収入はわずか2482万元に対し、支出は10.55億元に達し、そのうち給与支出だけで2.72億元を占めています。これは1年の財政収入が公務員の給与すら賄えない状況を意味し、上級政府の支援に頼らざるを得ません。

 しかし、今年に入ってからは中央政府や地方政府の財政状況も厳しさを増しています。財新網の統計によれば、すでに8月までの財政収支を公表している18省の大半で財政収入は前年同期比で減少もしくはわずかな増加にとどまっています。特に江西省、広西省、陝西省、内モンゴル自治区、山西省では収入が減少しており、山西省は7.9%の減少率を記録しています。「緊縮財政」や「資産売却」は政府文書でも日常的に使われる言葉となりました。

 このような状況の中、小都市での「鉄飯碗」と呼ばれた安定職も揺らぎ始めており、若者が故郷に帰る「逃げ道」も徐々に塞がれつつあります。安泰な生活という夢は、今や遠のくばかりです。

(翻訳・吉原木子)