最近、中国当局はアメリカ、カナダ、日本、韓国、オーストラリアを含む54カ国に対し、ビザ免除措置を導入すると発表しました。しかし、北京首都国際空港では国際線の利用者が増えず、閑散とした状態が続いています。専門家たちは、中国経済はすでに深刻な衰退に直面しており、政治的要因によって閉塞感が増していると指摘しています。
北京首都国際空港の現状
清華大学でマーケティングを教えている鄭毓煌(てい・りゅうこう)副教授は、北京首都国際空港と大阪空港の人の流れを比較した動画を公開しました。動画では、北京首都国際空港の国際線出発ラウンジが閑散としていて利用客がほとんど見当たらない様子が映し出される一方、大阪空港では免税店が多くの人々で賑わう様子を確認できます。鄭氏は、「外国人はどこに行ったのか」と疑問を投げかけ、「違いを直視できなければ、改善することも追いつくこともできない」と述べました。
同じ頃、日本、ベトナム、タイ、インドなどのアジア諸国では外国人観光客が増加傾向にあります。2024年1月から11月までの訪日外国人観光客数は約3338万人に達し、過去最高記録を更新しました。一方、北京首都国際空港のウィーチャット公式アカウントによると、2024年11月20日時点で空港の年間利用者数はのべ6000万人に達しましたが、そのうち国内利用者が全体の78%を占め、国際利用者は22%にとどまりました。これを人数に換算すると、2024年の外国人利用者数はのべ1320万人に過ぎないことが分かります。
鄭毓煌副教授は、中国が発展できるかどうかは規制の緩和する度合いにかかっていると考え、単なるビザ免除ではなく、文化、メディア、インターネット、金融、教育といった幅広い分野での規制緩和が必要だと提言しました。そうしなければ外国人や外国資本はインドやベトナムなどの周辺国に流出し、中国は経済的な苦境を抜け出せないと警鐘を鳴らしています。
中国の実体経済が停滞する中、多くの人々は政府発表を丸呑みせず、自分たちの目で事実を見定めています。北京首都国際空港の閑散とした様子を見て、多くの人々は自身の体験談を投稿しました。
「マレーシアのクアラルンプール空港は人で溢れていて活気があるが、昆明空港に戻ると閑散としていた」
「先日、首都空港を利用したが、国際線の運行数は少なく、広い出発ラウンジもほとんど空っぽで、免税店の多くが閉店していた。2019年の活気が懐かしい」
そして、多くの人々は中国共産党の独裁的な統治に原因を求めました。
「(中国政府が)スパイ摘発を行ったことが原因だ」
「一線都市でも外国人をほとんど見かけなくなった。パンデミックの3年間で逃げてしまった」
「北京でも頻繁に身分証明書の提示が求められる」
「指紋や顔認証が至る所で必要だ。このような状況で誰が行きたいと思うのか」
カナダ在住の華人である張さんは、昨年中国に帰国した際、韓国と日本を経由しました。その際、日本では欧米系の観光客が多く、中国と雰囲気が大きく異なると述べています。
「韓国では外国人観光客が非常に多く、特に明洞(みょんどん)の歩行者天国は賑わっていた。東京も同じで、多くの外国人観光客が訪れており、中国と比べるとその差は歴然だ。外国人は自由で民主的な国を旅行先に選ぶのだ」と張さんは指摘しました。
さらに、張さんは2023年1月下旬に上海のメインストリートを訪れた際、外国人観光客をほとんど見かけなかったと語りました。そして、北京ではその傾向がさらに顕著だったといいます。「2014年に北京を訪れたときは、多くの外国人観光客で賑わっていたことを鮮明に覚えている」とし、中国は明らかに後退していると述べました。
張さんは、「どれほどビザ免除を増やしても、それは一時的な対応に過ぎず、根本的に外国人を惹きつけることはできない」と指摘し、より根本的な問題を解決できなければ、外国人観光客が増えることはないと強調しました。
外資撤退と『国家安全法』への恐れ
多くの外資系企業が中国から撤退していることについて、張さんは、外資系企業の経営者たちが中国共産党の『国家安全法』に恐怖を感じていることが主な理由だと述べました。少しでも批判的な発言をすれば「国外の敵対勢力」とみなされるリスクがあり、言論の自由が一段と後退し、まるで1960年代や1970年代のような雰囲気になっていると述べています。
張さんの友人は彼に対し、「外資系企業に資本を引き揚げて欲しくない。もしそうなれば、従業員を労働者として尊重してくれる働き口や、消費者を大切にしてくれるブランドがまた一つ中国から消えてしまう。一方で、中国本土で投資を続けて欲しくない気持ちもある。不公平な競争の中で圧迫され、排除されて、屈辱的な思いをしてほしくないからだ」と胸中を語りました。
魅力を失う中国
アメリカのサウスカロライナ大学エイキン校商学院教授の謝田氏はインタビューに対し、中国経済は著しく衰退しており、すでに大恐慌に突入している可能性があると指摘しました。そして、この状況は少なくとも2025年から2026年まで続き、短期間での改善は難しいと予測しました。
具体的な産業への影響として、謝田氏は以下の問題を挙げています。金融市場は低迷し続けており、銀行には大量の不良債権が発生しています。不動産市場ではローンの支払い停止が広がり、中国国債の利率が過去最低にまで下がっています。製造業は倒産や国外流出が続いており、中国当局もなんら解決策を打ち出せずにいます。さらに、電気自動車やソーラーパネルなどの輸出は諸外国によって規制され、新たな経済成長の原動力が見当たらない状況です。中国当局は依然として通貨を発行し続けており、その結果、生活必需品の価格が急上昇し、深刻なインフレーションが進んでいます。
謝田氏は、中国のGDP成長率に対しても疑問を投げかけています。「もし中国のGDP成長率が本当に4%から5%あるのなら、失業率が47%に達することもなかっただろう。経済が成長しているなら、大量の雇用が生まれるはずだ。したがって、中国当局が発表するGDPの数字は信頼できない」と述べました。
外資系企業は国家安全に関する嫌がらせや妨害に直面しており、企業内部に共産党支部を設立するといった行為も、外資系企業の撤退を加速させています。中国当局がパンデミックで行った様々な隠蔽工作や、ロシアへの支持も、中国の国際的なイメージをさらに悪化させ、西側諸国の観光客を遠ざける要因になっています。
謝田氏は、「真の規制緩和は政治的な緩和だ」と強調しました。もし中国共産党が解体され、政治的な規制がなくなれば、経済や文化、社会、国際交流といったあらゆる分野で規制が取り除かれるだろうと指摘しました。
謝田氏は、「中国で閉塞感が増しているのは完全に政治的な原因だ。しかし、現在の中国共産党は政治改革に手を付けることを恐れており、考えることさえできない」と締めくくりました。
(翻訳・唐木 衛)